だから好きだと言って、天使になって、そして笑って、もう一度…
あの水平線に、
見事な軌道なんかは描いてくれないかもしれない。
大雑把で、いびつで、途切れ途切れで、元気なくて…
そんな、水の放物線の可能性だってある。
でも、同じ波はもう来ない。
それに、懸命に水しぶきを掻き分け進む波は、そうそうない。
逃がしたくない。
夏の誘惑は始まったばかり。
波乗りは、惑わされない。
けど、
波の方はどうだろうか…。
いや、
そんなことは考えなくて良いのか。
波を信じよう。
ただそれだけか。
ゆっくり ゆっくり 昇ってく
慣れない浴衣に袖を通し、
浮かれ気分で表情を和らげる。
真っ暗な空にはじけ、散ってゆく花火の閃光を目で追い、
お互いの手をさぐりながら、
歩幅を合わせて行く。
汗をいっぱいかき、厳しい日照りの下頑張っている日常を忘れ、
寄り添いあって、だらだらしている。
そんな、
夏のある景色。
もちろん、
中には、
冴えない顔をしている人がちらほら。
眉間にしわがより、忙しそうな顔をしている人もちらほら。
全員が全員、
全部が全部、
上手くいくはずがないのさ。
と言わんばかりの握り拳をそっと、
隣に見せまいとひっそりと胸の内に隠している。
でも、
そんな日々もこれまでだ。
最初から分かっていたことだけど、
空にでっかい花火を数百発打ち上げることが出来なくても、
線香花火だったら一緒に火をつけられる。
泪が零れそうになった時何もしてあげられなくとも、
少しでも傍にいることなら出来る。
別れ際に抱きしめられなくとも、
ハイタッチで手を重ねることだったら、出来るんだ。
厚い入道雲を縫って差し込むオレンジ色に染まる、
あの長い長い上り坂を、
君を自転車の後ろに乗せてあげ、
ここからは、
下るんじゃない。
ゆっくり、ゆっくり、
昇って行きたい。
そんな唱が、
あったようななかったような…
鱗
夏の風は、
どんなものも遠くに追いやってしまうくらい、
生ぬるくて鬱陶しい。
街を歩いていても、
まるで自分の身体じゃないかのように、
手足に感覚はほとんどない。
あるのはTシャツに染みる、
背中や腹にだらだら流れる汗ばかり。
何をやろうとしても、
全て裏目に出るような気がして、
気だるい。
めんどくさい。
全身が、重い。
そんな感じのテスト期間だった。
でも、
そろそろこんな窮屈なのはごめんだ。
一つでも良い、
一歩でも良い。
今まで自分の中に留めてしまっていた、
溢れそうなこの想いを、
思いっきり叫んでみたい。
鱗のように身にまとったものは、
全部削り落として、
目指す先に、
泳いで行きたい。
どんな痛みが押し寄せてきても、
止まったりはせず、
進むだけだ。
そんな夏にしてやる。