母が死んだ
母が死んだ 2
その負債を相続人で割り、相殺勘定がある場合はそれを差し引き、兄と、妹の債権債務は、〝念書〟に関しては裁判で決着した。その後、裁判の課程で算出された相続人一人あたりの金額を、おじさんに全額支払えと言ってきた訳である。
当然、おじさんには相殺する勘定がないと思ったのだろうが、ほんの2、3回、金の工面をしたことがある。もちろん証明も出来ないし、するつもりもないが、こういうところにも妹あるいはその亭主の人間性が出る。それとも他人同然だったから、請求しやすかったのかな。
ほかにも兄の依頼で登記費用、30万なにがしをおじさんが立て替えたことがあるが、今思えば、それは母に相続した際の費用だったのだ。その立替金はおじさんと母との貸借関係になると思うが、そんな事はもちろん裁判では何も出てきてはいない。
要するにすべて出し損という訳である。愚痴めいて恐縮だが、母の葬儀の際、結構な額を包んでしまった事をちょっぴり悔やんだ。
話しを戻すと、おじさんは、その内容証明を無視していた。何故なら、相続というものは、プラスとマイナスの遺産をすべて明らかにし、協議すべきものだと理解しているからだ。
そうこうする内に、今度は家庭裁判所から相続について調停するから、何月何日に来るようにという書面が届いた。申立人は兄であった。おじさんは一切、相続する気がないのでその旨書いて出したら、家裁から電話が架かってきて、意向を説明すると、それは相続放棄ということですから、放棄の手続をしていただかないと、と言われた。
さて、みなさんは今出てきた〝相続放棄〟という手続をご存じだろうか。一般的には自分が何も相続しない事を相続放棄と言っているが、法的には家庭裁判所へ出向き、所定の書類と切手を添えて『相続放棄申述書』というものを提出し、裁判所が受理しなければ有効とはならない。そして受理されれば、初めから相続人ではなかったと見なされるのである。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
実はおじさんは、死亡の事実を知った日から3ヶ月以内に申述をしないと放棄は出来ないと考えていた。だから、放棄は無理だと自己判断していたが、書記官と応対した妻の口ぶりからすると、質問には一切答えて貰えず、こちらの見解を述べても、放棄をしていただかないと、と言われるばかりで、もしかしたら3ヶ月過ぎても認められるケースがあるんじゃないの、と言うので、必要な書類を整え、翌日、家庭裁判所へ出向いていった次第である。
応対してくれた事務官(書記官?)に、相続が開始されたのを知ったのは何時ですか、と聞かれたので、葬儀の前日と答えたところ、それは死亡を知った時ですね、3ヶ月を過ぎて来られているということは、何か別のご意見があるのでしょう? と言われたので、おじさんはピンと来た。
条文の『自己のために相続の開始があったことを知った時から―』の意味に気付いたのだ。
自己のために相続の開始があったというのは、必ずしも死亡を知った日ではないのだと。
ただ、事務官は「裁判官の判断になりますので、必ずしもご意見が通るとは限りません」と念を押され、それは致し方ありません、と答えた。また最後に「場合によって、ほかに戸籍等をお取りいただく場合があります」と言われ、承知した旨を述べ、家裁を後にした。
申述書に遺産の額、負債の額を書く欄があったので、家事調停の書類を見ながら書き入れた。それによると、プラスの遺産が不動産で3千数百万円、マイナスのそれが8千数百万と書かれていた。 もとより、一円の金も相続する気はなかったものの、とてもじゃないが、そんなマイナスの遺産を払う気にはならないし、払えもしない。
母が死んだ 2
その負債を相続人で割り、相殺勘定がある場合はそれを差し引き、兄と、妹の債権債務は、〝念書〟に関しては裁判で決着した。その後、裁判の課程で算出された相続人一人あたりの金額を、おじさんに全額支払えと言ってきた訳である。
当然、おじさんには相殺する勘定がないと思ったのだろうが、ほんの2、3回、金の工面をしたことがある。もちろん証明も出来ないし、するつもりもないが、こういうところにも妹あるいはその亭主の人間性が出る。それとも他人同然だったから、請求しやすかったのかな。
ほかにも兄の依頼で登記費用、30万なにがしをおじさんが立て替えたことがあるが、今思えば、それは母に相続した際の費用だったのだ。その立替金はおじさんと母との貸借関係になると思うが、そんな事はもちろん裁判では何も出てきてはいない。
要するにすべて出し損という訳である。愚痴めいて恐縮だが、母の葬儀の際、結構な額を包んでしまった事をちょっぴり悔やんだ。
話しを戻すと、おじさんは、その内容証明を無視していた。何故なら、相続というものは、プラスとマイナスの遺産をすべて明らかにし、協議すべきものだと理解しているからだ。
そうこうする内に、今度は家庭裁判所から相続について調停するから、何月何日に来るようにという書面が届いた。申立人は兄であった。おじさんは一切、相続する気がないのでその旨書いて出したら、家裁から電話が架かってきて、意向を説明すると、それは相続放棄ということですから、放棄の手続をしていただかないと、と言われた。
さて、みなさんは今出てきた〝相続放棄〟という手続をご存じだろうか。一般的には自分が何も相続しない事を相続放棄と言っているが、法的には家庭裁判所へ出向き、所定の書類と切手を添えて『相続放棄申述書』というものを提出し、裁判所が受理しなければ有効とはならない。そして受理されれば、初めから相続人ではなかったと見なされるのである。
第九百十五条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
以上
実はおじさんは、死亡の事実を知った日から3ヶ月以内に申述をしないと放棄は出来ないと考えていた。だから、放棄は無理だと自己判断していたが、書記官と応対した妻の口ぶりからすると、質問には一切答えて貰えず、こちらの見解を述べても、放棄をしていただかないと、と言われるばかりで、もしかしたら3ヶ月過ぎても認められるケースがあるんじゃないの、と言うので、必要な書類を整え、翌日、家庭裁判所へ出向いていった次第である。
応対してくれた事務官(書記官?)に、相続が開始されたのを知ったのは何時ですか、と聞かれたので、葬儀の前日と答えたところ、それは死亡を知った時ですね、3ヶ月を過ぎて来られているということは、何か別のご意見があるのでしょう? と言われたので、おじさんはピンと来た。
条文の『自己のために相続の開始があったことを知った時から―』の意味に気付いたのだ。
自己のために相続の開始があったというのは、必ずしも死亡を知った日ではないのだと。
ただ、事務官は「裁判官の判断になりますので、必ずしもご意見が通るとは限りません」と念を押され、それは致し方ありません、と答えた。また最後に「場合によって、ほかに戸籍等をお取りいただく場合があります」と言われ、承知した旨を述べ、家裁を後にした。
申述書に遺産の額、負債の額を書く欄があったので、家事調停の書類を見ながら書き入れた。それによると、プラスの遺産が不動産で3千数百万円、マイナスのそれが8千数百万と書かれていた。 もとより、一円の金も相続する気はなかったものの、とてもじゃないが、そんなマイナスの遺産を払う気にはならないし、払えもしない。
続く