目に入ってくるものと見えているものは 違う。
人は見たいものだけを見る。

冒頭からずっと 焼却炉の音、遠くの銃声が
幸せそうな家族や美しい庭の BGMとして鳴り続き
煙突からは煙。庭の隅に撒かれる灰。

ヘンゼルとグレーテルを読み聞かせる優しいパパ:ヘス所長。
グレーテルが 魔女を竈に押し込み殺す話。
アウシュビッツ収容所の隣で。

わたしたちの目には あまりにも醜悪だけど
(遊びに来たお母さんが耐えきれず帰ってしまうような)
彼らは全く疑問も感じず
何不自由もない生活を謳歌している。

(わたしたちは数ヶ月後に起こることを知っている)

ちょっとしたホラー映画より よっぽど恐ろしい映画だ。


ヘスの奥さん、
隣の収容所で何が行われているか ちゃんとわかっている。
自分で理想の住まいを作り上げて 固執するのはわかるけど
あの環境が子どもたちのためになると 信じているんだろうか。
(この女優さん ヨーロッパ映画でやたらとみるんだけど
ドイツの役所広司っていうかんじでしょうか)


今現在でも各地で起こっている戦争やジェノサイドを ニュースで見ると
居ても立ってもいられない気持ちと 無力感に苛まれる。
いったいこの世界はどうなってしまうんだろう、
これから何十年も生きられないわたしはいいとして
若い人たち子どもたちの生活は?