一の7 小学生時代
                   清水景允
 
 ある雨が降る朝、親父が「信吾、大きくなったら何になるのだ・・・。」
と聞いて来た。
信吾は突然の親父の質問に、答えることが出来なかった。
『そうか、大人になると何かをしなければならないのだ・・・。』
親父は、答えられない信吾を見て、
「父さんは、お前位のとき勉強をしなかった。だから、雨の日も、雪の降る日も、外で働かなければならない。
お前は、父さんと同じ様に外で働く人になるのか・・・。屋根の下で机に向かって仕事をする人になれ・・・。その様な仕事をするには勉強をしなければダメだ。」と言って雨の中を職場に向かう親父の後ろ姿が脳裏に焼き付いた。
丁度、信吾が舟を作っていた時である。
 
 信吾は思った。
 『いじめられるのがいやで、クラスの人達が出来ない何かをしなければならないと思った。それが舟作りだった。しかし親父は初めて勉強をしろと言う。その勉強とはなんだろう・・・。学校の勉強ではクラスの人達に適わない・・・。』
信吾は負けず嫌いのところがある。
親父と囲碁をしている時のことである。どうしても親父に敵わない。それで、碁盤ひっくり返したことがある。
 『勉強って何だ・・・。国語はダメだ。算数は・・・。理科は・・・。理科・・・。
そうだ、俺は理科が好きだ・・・。特に先生が実験を見せてくれる。その時、時間を忘れ、その先、何が起きるのか、夢中になって実験を見ていた・・・。
理科は、モノを作るのに役に立つ勉強ではないか・・・。そうだ、俺は理科で一番になる・・・。そして、理学博士になるのだ・・・。』
信吾は、白衣を着て研究に取組む姿を想像していた。
六年生になってクラブ活動があった。そこに、理科実験クラブがあった。信吾は迷うこと無く、そのクラブに入った。