高校生時代 四
                     清水景允

 そろそろ進路について考えなければならない時期になっていた。
工業高校へ入学したことは、理科系の勉強をすることであった。
信吾は向学心が強く高校の勉強では満足しなかった。さらに研究をしたかった。
 信吾には、人間が生きて行く為には、エネルギーが必要だ・・・。そのエネルギーにも二つの種類がある。一つは身体の中に取り込んで、それを燃やして熱を得る為の食料である。もう一つは、その肉体を維持する為の火である。食料を得る学問に農学と言うものがある。火を得る為の学問は理学又は工学ではないか・・・。
信吾は工業高校で学んでいる。
しかし、今までの工業高校での勉強は、過去のことを唯、覚えるだけではないか・・・。新しく何かを見つけると言う勉強はしたことがない。ましてや日本はエネルギー資源の少ない國である。新しい火を見つけなければならないのでないか・・・。信吾は考えるのである。
 物理で、アインシュタインがエネルギーは物質の質量と光の速度の二乗の積である。と、学んだ。物質1gが完全にエネルギーに変わると、広島に落とされた原子爆弾より大きいエネルギーが得られる。もし、このエネルギーを完全にコントロールすることが出来たなら、日本は石油を輸入しなくても済むはずだ・・・。
『そうだ、大学に行って原子力工学を学ぼう・・・。』中学校で進路を決めた時と同じ感覚で大学進学を決めるのである。
学費のことなど考えなかった。それだけ高校でのアルバイト生活で自信がついていた。
それからは、原子力工学の設置している大学を探した。当時、東海地方の大学一校が実験用原子炉を設置していた。
その大学は、特別奨学生制度が有り、それに合格すれば学費が免除され、さらに、その大学で経営している工場で働くと生活費を出してくれる制度があった。
この制度に合格すれば、学費、生活費など心配することはない。と信吾は考えるのである。
 受験教科は、理科、数学、英語の三教科で良い。しかも、理科は物理と化学から一教科選択すればよい。
信吾は迷った。
物理の成績は常にクラスでトップであった。しかし、工業化学の教科は独学とは言え、三年間続けて学んでいる。化学を選択するのである。
三年生になっていた信吾は、あの屋根裏の勉強部屋で受験勉強をはじめるのである。
その頃になると、親は何も言わなかった。言えなかったのであろう・・・。