高校時代 一
                     清水景允

 入学試験が終わった。
出来具合は、まあまあと言うところである。
学校は、卒業式も終わり、後は合否の発表を待つばかりである。
学校に行く必要が無い。一日中、運送会社のアルバイトが出来る。
発表当日になった。
アルバイトを休み、工業高校に合格発表を見に行った。
受験番号は五十四番である。
機械科の合格掲示板の中から五十四番を探した。
無かった・・・。
不合格である。『仕方無い・・・。大工の丁稚・・・。』信吾は呟いた。『そうだ、工業化学科の方はどうだろう・・・。』
第二志望は、第一志望者を優先するから、第二志望の者は、よほど入学試験の成績が良く無ければ合格しないと聞いて居る。
合格なんかあり得ないと思いながら、工業化学の合格掲示板を見に行った。
『五十一、五十二、五十四、え・・・、五十四、五十四番が出ている。』
富山信吾は工業化学科に合格したのである。
『機械科は不合格。でも、工業化学科に合格した。』信吾は嬉しかった。
 後日、合格の通知が工業高校から郵送されて来た。
機械科と異なり、工業化学科についてはどのようなことを勉強するのか知識は無かった。ただ、戦前から戦時中にかけて、この工業化学科は職業高校の中では花形で、倍率が一番高かったと聞いている。敗戦後の日本は石油産業の衰退で、化学系の企業からの求人が少なくなったと言う。そのかわり、機械科、建築科、土木科の様な国づくりの基幹産業が花形なのである。当然それらの学科には生徒が集まる。
 信吾は切り替えが早かった。
『戦争中は、工業化学科が最盛であったと言う。どうして、人気が有ったのだろう。』
信吾は考えだしたら結論が出るまで考え続けるところがあった。
『戦争には何が必要なのだろう・・・。兵器を運ぶ燃料が必要だ。つまり、石炭石油である。また、大量の火薬を作らなければならない。それには、化学の知識が必要だ。
戦争が終わった今は、破壊された、橋や、道路を整備しなければならない。だから戦後復興のため機械科や建築科、土木科に人気があることは分かる。
 工業化学科はどうだろか・・・。
 今は兵器を動かす必要がなくなった。しかし、小学生の時、本の中で石炭、石油はエネルギー以外に、色々なものを作るのに必要な原料だと書いてあった。今は、國土整備のために機械や建築、土木の技術が必要だが、石炭、石油から人間が生きて行く為に必要なものを作る時代が来るはずだ。
そうか、工業化学と言う学科は、石炭や石油からエネルギー以外に人の為になるものを作る学問なのだ・・・。』
信吾は一人合点した。
それからと言うもの、信吾は早く入学して工業化学の勉強をしたかった。