7/16 伊能と本郷 | simablo9

7/16 伊能と本郷

漢にはね。自分の世界があるんです。

例えて言うなら、空を駆ける一筋の流れ星。みたいな話があるとか無いとか、そんな話があるように男、というよりも漢ってのは奥深い繊細な生き物なんです。

ただここで誤解してほしくないのですが、僕は女性よりも男性の方が優れているとか、そういった差別的な事を言いたい訳ではないんですよ。あくまでも男ではなくて漢、男の中の漢の事を差して言ってます。

現代に蘇ったサムライだとか、和製トム・クルーズだとか、トロージャンの狼だとか色々と比喩されている僕ですが、やはり皆さんが思っているようにやはり自分で自分の事を漢、男というより漢なんじゃないかと思っています。うん。そうだそうだ。

そんな僕にも憧れている漢ってのが何人かいましてね。今はこんなカスみたいなシャバ憎でもいずれはこんな風になってやるっていう人がいるんですよ。

まずはやっぱりエーちゃん、矢沢永吉は外せない。歌とかはビタイチ分からないんだけど、何か彼って本を出してるじゃないですか、それを読んでこの漢はホンマモンや!宝石箱や!!みたいに思ってしまったんです。50歳を過ぎても衰える事の無い肉体、永遠のツッパリって相当格好良いですよね。うん。あんな風に歳を取れたら最高だろうな。乾く暇無い。

でもね、エーちゃんってやっぱり王道じゃないすか、あまりにも普通過ぎる。格好良いから皆憧れてるもの。僕は天邪鬼なところがあるのでやはり正義の味方よりもそのライバルや悪役が好き。その点も踏まえてこの世で一番格好良いと思っているのはやっぱり伊能政治。こいつは半端ねえって思ったもの。

日本最大の暴力組織、関西光和会岸田組組長岸田巌は跡目に本郷を選んだ、それを不服とした若頭の伊能は岸田を殺害、自らの手で組長の座を手に入れるのであった。その親殺しの汚名を着せられた本郷は僅かな手勢と共に新宿へと逃れ根を下ろす事に。この事は関東木曜会の春田昇を刺激し、血で血を洗う戦国時代が始まるのであった。

というお話「修羅がゆく」という映画があるのですが、僕はこれのDVDボックスを買ってしまうくらいに好きなんですよ。平成の仁義なき戦いだとか言われてる人気スペクタクル、豪華出演陣によりシリーズでそのパート13まで制作されているヤクザ映画の最高峰に君臨している名作なんですよ。

その豪華さときたらもう鼻血もので、まず主役の本郷流一に哀川翔、そして宿敵の伊能政治に萩原流行と、もうこの時点で鼻血はピューピューと音をたててるくらいだと思うのですがそんな所では収まる気配すら見せません。関東木曜会の春田には力也兄さん、そして毎話出演する超豪華なキャスト達、菅原文太、大和武士、清水宏次朗、中野英雄、清水健太郎、宇梶剛士、鶴見辰吾、渡辺裕之、梅宮辰夫などなどととんでもないくらいの豪華っぷりです。もう鼻血どころじゃないでしょ?殺す気か!

もうね。とてつもない事になってるんですよ。こんな豪華さって八甲田山以来じゃないかなと僕は思っています。とまあそんな感じなのですが、この話の見所は何と言っても任侠道を貫き通す本郷流一の生き様を見て楽しむ人が多いと思うのですが僕は違う、その宿敵として君臨する外道中の外道、伊能政治のその恐ろしいまでの悪っぷりに心底憧れを抱くという、何とも腐った心を持つと自分で自覚しているだけの事はあるなと思えるような楽しさがあります。

もうね、汚いとか卑怯とかそんな次元じゃないんですよ。もうとにかく最悪、こんな人が実際にいたらもう子供の10人や20人くらいはショックで失語症とかになっちゃうと思う。

何度も対決を繰り返して直接やり合うシーンも何度も出てくるんです。「ここでケリを着けてやるぜ。伊能。」「じゃかぁしゃい!ここがおんどれの墓場じゃ!本郷!」みたいなやり取りをするんですけど、そこで睨み合ってる間にその銃を撃てばいいじゃん!とか思うんですけどそこも含めて面白いんです。

見た事ある人はお分かりでしょうが見た事無い人には何の事やらという感じでしょう、これを機に見た事無い人は絶対に見た方が良いと思う。もしとっても興味がある方がいればこのページの左側辺りにあるところからメール送ってくれれば焼いてあげたいくらい。それくらいにオススメします。

ある日の事でした。

あれはまだ僕が今の仕事に就く前のアパレル系に勤めていた時の話です。僕が吉祥寺のとあるショップに勤めていた時期があったのですが、その時自分の店にあの伊能政治が来てるじゃないですか!伊能さん(萩原流行)が吉祥寺に住んでるって話は聞いた事あったけど本物を見るのは初めて、もう大興奮の嵐ですよ!

「い、伊能さん。じゃなくて萩原さん。滅茶苦茶ファンなんです!あ、握手してくれませんか!?」なんて言っちゃいました。僕にとっては伊能政治としての彼が一番強いイメージだったので、彼の本当の名前の萩原さんよりも伊能さんの方が先に出てきてしまったんですよね。でも萩原さんはそんな事を気にする事も無く「ああ、どうも」と握手してくれました。何か格好良い!シビレル!!

夏の暑い日だった事もありラフなファッションに身を包む伊能さん。タンクトップを着ていた彼はブラウン管を通して見るよりも大きく、そして鍛え抜かれた肉体がとにかく眩しかった。僕は仕事を忘れ彼の姿を目に焼き付けていた。

例えるなら、まるで文化祭の準備の為暗くなるまで学校に残っていた日の帰り道、同じ方向に歩みを進めるクラスの女子チョメ子は聞くとかなり自分の家の近所に住んでいた事を知る。「こんなに近くに住んでいたなんて知らなかったよ」なんて話をしつつもいつもと違う暗い夜道、今まで生きてきた14年間でこんな時間に女子と2人で一緒に帰った事なんて無かった。いつもと違うシュチュエーションにドキドキしてしまう太志、時々街頭の光に映るチョメ子の横顔を見て「こいつ、こんなに可愛かったっけ」それまで意識した事なんて一度も無かったのに急に意識してきている自分に気付き会話もどことなくぎこちなくなってしまった。じつはその一部始終をクラスの友達に見られていて次の日にはもう「ヒューヒュー!」なんてからかわれる始末、恥ずかしいやらで本気で怒る太志を尻目に心無い同級生は「おいチョメ子!お前フトシの事が好きなんだろ?」なんて言っています。おい、やめろ!チョメ子は関係無いんだ!声にならない声を出しチョメ子の様子を見ると顔を真っ赤にしてうつむいてた。それを見た瞬間心臓を打ち抜かれた気がし、そして核心した。

「僕はこの人が好き!死ぬほど好き!」

例え話が長くなり何を言っていたか忘れましたがとにかくそんな感じの僕、そんな僕を尻目に伊能さんは僕のお店でGジャンを見ていました。そこでふと我に返り「ど、どうぞ、良かったら試着してみて下しゃい!」なんて、ちょっと噛みながら言ってました。そのGジャンってのがもう普通のGジャンじゃないんですよ。凄く凝った作りでデザイン性も高く、ポケット部分にレザーなんてあしらったオシャレなGジャン。「流石は伊能政治!選ぶアイテムも普通じゃないぜ!」なんて感動していたんですね。すると伊能さん

「高けぇな。」

とだけ言って店を出て行ってしまいました。一瞬何が起こったのか分からなかった。一旦冷静になってから思いました。うん。ダセー。

だってね。考えてもみて下さいよ。まあブランド店とは言っても日本のブランドですよ。値段だって海外DCブランドに比べれば割安だし、しかも夏のその時期ってもうバーゲンセールの時期も過ぎ一段落したくらいの時期、ショップに置いてある服なんてもうかなり激安なくらいに値引きされてるんですよ。確か一万円くらいだったと思う。

まがいなりにも華やかな芸能人じゃないですか、世間の皆に夢を与える芸能人じゃないですか、そんな一万円くらいの服を買うのも苦しいんですか?今時リーバイスのGジャンだって一万円以上するのに…。有り得ない。いや、有り得へん!

結局ね、僕が好きなのは俳優の萩原流行じゃなくて関西光和会の伊能政治だったんですよ。だって「たったの150億円ぽっちかいの?」と部下に悪態をつく伊能ですよ。それが一万円を高いだなんて悲しいじゃないですか。でも実物を見るまでそう思わせていた萩原流行って人は一流の役者な訳で、じつはやっぱり格好良いんじゃないか?なんて思いました。

いや、やっぱりそんな事ない!だって一万円だぜ?しかもあんな売れ残りの変な革とかくっついてるGジャン、誰も見向きもしなかったGジャン、結局最後の最後まで売れる事無く本社に送り返す羽目になったGジャンですから。

いや。でも逆に考えるとそれを見抜いていて買わなかった伊能はやっぱり凄いのかもな?なんて思う事も無くGジャンをダンボールに詰め込むのでした。どんなに値下げしても最後まで誰にも買われなかったゴミのようにダサい服達と共に。