……何と呼べばいいか分からない携帯をおじさんは5年以上使い続けた。


 パカッと開くタイプのかなり初期のものを使ってきたこのおじさんも、家族の圧力により機種変更をせざるを得ない状況に陥ってしまった。


 スマホは文字も自在に拡大出来る様子だし、おじさんはむしろ喜ぶ気持の方が強かったのに、家内と娘も同時にするつもりで、3人で機種を選んだところ、どうやら『研修生』の腕章を着けた担当の女性が間違った説明をした様で、結論から言うと、10年以上使用しているおじさんと娘は、3万円値引きされ、10年にすこし満たない家内は2万年の値引きということだったのが、そうではないと言うことが20分ほどして明らかになった。


 値引き額はスマホに対してだけで、:結果、家内は変更せず、娘はスマホ、おじさんは折りたたみ式の新機種と幸運にも〝2日間だけ無料〟のタブレットを持つことにされた。


 普通はどこかで怒る場面もあってもよかったのだが、おじさん以外はほとんど怒ることのない家族なので、自信満々の説明が間違っていた事に対し、申し訳ないという一言の詫びもなく、「自分の勘違い」で軽く流し、次に出してきた「新たなご提案」が、変えるつもりの一人を変えない方向に導いたことは、社としてマイナスではなかったのだろうかと、むしろ心配してあげたほどだった。


 それにしても、妙齢の女性ばかりの職場で、うるさい男性クレーマーが来たらどうするのだろうと他人事ながら心配になった。


 猫の目のように『……放題』やら何やら、料金体系が複雑に変化する上に、雨後の筍のように、次々と各社の新機種が生まれる中、こちらの機能にも精通していなければならないのは勿論のこと、値引きとかカードや有料アプリの加入などにも知識の幅が問われる、ハイレベルな最先端の職業と言えるのではないか。


 最先端 → スチュワーデス → いや、今は → CA 並みの職業なのかも知れない。 


 早晩、腕章が取れ、社員として立派に活躍されることをお祈りする。


 斯様な次第でおじさんのスマホ所持の夢は瞬時に潰えたけれども、パカパカ携帯でも極端に薄くなった取説を読むのに忙しく、またタブレットの習得も遅々として進まない。まぁ、楽しいけどね。 (^_^;)