7/22 モスバーガーと半キャップ
「いや。怖いんで(笑)」
ニヤけた顔で同性の、しかも初対面で明らかと言えるくらいに年下の若造に言われたら普通の人ならどう思うんですかね。その状況にもよるのかもしれないので一概には言えないと思いますが僕は頭にきてしまったんです。そう、それはもう狂っているとしか言い様が無いくらいに。
大人気ない、そんな言葉を周囲に浴びせられて自分を振り返る事が出来るようになったのはつい最近の事で僕は昔から短気な性格ですぐにキレる子でした。
子供の頃は父親の仕事の都合で転校が多かった僕はいつの頃からか友達を作るのが面倒だと感じるようになってしまいたんです。気を使って話しかけてくれていても無愛想な態度、どうせまたすぐ引越しするんだろうし別にこいつらと仲良くする必要なんて無いや、と思い自ら孤立していました。
するとどうでしょう。どこからか突然やってきた謎の転校生、友達もいない土地で寂しかろうという優しさから話し掛けたのに素っ気無い態度、人の好意を踏みにじりやがってと思うのは当然です。悪い噂が流れ最初は好奇の視線だったはずが瞬く間に敵意剥き出しの視線に様変わりします。勿論僕もそんな彼らに馴染もうとする気持ちなんて少しも無く、全く相手にしないゼ!この田舎者共が!くらいの態度でいました。
最初は集団無視という大した事も無いつまらない嫌がらせから始まります。そんな日々に慣れてきた頃から少しずつ直接的な嫌がらせが始まるんです。上履きを隠したり、給食の時に班毎に席をくっつけて皆で向かい合って食べなければいけないのに僕の机だけ皆と僅かに隙間が空いていたり…。
今思うと心の底からどうでもいい事なんですけど当時の僕は違います。そりゃあもうトロージャンの狼とか言われてた頃ですからね。それこそもう胸倉を掴むなり千切っては投げ千切っては投げ、泣こうが喚こうが体力の続く限りその手を止める事はありませんでした。ええ。今思い返すだけでも恐ろしい…。助けて!僕の中のモンスターがこんなにも大きくなったよ!
人の性格はそう簡単に変わるものではないとはよく言ったもので、その傾向は今でも少なからず残っています。流石に未だに暴力に訴えるなんて事はしないにしろ、最近でも些細な事でイライラしている自分がいる事にハッと気付く事があるんです。
大抵の事ならそう気付いた時に自分に「ここで怒ってしまう事は大人気ない事だ」と言い聞かせて自己解決するのですがそれは大変なストレスになります。我慢をしてもそのストレスを発散する方法を僕は知らなかったからです。
ストレスの発散方法は人により様々で、例えば趣味がある方ならその趣味に没頭したり、友達に事の経緯を話す事でスッキリしたり、中にはお酒を飲み酔っ払う事で楽しい気持ちに切り替える事が出来る人もいると思います。
でも僕にはそれが出来なかった。まず最初に無趣味であるという事、そして誰かに話そうにも友達なんてひとりもいないし、お酒は自分の中で遥か昔に禁じてしまっています。
これまで頭にきたらもう止まらない、僕の中のモンスターはどんどん大きくなっていきます。自分でも抑えが効かなくなってしまい大暴れ、ストレスを溜めるという事なんて無かったですからね。その場で怒りを発散させるという何とも建設的とは言えない、それでいて極めて幼稚な解決方法しか知らなかったんです。もうヨハンの次くらいに性質悪かったと思う。
社会に出てからはそれはもう大変でした。僕が初めて就職した一見まともな会社はそれはもう理不尽の嵐、どれだけ理不尽な事でもそれが上司の言葉ならNOと言う事を許されない縦社会でした。僕は毎日腹わたが煮え繰り返るような思いをしながらも3年もの期間を耐え忍んだんです。
その期間で僕は我慢をしてストレスを溜め込むという術を手に入れました。発散は未だに上手く出来ないにしても、その場で何かに怒りをぶつけるなんて事はしなくなりました。うん。それでこそ紳士だよな。
しかも歳を重ねる度に僕は些細な事では怒らなくなっていったんです。それどころか今ではその様を楽しめる時もあるくらいに。
でもね、そんな風に全てを楽しめるなんて事は有り得ないんですよ。やっぱり人の性格はそう簡単には変わらない。いや。変われへん。
話は変わりますが、僕の職場っていうのが結構多くの人数を抱えている会社なんですけど、その中で部署みたいなものが幾つか分かれています。僕の働く時間帯で大小合わせて4つくらいの部署に分かれてまして、その中で僕は十数名の部下を持つ中途半端な管理者のような面倒な仕事をしているんです。
しかし僕は仕事は仕事と割り切る超高校級の企業戦士。そんな面倒臭い仕事でもまるで鬼の如く全ての人と一線を引いた状態で仕事に取り組んでいます。そもそも仕事っていうのはあくまでも仕事なわけで、そこに私情を挟んだり、人間関係がどうとか人の好き嫌いや気分で仕事に対する姿勢を変えるような奴が大嫌いなんですよ。
先日の事でした。
その日僕はちょっぴりイライラしていたんです。それはとても些細な事で、出勤する時にいつものように愛車をすっ飛ばして職場に向かっていた途中、狂った運転をしていたキチガイな車がいてそいつに轢かれそうになってしまったという何とも下らない事があったからなんですけど、まさかそんな事で職場でカリカリする訳にもいかんだろうとちょっぴりイライラしながらも平然と仕事に取り組んでいたんです。
僕の職場ってその部署毎の仕事の成績がリアルタイムなデータで如実に確認する事が出来るんですよ。それぞれの部署で目標みたいなものがあってそれを達成させようと毎日皆で頑張るという至極当たり前な事をする。それが社会人として当然の事であるし、僕はそれが普通だと思っています。
データを見れば常に仕事の成果を確認出来るというのはとても便利な事である反面、非常に怖いことでもあります。勿論頑張った成果がすぐにデータといった形になって確認出来るのは頑張っている人からしたらとても励みになる事だと思うし、自分なりの目標も立てやすいという利点があります。しかし逆の場合も勿論あるんです。惰眠を貪っている部署はそのまま数字に表れてしまうので目標を割っている時なんてまあ大変、他の部署から白い目で見られてしまう恐怖が待っているんですよ。
そんな中での僕の部署、そりゃあ仕事の鬼が育てた精鋭部署ですからね。目標を更に大きく上回る怒涛の数字で他を圧倒しているんですよ。もう僕はいつも鼻高々、肩で風切って職場を闊歩していますからね。というのもたまたま僕の部署にはとてつもなく優秀な人材が何人もいまして、僕が何をするわけでもなくその優秀な人材達が頑張ってくれているお陰で目標なんて軽く上回ってしまうんですよ。ええ、自分の手柄みたいに話していてごめんなさい。僕は大した事ないんです…。
でもね、そんな優秀な部署もあればそうでない部署もあるものです。僕の部署とは対照的に、それこそ全然結果を出せない部署ってのもあるんです。
僕も企業戦士のひとりです。努力しても結果を出せない時ってのがあるのは分かっています。勝負は時の運ってのもあるものです。当然そんな事だって有り得る事は分かっていますよ。
しかしね、僕は目を、そして耳を疑いましたよ。その結果を出せていない部署の連中ときたら何だかイイ年して仲良しグループみたいなんですよ。仕事の結果よりも俺達の友情!みたいな事を平気で言い出しそうな連中なんです。
その部署に馴染めない奴はクズ、そして俺達に同調出来ない奴等はカスだ!と言わんばかりの態度を目の当たりにしてしまいましてね。何かそこに新人が入ったんですけど、そいつが馴染めずにいるのが気に入らないのか虐めみたいな事してやがるんですよ。それを見て僕は苛立ちを隠しきれずにいました。
でもそこは僕も社会人ですよ。「こらワレ、痛い目見んと分からんのんかい!」みたいに大和武士のようになる事も無くただただ静観していました。
胸くその悪いままその日僕は職場を後にしました。
ムシャクシャするぜ!なんてそんな時、僕は決まってどこかに寄り道して帰ります。ここのところ結構イライラしていた僕はとんでもない暴挙に出てしまったんですよ。その後起こる悲劇に気付く事も無くね…
腹ペコだった僕はその日は何を思ったかモスバーガーなんていうセレブの集いによく使われているような所に寄っていこうと心に決めていました。
数える程しか行った事の無い高級店、僕は普段から1日500円以内なんて暗黙のルールを決めて自分を抑えつける生活をしています。その日も当然仕事中に飯を食っているわけで、500円なんてもうとっくに使い切ってしまっていたんです。そこで更にモスバーガーなんていう高級店ですからね。もう世捨て人としか言い様がありません。
こうなった時の僕はもう誰にも止める事なんて出来ませんよ。肩で風切って、触るもの皆傷付けながら入り口の中に入り仁王立ちですよ。
もうハンバーガー2個くらいたべちゃうぞー!なんて感じで列に並んでましてね。早速僕の番が回ってきたんです。
フィッシュバーガーは外せないな、問題はあともうひとつのハンバーガーを何にするかだ。待てよ、ホットドッグみたいな奴も確か美味しかったはずだよな。マズイ、このままじゃ決められない!
セレブの集うカウンターで仁王立ちしながらも決められない僕、その緊張感からか膝はガクガクブルブル、マズイ、このままでは貧民街からやってきた偽セレブだって事がばれて店の裏から屈強な黒人がやってきてしまう!焦った僕はもう何でもイイから決めてしまおうと店員の顔を見上げたその時でした。
店員「あの~。ヘルメットとってくれませんかね?」
思いもよらない突然の申し出に僕は困惑しながらも平静を装ってこう切り替えしました。
sima「な、なんで?」
店員「いや。規則なんで」
あーなるほど、確かにコンビニや銀行にフルフェイスヘルメットを被ったまま入っていったら怒られるよな。と一瞬納得しそうになりましたが僕はすぐに気付いたんです。僕が今被っているのはフルフェイスではなく、俗に言う半キャップなんて呼ばれている顔が顕わになるタイプの物なんですよ。
それってどうなんですかね。それがフルフェイスだったならば顔が見えない事もあるので強盗がそれを被ったまま店の中に入ってきて、そして防犯カメラに映っていたとしてもその正体がバレる事もなく金を奪い華麗に逃げ切る事が出来るかもしれません。
でもよく考えてみて下さいよ。僕が被っているのは半キャップ、もう顔はモロンと露出してるし、それを脱げだなんてもう完全にセクハラじゃないですか。そう考えたらもう頭に来ちゃって、
sima「それってフルフェイスの時の話ですよね。この店には何度も来てるけどこれを被ったまま店に入ってきたからって注意なんてされたのは初めてですよ。顔も見えてるのに何がいけないんですか?」
と、それは堂々と言ってやりましたよ。この店には何度も来てるけどなんて嘘までついちゃったけど…。そしたら冒頭の台詞
店員「いや。怖いんで(笑)」
ですからね。ニヤけた面してる時点で全然怖いなんて思ってないはずです。しかもその店員は高校生くらいの若造ですからね。そりゃあ沈黙の駆逐艦なんて呼ばれてる僕も流石に頭にきちゃいまして思わずその店員の胸倉を掴んでですね。それこそ千切っては投げ千切っては投げ、エプロンはビリビリに引き裂かれてバンダナなんてもう目茶苦茶、オマケにその店員ときたらお漏らししてしまったようで股間なんてビショビショに、なんて事になる筈も無く大人しくヘルメットを脱ぎましたよ。ニヤニヤしてる店員の目の前でね。
結局僕はですね。自分が怖いんですよ。キレてしまって触るもの皆傷つけるなんて出来る歳でもないですからね。それは出来れば紳士的に、それでいて男前でいたいじゃないですか。だから僕は高校生の挑発なんかには乗らないんです。
と、格好つけてみましたが本当は早く食べたかったんです。お腹なんてグギュルルルルギュギュなんて擬音を出してましたからね。食欲には敵わなかったんです。
家に持ち帰ってフィッシュバーガーを食べていたんですけど段々イライラしてきましてね。そんな生意気な態度をとられたまま素直に言う事を聞いてしまった自分の不甲斐なさが心底許せなかった。
その後イライラしたまま床についた僕が大そう枕を濡らしたのは言うまでもありません。慣れない事はするもんじゃないってことなんでしょうけどね。あ~あ、もう今月4000円しか無いよ。僕の職場は給料日は15日ですからね。どうやって過ごそうかと考えるだけでガクガクブルブルと後悔するのでした。
ニヤけた顔で同性の、しかも初対面で明らかと言えるくらいに年下の若造に言われたら普通の人ならどう思うんですかね。その状況にもよるのかもしれないので一概には言えないと思いますが僕は頭にきてしまったんです。そう、それはもう狂っているとしか言い様が無いくらいに。
大人気ない、そんな言葉を周囲に浴びせられて自分を振り返る事が出来るようになったのはつい最近の事で僕は昔から短気な性格ですぐにキレる子でした。
子供の頃は父親の仕事の都合で転校が多かった僕はいつの頃からか友達を作るのが面倒だと感じるようになってしまいたんです。気を使って話しかけてくれていても無愛想な態度、どうせまたすぐ引越しするんだろうし別にこいつらと仲良くする必要なんて無いや、と思い自ら孤立していました。
するとどうでしょう。どこからか突然やってきた謎の転校生、友達もいない土地で寂しかろうという優しさから話し掛けたのに素っ気無い態度、人の好意を踏みにじりやがってと思うのは当然です。悪い噂が流れ最初は好奇の視線だったはずが瞬く間に敵意剥き出しの視線に様変わりします。勿論僕もそんな彼らに馴染もうとする気持ちなんて少しも無く、全く相手にしないゼ!この田舎者共が!くらいの態度でいました。
最初は集団無視という大した事も無いつまらない嫌がらせから始まります。そんな日々に慣れてきた頃から少しずつ直接的な嫌がらせが始まるんです。上履きを隠したり、給食の時に班毎に席をくっつけて皆で向かい合って食べなければいけないのに僕の机だけ皆と僅かに隙間が空いていたり…。
今思うと心の底からどうでもいい事なんですけど当時の僕は違います。そりゃあもうトロージャンの狼とか言われてた頃ですからね。それこそもう胸倉を掴むなり千切っては投げ千切っては投げ、泣こうが喚こうが体力の続く限りその手を止める事はありませんでした。ええ。今思い返すだけでも恐ろしい…。助けて!僕の中のモンスターがこんなにも大きくなったよ!
人の性格はそう簡単に変わるものではないとはよく言ったもので、その傾向は今でも少なからず残っています。流石に未だに暴力に訴えるなんて事はしないにしろ、最近でも些細な事でイライラしている自分がいる事にハッと気付く事があるんです。
大抵の事ならそう気付いた時に自分に「ここで怒ってしまう事は大人気ない事だ」と言い聞かせて自己解決するのですがそれは大変なストレスになります。我慢をしてもそのストレスを発散する方法を僕は知らなかったからです。
ストレスの発散方法は人により様々で、例えば趣味がある方ならその趣味に没頭したり、友達に事の経緯を話す事でスッキリしたり、中にはお酒を飲み酔っ払う事で楽しい気持ちに切り替える事が出来る人もいると思います。
でも僕にはそれが出来なかった。まず最初に無趣味であるという事、そして誰かに話そうにも友達なんてひとりもいないし、お酒は自分の中で遥か昔に禁じてしまっています。
これまで頭にきたらもう止まらない、僕の中のモンスターはどんどん大きくなっていきます。自分でも抑えが効かなくなってしまい大暴れ、ストレスを溜めるという事なんて無かったですからね。その場で怒りを発散させるという何とも建設的とは言えない、それでいて極めて幼稚な解決方法しか知らなかったんです。もうヨハンの次くらいに性質悪かったと思う。
社会に出てからはそれはもう大変でした。僕が初めて就職した一見まともな会社はそれはもう理不尽の嵐、どれだけ理不尽な事でもそれが上司の言葉ならNOと言う事を許されない縦社会でした。僕は毎日腹わたが煮え繰り返るような思いをしながらも3年もの期間を耐え忍んだんです。
その期間で僕は我慢をしてストレスを溜め込むという術を手に入れました。発散は未だに上手く出来ないにしても、その場で何かに怒りをぶつけるなんて事はしなくなりました。うん。それでこそ紳士だよな。
しかも歳を重ねる度に僕は些細な事では怒らなくなっていったんです。それどころか今ではその様を楽しめる時もあるくらいに。
でもね、そんな風に全てを楽しめるなんて事は有り得ないんですよ。やっぱり人の性格はそう簡単には変わらない。いや。変われへん。
話は変わりますが、僕の職場っていうのが結構多くの人数を抱えている会社なんですけど、その中で部署みたいなものが幾つか分かれています。僕の働く時間帯で大小合わせて4つくらいの部署に分かれてまして、その中で僕は十数名の部下を持つ中途半端な管理者のような面倒な仕事をしているんです。
しかし僕は仕事は仕事と割り切る超高校級の企業戦士。そんな面倒臭い仕事でもまるで鬼の如く全ての人と一線を引いた状態で仕事に取り組んでいます。そもそも仕事っていうのはあくまでも仕事なわけで、そこに私情を挟んだり、人間関係がどうとか人の好き嫌いや気分で仕事に対する姿勢を変えるような奴が大嫌いなんですよ。
先日の事でした。
その日僕はちょっぴりイライラしていたんです。それはとても些細な事で、出勤する時にいつものように愛車をすっ飛ばして職場に向かっていた途中、狂った運転をしていたキチガイな車がいてそいつに轢かれそうになってしまったという何とも下らない事があったからなんですけど、まさかそんな事で職場でカリカリする訳にもいかんだろうとちょっぴりイライラしながらも平然と仕事に取り組んでいたんです。
僕の職場ってその部署毎の仕事の成績がリアルタイムなデータで如実に確認する事が出来るんですよ。それぞれの部署で目標みたいなものがあってそれを達成させようと毎日皆で頑張るという至極当たり前な事をする。それが社会人として当然の事であるし、僕はそれが普通だと思っています。
データを見れば常に仕事の成果を確認出来るというのはとても便利な事である反面、非常に怖いことでもあります。勿論頑張った成果がすぐにデータといった形になって確認出来るのは頑張っている人からしたらとても励みになる事だと思うし、自分なりの目標も立てやすいという利点があります。しかし逆の場合も勿論あるんです。惰眠を貪っている部署はそのまま数字に表れてしまうので目標を割っている時なんてまあ大変、他の部署から白い目で見られてしまう恐怖が待っているんですよ。
そんな中での僕の部署、そりゃあ仕事の鬼が育てた精鋭部署ですからね。目標を更に大きく上回る怒涛の数字で他を圧倒しているんですよ。もう僕はいつも鼻高々、肩で風切って職場を闊歩していますからね。というのもたまたま僕の部署にはとてつもなく優秀な人材が何人もいまして、僕が何をするわけでもなくその優秀な人材達が頑張ってくれているお陰で目標なんて軽く上回ってしまうんですよ。ええ、自分の手柄みたいに話していてごめんなさい。僕は大した事ないんです…。
でもね、そんな優秀な部署もあればそうでない部署もあるものです。僕の部署とは対照的に、それこそ全然結果を出せない部署ってのもあるんです。
僕も企業戦士のひとりです。努力しても結果を出せない時ってのがあるのは分かっています。勝負は時の運ってのもあるものです。当然そんな事だって有り得る事は分かっていますよ。
しかしね、僕は目を、そして耳を疑いましたよ。その結果を出せていない部署の連中ときたら何だかイイ年して仲良しグループみたいなんですよ。仕事の結果よりも俺達の友情!みたいな事を平気で言い出しそうな連中なんです。
その部署に馴染めない奴はクズ、そして俺達に同調出来ない奴等はカスだ!と言わんばかりの態度を目の当たりにしてしまいましてね。何かそこに新人が入ったんですけど、そいつが馴染めずにいるのが気に入らないのか虐めみたいな事してやがるんですよ。それを見て僕は苛立ちを隠しきれずにいました。
でもそこは僕も社会人ですよ。「こらワレ、痛い目見んと分からんのんかい!」みたいに大和武士のようになる事も無くただただ静観していました。
胸くその悪いままその日僕は職場を後にしました。
ムシャクシャするぜ!なんてそんな時、僕は決まってどこかに寄り道して帰ります。ここのところ結構イライラしていた僕はとんでもない暴挙に出てしまったんですよ。その後起こる悲劇に気付く事も無くね…
腹ペコだった僕はその日は何を思ったかモスバーガーなんていうセレブの集いによく使われているような所に寄っていこうと心に決めていました。
数える程しか行った事の無い高級店、僕は普段から1日500円以内なんて暗黙のルールを決めて自分を抑えつける生活をしています。その日も当然仕事中に飯を食っているわけで、500円なんてもうとっくに使い切ってしまっていたんです。そこで更にモスバーガーなんていう高級店ですからね。もう世捨て人としか言い様がありません。
こうなった時の僕はもう誰にも止める事なんて出来ませんよ。肩で風切って、触るもの皆傷付けながら入り口の中に入り仁王立ちですよ。
もうハンバーガー2個くらいたべちゃうぞー!なんて感じで列に並んでましてね。早速僕の番が回ってきたんです。
フィッシュバーガーは外せないな、問題はあともうひとつのハンバーガーを何にするかだ。待てよ、ホットドッグみたいな奴も確か美味しかったはずだよな。マズイ、このままじゃ決められない!
セレブの集うカウンターで仁王立ちしながらも決められない僕、その緊張感からか膝はガクガクブルブル、マズイ、このままでは貧民街からやってきた偽セレブだって事がばれて店の裏から屈強な黒人がやってきてしまう!焦った僕はもう何でもイイから決めてしまおうと店員の顔を見上げたその時でした。
店員「あの~。ヘルメットとってくれませんかね?」
思いもよらない突然の申し出に僕は困惑しながらも平静を装ってこう切り替えしました。
sima「な、なんで?」
店員「いや。規則なんで」
あーなるほど、確かにコンビニや銀行にフルフェイスヘルメットを被ったまま入っていったら怒られるよな。と一瞬納得しそうになりましたが僕はすぐに気付いたんです。僕が今被っているのはフルフェイスではなく、俗に言う半キャップなんて呼ばれている顔が顕わになるタイプの物なんですよ。
それってどうなんですかね。それがフルフェイスだったならば顔が見えない事もあるので強盗がそれを被ったまま店の中に入ってきて、そして防犯カメラに映っていたとしてもその正体がバレる事もなく金を奪い華麗に逃げ切る事が出来るかもしれません。
でもよく考えてみて下さいよ。僕が被っているのは半キャップ、もう顔はモロンと露出してるし、それを脱げだなんてもう完全にセクハラじゃないですか。そう考えたらもう頭に来ちゃって、
sima「それってフルフェイスの時の話ですよね。この店には何度も来てるけどこれを被ったまま店に入ってきたからって注意なんてされたのは初めてですよ。顔も見えてるのに何がいけないんですか?」
と、それは堂々と言ってやりましたよ。この店には何度も来てるけどなんて嘘までついちゃったけど…。そしたら冒頭の台詞
店員「いや。怖いんで(笑)」
ですからね。ニヤけた面してる時点で全然怖いなんて思ってないはずです。しかもその店員は高校生くらいの若造ですからね。そりゃあ沈黙の駆逐艦なんて呼ばれてる僕も流石に頭にきちゃいまして思わずその店員の胸倉を掴んでですね。それこそ千切っては投げ千切っては投げ、エプロンはビリビリに引き裂かれてバンダナなんてもう目茶苦茶、オマケにその店員ときたらお漏らししてしまったようで股間なんてビショビショに、なんて事になる筈も無く大人しくヘルメットを脱ぎましたよ。ニヤニヤしてる店員の目の前でね。
結局僕はですね。自分が怖いんですよ。キレてしまって触るもの皆傷つけるなんて出来る歳でもないですからね。それは出来れば紳士的に、それでいて男前でいたいじゃないですか。だから僕は高校生の挑発なんかには乗らないんです。
と、格好つけてみましたが本当は早く食べたかったんです。お腹なんてグギュルルルルギュギュなんて擬音を出してましたからね。食欲には敵わなかったんです。
家に持ち帰ってフィッシュバーガーを食べていたんですけど段々イライラしてきましてね。そんな生意気な態度をとられたまま素直に言う事を聞いてしまった自分の不甲斐なさが心底許せなかった。
その後イライラしたまま床についた僕が大そう枕を濡らしたのは言うまでもありません。慣れない事はするもんじゃないってことなんでしょうけどね。あ~あ、もう今月4000円しか無いよ。僕の職場は給料日は15日ですからね。どうやって過ごそうかと考えるだけでガクガクブルブルと後悔するのでした。