一の6 小学生時代
清水景允
富山信吾は、追憶を一時止め、立ち止まり周りの風景に目をやった。
「美しい・・・」と呟いただけで、後の言葉が脳裏に浮かばなかった・・・。
しばらく見蕩れて、呼吸を整え安政火口へとスキーを滑らしはじめた。
ギュー、ギュー、ザー、ザー、
少し傾斜が緩くなった。
前方に上ホロカメットク、上富良野岳の山肌が屏風のようにそそり立っている。
火口はその麓にある。
雪の無い時なら、富良野岳につながる登山道が、その安政火口から右に回る。
冬の富良野岳の登山は危険だ。しかも一人では自殺行為だ。
空を見上げれば、雲一つない。
空の色はまだ青くない。濃い青とも、濃い緑とも見える。
山を向こう側の朝日が、稜線から上に茜色のグラデーションを、その頭上の空の色の中へ消えている。稜線の下の方は薄い墨絵の世界だ。だが、その墨絵の世界の所々の火口付近だけが濃く墨を落とした様に見える。硫黄の黄色が、まだ充分に太陽の光線が届かない世界に黒く色づけしているのだ。
風はない。
今年は例年になく、雪が多い。
左側の三段山の斜面に積もった雪が、例年見慣れた低木の木々を隠している。その分、目印となる物を探しながら登らなければならない。一歩間違えば、右側の谷に滑落してしまう。
これから先は、雪が無ければ這松が無くなり、瓦礫の登山道地に差し掛かるのだが、今は雪で夏場の瓦礫を登るより楽にスキーを進めることができる。でも、気を許すことはできない。
信吾は、再び小学校高学年から中学生にかけての追憶に浸りながら、スキーを進めるのであった。
清水景允
富山信吾は、追憶を一時止め、立ち止まり周りの風景に目をやった。
「美しい・・・」と呟いただけで、後の言葉が脳裏に浮かばなかった・・・。
しばらく見蕩れて、呼吸を整え安政火口へとスキーを滑らしはじめた。
ギュー、ギュー、ザー、ザー、
少し傾斜が緩くなった。
前方に上ホロカメットク、上富良野岳の山肌が屏風のようにそそり立っている。
火口はその麓にある。
雪の無い時なら、富良野岳につながる登山道が、その安政火口から右に回る。
冬の富良野岳の登山は危険だ。しかも一人では自殺行為だ。
空を見上げれば、雲一つない。
空の色はまだ青くない。濃い青とも、濃い緑とも見える。
山を向こう側の朝日が、稜線から上に茜色のグラデーションを、その頭上の空の色の中へ消えている。稜線の下の方は薄い墨絵の世界だ。だが、その墨絵の世界の所々の火口付近だけが濃く墨を落とした様に見える。硫黄の黄色が、まだ充分に太陽の光線が届かない世界に黒く色づけしているのだ。
風はない。
今年は例年になく、雪が多い。
左側の三段山の斜面に積もった雪が、例年見慣れた低木の木々を隠している。その分、目印となる物を探しながら登らなければならない。一歩間違えば、右側の谷に滑落してしまう。
これから先は、雪が無ければ這松が無くなり、瓦礫の登山道地に差し掛かるのだが、今は雪で夏場の瓦礫を登るより楽にスキーを進めることができる。でも、気を許すことはできない。
信吾は、再び小学校高学年から中学生にかけての追憶に浸りながら、スキーを進めるのであった。