イラストでも貼り付けておきます。
今日も今日とて地球は回る。
熱出てしんどいです。
何が起きたかは確認出来ない。目を向けたその時には、命の兄の手から刀が失われていた。
状況から察するに、攻撃を仕掛けようとして弾かれた。妹を人質にされていては何も出来ないと踏んでいたが、見当違いだった。頭に血が上ってしまったのだろう。
弾かれた刀の在処を探る。あれがこの場を切り抜ける鍵となるかもしれない。月明かりを反射している刀身は、すぐ目に入った。
豪鬼の腕が命の兄へと襲いかかる。その掌は、胴を易々と覆うほどに巨大だ。一瞬でも戦意を失い、反応が遅れた命の兄はあっさりと鷲掴みにされた。
命の兄は、そこらに横たわる死体と同じか、それ以上に惨憺たる結末を迎えようとしている。あのまま握り潰されてしまえば、首無しどころではない。
(今、俺が動けば、或いは……)
豪鬼の興味が隆久に向けば。しかし、下手に飛び出せば思う壺である。
複雑に思考する隆久。
そんな彼を動かしたのは、極々単純な理由からだった。
「兄様ぁぁぁっ!!」
思考が吹き飛んだ。
最短、最速で距離を詰め、まずは落ちていた先程の刀を拾う。這うような低姿勢のまま、逆袈裟の型に構えると、隆久から津波のような殺気が溢れ出す。
その時には既に、必死に考えていた自分が馬鹿らしくなっていた。
殺気にあてられた豪鬼が、隆久の存在に気付く。握りつぶさんとしていた命の兄には興味を失ったようで、放り投げてしまった。
直立したままの豪鬼。余裕綽々なのかと思えば、手元を見た途端に表情が引き攣る。
(矢張り……この刀を恐れている!)
理由は分からないが、好都合である。
間合いまで一気に詰め寄ると、命に攻撃しないよう注意をはらいつつ、逆袈裟の一撃を見舞う。
(……浅かった!)
そのまま打ち込み続けるが、豪鬼が誇る鎧のような皮膚は貫けない。
「命を……放せぇぇぇっ!」
最後の一撃、覇気を込めた一閃。疾風の如き一太刀は、首の付け根から脇腹までを打っ裂いた。
階段を何段か登り、次の段を踏みしめようとした時。隆久は、とある異変に気付いた。
「――――居る」
今の今まで、全く感じ取れなかった気配が内部からぴりぴりと伝わってくる。まるで、どこかで区切られていたように突然のことだった。
これで、危惧していたことが起こることは確定した。間違えようもなく、これは豪鬼の気配だ。
隆久は、吹き出す嫌な汗を無視して、音を立てないように歩みを進める。
(とりあえず、中の状況を確認しよう)
崩れかかった塀に背を付け、意識を集中する。呼吸に併せて感覚は鋭くなっていき、曖昧だった内部の気配が、輪郭を形成していく。
(豪鬼がいるのは間違いない。それと……誰かいるのか?)
もう一つの気配に、感覚を絞る。
(嫌な感じはしない。どうやら捕まってしまった人間らしいな)
隆久は、豪鬼に気取られないよう、中を覗き込み――――
「命ぉぉぉぉっ!」
絶叫。隆久のものではない、野太い男の声だ。隆久の後ろに位置する、階段辺りから響いただろうか。
あまりに急だったこと、内部へ意識を向けすぎていたことで、隆久は思わず驚愕してしまい、体が強ばる。
そこで彼は、はっとして、
(今、誰の名を呼んだ!? )
隆久は不意に飛び出しそうになったが、寸でのところで衝動を押さえ付けた。冷静さを欠いた、彼らしくもない行動である。
(今、出た所で仕方がない……!あれが何者か、それから中にいるのが本当に命なのかを確認するのが先だ!)
声の主は、もう中庭付近にまで侵入している。何か揉めているらしいが、はっきりとした会話の内容までは掴めない。
辛うじて、甲高い命の声、
「にい……ま……!」
(にい……?兄様と呼んだのか?)
心当たりがあった。そもそも彼女が屋敷に居たのは、兄の付き添いで、とのことだ。
どうやら、あそこに居るのは本当に命らしい。しかし、何故彼女がこの場にいるのかが得心いかない。
(いや、今、そのことはいい。兄だと言うなら敵という訳でもあるまい)
それでも油断はならない、と冷や汗を流しつつ、足音を消して塀伝いに歩みを進める。
中で、男の腰から光が伸びるのを確認する。抜いた刀が、月光を反射したのだ。
(……素人か)
思っていたよりも月が明るい。刀を構える姿で、すぐにそう判断出来る程度には視界は明瞭だ。だからこそ、豪鬼と男の構図に、違和感を覚えざるを得なかった。
男の構えは、全く胴が据わっていない。引け腰で、不格好なものだ。だというのに、あの豪鬼がたじろぐような仕草を見せたのだ。
状況の変化を感じ、一旦足を止める。
(あの男に怯えている?……いや)
刀に何かがある。そう見るのが得策だろうか。
しかし、命は豪鬼に抱えられている。切りかかることもできず、状況が好転している訳ではなさそうだ。あくまで、向こうの状況は、だ。豪気はあの男に注意を向けている。潜伏中の隆久にとっては、隙をつく絶好の機会と言う他ない。
「兄様、やめてッ!!」
命の絶叫が響いたのは、移動を再開しようとしたその時だった。
私がこのブログを放置して、地球が何周したでしょうか。
一応生きております。
何度か書いたかもしれませんが、現在別作品に集中させて頂いております。
その作品もいい感じにストーリー、というか設定がまとまりつつありますので
ちょろちょろとこちら、片翼に手を伸ばすことが出来そうです。
今も箸休め程度に書いておりますので、アップするのに丁度よさそうな文章量になりましたら掲載させて頂きます。
もう続きを諦めてる人もいるかもしれませんけど
完結はさせますからね!させます!不死鳥のように蘇ります。元々死んでませんが蘇ります。
それでは今日はこのへんで。激動も近い、とか煽って置いて止めちゃってすいません。
また近いうちに。
隆久は来た道を辿って、帝の屋敷を目指していた。
帯刀していない、その不慣れな感覚に少しばかり落ち着きを欠く。
夜の静けさが不気味に思えてくる。彼の足は自然と速くなった。
最後に聞いた、恐ろしい豪鬼の声が繰り返し頭に響く。少なからず、あれとの遭遇を彼は危惧していた。
武器のない今、もしあんなものに出会したら?砂をかけて逃げる――――駄目だ、通用するとも思えないし、逃がしてくれる筈もない。
などと考えている内、帝の屋敷はすぐそこまで見えていた。
そして、その惨状の意味を理解するのに、一瞬さえも要さなかった。
「酷いもんだな……」
足早だった歩みを、思わず止めてしまう。
嫌っていた屋敷ではあるが、この惨状を目の当たりにしてしまっては、同情せざるを得ない。
誰の仕業かは、すぐに予想がつく。しかし、隆久にはどうも腑に落ちない部分があった。
「街が……静かすぎる」
――――そう、そんな惨状が極近くで起きているのに、街は静寂としているのだ。
崩壊した帝。力任せに叩き割られた塀や石細工、そしてあの巨大な門。当然、破壊には爆音が伴う。屋敷の内部から人が逃げたなら、何某かの行動をとり、危険を知らせるだろう。隆久の場合は特例に近いが。
だというのに、街はなんの騒ぎにもなっていない。それどころか、今までに人とすれ違うこともなかった。
明らかな不自然。何か大きな力を感じ、警戒を強める。腰に差した刀に手を伸ばして――――空を切った。
「……馬鹿だな、それを取りに、ここへ来たんじゃないか」
脱力しそうな思いだったが、堪えて再び歩みを進め、内部へと踏み込んだ。
命に残された時間は、そう多くない。
隆久よりも先回りし、刀を回収する必要がある。命はあまり音を立てないよう、慎重に走っていた。
隆久の練度は本物だ。気配にも恐ろしく敏感だろう。気付かれてしまっては元も子もなく、それでも急ぐ必要性に駆られるのは、なんとも歯がゆさを覚える。
疲れを実感し始める中、目的地である帝の屋敷を確認した。
その様は、惨憺たるものだった。
「……酷い」
まず目に入ったのは、屋敷を囲んでいた純白の塀。美しかったかつての影もなく、崩壊してしまっている。
瓦礫を踏み越え、塀に空いた大穴から内部に侵入する。
(豪鬼の仕業ね……)
遠目からもさながら、中の状況は、更に目も当てられないものだった。
屋敷としての形を成しておらず、まさしく木っ端微塵にされていた。豪鬼に屠られた死屍が転がり、そのどれもが、頭部をどこかへやってしまっている。
叩きつけられたのか、下敷きになったのか。瓦礫にへばりついて、人の形すら留めていないものもある。
そよ風が死の臭いを運び、命の頬を撫でた。
「うっ…ぐ、うぇ……っ」
強烈な寒気に身を凍らせ、胃から内容物が逆流する。我慢など利く訳もなく、くずおれてそれを地面にぶちまけた。
「いい眺めだろう、女」
今の彼女に、這いよる影に気付く余裕などありはしなかった。
「――――!!」
くぐもった声と共に、腐敗臭が命の鼻をついた。
世界は順調に回っていますね。夜代です。
ちょっと短めですね。というのも、前回更新の際も言ったように、劇的な展開がそろそろな感じなので、今までのフラグ確認とかうんたらかんたらで若干慎重に進めております。
どこまで言っていいやら分からないので無難なことだけ綴ります。
さて、停滞しまくった本作ですけど、いよいよ書きたいことを書けそうです。
あんまり放置しているとフラグが腐ってしまいますね。すみません。
内容をお忘れな方もいそうですね。私もちょっと危うかったぐらいなので(
そういう方は読み返して、また楽しんで頂ければと思います。
では、この辺で。
隆久を見送ってから、間もなく。命は焦燥感に駆られていた。
彼を引き止めたのは、危険だからという理由だけではなかった。
出会ってからほんの僅かな時間の中で、彼女にとって隆久の存在は大きな支えとなりかけていた。
同じ気持ちを分つことが出来、彼の中に眠る優しさにも気付いた。一瞬どころか、二度も彼を疑うような真似をした自分が恥ずかしい。
いや――――違う。
命は今でも隆久を、疑うまでは行かずとも、信じきれないでいる。
彼女が焦りを感じる理由は、二つ。豪鬼に関する懸念と、刀自身の問題だった。
(あれを取り戻してしまえば、彼がもし、高天原からの使者だというのなら――――)
途端に起こった、彼を失うことへの恐怖。そう、彼は恐らく、忘れてしまっているだけなのだ。自らに課せられた使命を。
命は重苦しい着物をするりと脱ぎ捨て、軽い身なりになる。
(隆久様に刀を取り戻させてはいけない……!)
自分と関わってしまった以上、彼の記憶が刀によって呼び起こされる可能性がある。そして、そうなってしまえば、僅かな時間で築き上げられた小さな絆は、ひと度崩れさっていくだろう。
嫌だ。
――――今までどれ程寂しかっただろう?
――――今までどれ程辛かっただろう?
やっと分かって貰える人に出会えたのだ。
命の足は、隆久の後を辿っていた。
久々に更新したくせに、なんの動きもない中途半端な会話回でした。すいません。
そんなことは気にしてか気にしないでか、世界は順調に回っています。夜代です。
次回か次々回辺りから、かなり動きが出てくると思います。
構想としては過去編中盤に差し掛かったところでしょうかね。はやく戦闘描写したいなー。なー