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おじさんは若い頃から何事にも柔軟で、好みが偏るという事はないと自負していた。
大昔のある夏の日、海へ遊びに行くので、海パンが必要になった。
10年ぶりぐらいなので、海パンなんかもうないだろうと思い、その時、流行のものを買って準備を整えたところ、海パンなんか昔のがあるのにという伯母の言葉で、古いタンスを開けたところ、なるほど、一つ競泳用のものが出てきた。
以前書いたかも知れないが、おじさんは母方の祖母に育てられ、金銭面では伯母が家計を支えていた。
おじさんは、競泳なんかしたことがないし、不思議なことだと思ったが、おじさんのタンスに入っているのだから、はいていた事があったんだろう。
そこへ、一緒に海に行く予定の仲間から電話があり、おじさんの海パンが出てきたという。
数年前に海へ行って、そいつのバッグに一緒に入れて忘れていたものだという。
これもすっかり忘れていた。
迎えの車に乗って、これお前のだろうと出された海パンを見て、おじさんは息を呑んだ。
型は時代の移り変わりで違っていたが、色合いがすべて同じだったのだ。
紺をベースに赤の縁取りやら模様が入っている。
昔の競泳用の海パンの話も加え、自動車(くるま)の中で笑い者になりながら、おじさんは柔軟でも何でもないことを痛感した。 。゚(T^T)゚。