Prayer -25ページ目

Prayer

祈り

一緒にいるっていうのは、

心が寄り添うこと。


何度か、君にしたお願い、

ずっと一緒にいてね

君はいつも、うんって言ってくれた。

君からも、ずっと一緒にいてねって言ってくれた。


もう、一緒にいてくれなくなっちゃったね。

今日、はっきりとわかっちゃった。

君の心は、もう、見えないとこまで遠くなっちゃった。


ずっと一緒にいてね。

君が何をしてくれるって言っても、

一緒にいてくれればいいって答えた。

約束、守ってくれなかったね。

お願い、聞いてくれなかったね。

居場所が無くなってる時点で、多分そうなるのは、

わかってたけど。

実際に、実感すると、やっぱり耐えられないほどに辛い。
結局昨日は、君が尊敬する人からのメールの転送と、
俺の返信への「頑張る」というメールの2通。
それも、何故か、絵文字が一切使われない、
デコメでもない、君から滅多に来ない素っ気ないもの。

いったい、月曜に何があったんだ。

日曜、まるで去年の一番幸せな頃のような日の翌日、
いったい、何を起こしてくれたんだ、運命は。

もう、凄まじい位に、君の態度が変化している。
土曜、月曜とゼロ、そして昨日は一切の装飾のないメール2通。

何がなんだか、わからない。

昨日の昼、アリに、一昨日のお礼のメールをした。
翌日の今日、今現在返ってこない。

昨日の夕方、Tは18時の待ち合わせに来なかった。
久しぶりに体験する、「すっぽかし」。
ちと、驚愕した。

持ち上げて、落とす。
持ち上げて、落とす。
持ち上げて、落とす。

結局、Tは俺があきらめて帰る時に送ったメール、
「そんなに嫌だった?ごめんね」に、
すぐに熱中症で寝込んでいて今起きたという返信。
時間も理由もタイムリーすぎて、かなり嘘臭い。
とりあえず、来週と書いてあったが、これもわからない。


神様がいることは、知っている。
運命を操ることも知っている。
もちろん、運命は人を甘やかさない。
運命とはチャンスであり、努力なくして掴めない。
だから、俺は、君のことをひたすら努力してきた。


その努力が、実ろうとすると、たたきつぶされる。
6月12日の最悪の日も、そうだった。
今回も、あの日曜の翌日に、何かが起こっている。
俺と君の関係がよくなりそうになると、
その直後にあり得ないほどに悪い偶然が重なる。


確実に、見えない力が働いている。
俺と君の縁と絆を、壊す方向に。
というか、俺が全ての希望を、失う方向に。
いや、仕事については、全くその逆だ。
売掛金入金消込システムはほぼ完成、運用に入った。
他の全てのタスクも、順調。

でも、何度も言うが、そんなことは、一番大切なことが、
維持できるお金が得られるだけで俺は充分なんだ。
一番大切なこと、それは、君のこと。
君のことが幸せなら、俺は本当は、他のことはどうでもいい。


少しだけ、運命を呪う。
神様を呪う。

それでも俺は今日も、地元の二社にお参りに行くんだろう。
いつか、祈りが届き、想いが届く日を願って。
昨日、4月3日からなかった1日何も連絡が無かった日に、
土曜以来中一日で、またなった。

日曜、あれだけ、俺に幸せな日々を思い出させて。
なのに、翌日、これ。
何もなければ、気が狂う位に苦しかっただろう。
痛かっただろう。

どういうことなんだ、これ。

でも、昨夜はそうでもなかったのは、間違いなくアリのおかげ。


アリは6時待ち合わせの予定に、6時50分位に来た。
もちろん、遅れるという連絡はちゃんと何度かしてくれた。
それに、これは多分体調が悪かったせい。

待ち合わせに来たアリは、のっけから楽しげで、
食事までの道でも、営業外のキャバ嬢とは全く異なる態度だった。
どんなに仲のよい客とでも、例え同伴ですら、
歌舞伎や池袋等じゃないキャバ嬢は店の外での態度が中とは違う。
テンションが、店の中と比較して、だいぶ低くなるのだ。
それは逆に自然なことで、要は店の中ではたいがいのコは、
多少は半ば強引に明るくしているのだ。
それが、昨日のアリには全くなかった。

アリと地元のフレンチへ。
飲み物を決めてすぐ、アリが突然、
「悲しいお知らせがあるんだ」と言い出す。
「店やめるの?」
そうじゃいよ、と言ってアリが話をする。
「3日前、流産したんだ」

アリの彼氏との子供で、生むつもりだったらしい。
ところが、3日前に、流産して、2日前に手術したとのこと。
その手術した日に、俺にメールして今日が実現した。
「会ってちゃんと話したかったんだ」
何で、いきなり俺、アリにとってそんな存在になれてたんだろう。
そんな手術をした夜に、翌々日のアポイントを入れてもらえて、
会うなり、「ちゃんと話したかった」って言ってもらえる相手に。
それも、貴重なレストランの仕事がオフの日に時間つくってもらえて。

ちなみに俺は、店でアリに彼氏がいることはおろか、
切りたい浮気相手がいることも教えてもらっていた。
彼氏の子だと断言してたが、何の確証があるのかは聞かなかった。
浮気相手とは、前回店での俺の助言でちゃんと切ったそうだ。


それから、いろいろな話をした。
君の話、俺の生きがいの話、そうなった理由。
不思議とアリは、俺の話を理解できる。
16からキャバ嬢やってた、地方の短大中退のアリ。
俺の人間環境の大半よりも学がない、苦労もしてないアリ。
なのに、俺の、ある意味かなり理解が難しい話を理解する。
店でもいつもそう思ってきたが、昨日もそうだった。
このタイプとは、何度か出会ったことがある。
それも、女のコばかり。
俺は、彼女たちをこう呼ぶ。
「あらかじめ、知っているコ」

この世には、全く根拠のない神がかった理解力を持つ女のコがいる。
この世の真実を、誰からも教わることなく、その内に知るコ。
神様と、頭の中がどういうわけか、つながっているコ。
おそらく、邪馬台国の卑弥呼もそうだったのだろう。
とても不思議なことだが、現実に存在する超常現象だ。
アリも、卑弥呼とは比べ物にならないんだろうけど、
そんな能力を持つ女のコだと、確信した。

やっぱり、あの交差点の箱の奇跡だった。
アリは、間違いなくものすごく特別な女のコだ。
可愛いだけのそこらの無学なフリーターではない。
明らかに神様から、ある意味俺以上に選ばれている、
かつて「巫女」と呼ばれた人々と同じ能力を持つ女のコ。
そしてその能力は、近くにいる男たちを確実に、成功へと導く。
俺が知る限り、彼女たちはみんなそうだ。

そんなアリを、昨日俺は初めての距離感で見た。
レストランという、正面一定の距離で見るアリは、
やはり半端なく美しい、かわいいコだった。
お店では、距離が近すぎて、ここまではわからなかった。
もちろん、君よりも好きな顔ではない、というか、
この世で俺にとって君以上の顔なんてない。
でも、そのことを意識しなければ、特に笑顔じゃない時、
はっきりとわかるほどにアリは相当な美形で、
周囲の女性の容姿に異様に恵まれてる俺から見ても、
感嘆するほどに、可愛い女のコだと思った。

と、話しているうちに、アリの顔から笑顔が消えていた。
上の話は、だからわかったようなものだ、いつも笑ってるから。
真面目な話をしているからかと思ったが、どうも違うっぽい。
ちょっと、面白くない話題だったかと反省したら、
アリは突然お手洗いと言ってそのまま20分もどってこなかった。
やはり、流産直後なので、体調が万全ではないのだろうか?
少なくともこの状況じゃもうアリは食べ物食べられないだろうから、
アリを心配しながら、テーブルの上の食べ物をひとりで食べる。

戻ってきたアリは、だいぶつらそうで、とても心配になった。
案の定、体調が完全に悪化して、もう何も食べられないという。
「今日は、送ってあげるから帰ろうか?」
「嫌だ、今日はこーちゃんとトワイライト見るって決めてるの」
不思議だった、20分も席に戻れなかったということは、
戻したとか、苦しくて動けなかったとかそのレベルのはず。
なのに、いつでも見れる、というかアリは何度も見てる、
DVDのトワイライトを今日うちで見たいって。

アリが、今日、俺との時間を、どういうわけかとても、
大切に思ってくれていたことが、こんなことでわかる。
もはや、キャバ嬢の営業とか、何があってもあり得ない。
俺はいつの間にか、アリにとって大きな存在になっている。

考えて見れば、なんで一番好きな映画だというトワイライトを、
俺と一緒に見たいって思ってくれたんだろうと思った。
普通に親しい程度の関係なら、外で食事して終わりだろう。
それが何故か、よりによって俺の家で一緒に見たいという。
一番好きな映画を。

昨日まで気がついていなかったが、これは実は凄いことだった。
気持ちが無ければ、あり得ないほどに、特別なことだった。
しかもそれを、20分も動けなくなるほどに体調悪かったのに、
それでも俺と一緒に見ようとしてくれる。
気持ちが無いわけが、なかった。


店を出る時、「ごめんね、せっかくのフレンチ食べられなくなって」
そんな、可愛いいことを言ってくれたアリ。
アリの、俺への淡い想いが、伝わってくる気がした。


うちに来るとアリは、我が家の天井でパイプがむき出しなのに驚く。
「これ、どうしたの?」
「リフォームの時、梁の中にあったのを、処理せずにそのままにしたの」
「この方がかっこいいよね」

家の一番いいパーソナルチェアに座らせて、
俺はその隣でダイニングチェアで見る。
最高の音響と、居心地のいい空間。
ウーロン茶を出して、俺もアリを送っていくつもりでウーロン茶。
見ている間は、ふたりともほぼ完全に無言。
映像に集中した。
アリは、とても寛ぎながら、映画を楽しんでくれているのがわかる。

時々、俺のグラスが空くと、アリはリモコンのポーズボタンを押してくれる。
「お茶入れてきていいよ」
アリのこういう心使いが、すごく嬉しくて、
俺は右隣にいるアリが、とても愛しくなった。
君と親しくなったこの2年で、他のコにこんな感情を持ったのは、
多分初めてのことだと思う。

トワイライトは、予想よりはずっと面白くて、それをアリに言うと、
アリはとても喜んでくれた。
もう、体調不良も治ったよう。
するとアリは、ニュームーンも見ると言い出した。
時刻は23時。

時々、後ろのソファでバイブ音が鳴る。
どうも、電話のようだ。
12時を過ぎると、ひっきりなしにかかってくる。
彼氏なんだろう。
でも、アリは気がついているのに映画を見ていた。

観終わったのが25時、アリはようやく携帯を手に取る。
俺のうちでDVD見るのは、ちゃんと彼氏に言ってるそうだ。
だからだろう、彼氏からすれば気が気じゃないだろう。
メールを何通かやりとりして、トイレに行った。
戻ったアリに聞いた。
「今日彼氏家にきてるの?」
「多分、来てる」と言ってメールで確認、返信でうなづく。
「じゃ、早く帰らなきゃね、また会える?」
「今日はトワイライトで、次の時はこーちゃんのパスタと、
 アロママッサージって決めてるから」
これも、彼氏に伝えてあるそうだ。
彼氏が、アリに裸になるの?って聞いたら、わからないと答えたと。
凄い、俺と君との関係のようだ。
さすがに浮気相手のことは話していないらしいが、
アリによると、確実にバレているらしい。
それでも耐えて、アリを許して、一緒にいる彼氏。

もともと、束縛の激しい彼氏だったそうだ。
でも、アリが「自由でいたい」と言って、押し切っているらしい。
今はもう、アリを自由にさせている彼氏のことを、
「理解がある」とアリは言う。
そうじゃないよ、アリのことを何にも代えがたいから、
そして、自分自身よりも大切に思えるから、
彼氏はアリを自由にさせる地獄に耐えているんだよ。
俺には、彼氏の気持ちが痛いほどにわかる。

でも、それでも俺は彼氏が羨ましいと思った。
アリの心の中で、一番大きな存在は、間違いなく彼氏。
彼の子供を生むつもりだったアリ。
彼氏と、もちろん結婚するつもりだ。
そして、浮気相手は、ちゃんと切った。
あいつや、あの人に心の中の居場所を完全に奪われた、
俺とは、全く違う。

でも少しだけ、俺は幸せだった。
アリの心の中には、どうやら俺の居場所がある。
彼氏よりはずっと小さいけれど、でも確実にある。
昨日、それが本当にリアルに感じられた。

自分が一番好きな映画を、俺と一緒に見ようとしてくれて。
しかもそんな機会を、流産した翌日、手術したその日に、
俺のことを思い出してくれて、アポイントを入れてくれた。
それは、貴重な、レストランの仕事がオフの日だった。
当日の昨日、体調が普通じゃない位ものすごく悪くなったのに、
大好きな映画を一緒に見るという俺との時間を優先してくれた。
そして俺のグラスが空くと、そんな映画をポーズしてくれる。
彼氏だとわかっている電話に出ずに、一緒に映画を見てくれる。
明らかに感じられる、彼氏も入れないアリの中の俺の居場所。

それは、
ここ2ヶ月ほど、
君からもらったことのない、
優しさ。
愛情。
大切に思ってもらえる気持ち。

何で、もらったことがないんだろう。
こんなことを書いたら、席で涙が溢れてきた。


アリを彼が待つ部屋まで送る。
「今日ごめんね、体調悪くて楽しそうにできなくて」
こんな言葉を、アリは帰り間際口にした。
「ごめんね、せっかくのフレンチ食べられなくなって」といい、
アリは何も悪くないのに、俺のことを思いやってくれる。
そう、アリの中に、確実に俺の居場所がある。
君の中には、もう無い俺の居場所が。


昨夜、あれから彼氏ともめたりして、次はなくなるかもしれない。
何の運命のいたずらか、過去、そんなことは何回もあった。
それでも、昨夜、完全に見失ってしまった俺の居場所が、
少しだけだけど、俺がその人の中にいたい人に、少しだけど確実にあった。
それだけで、どれだけ救われただろうか。
それも、その人と一緒にいなければ、確実に最悪の地獄のような夜に。


今日も、君から、連絡は今のところない。
このまま今日も、何もないんだろうか。
そんな、意味のわからないことばかり。
そして、そんな地獄は、確実にエスカレートしていくだろう。

アリがいて欲しい。
今は、それが俺の、望める一番の希望。
だって、君とのことは、もはや希望を持ちようがないほどに、
暗黒の絶望に包まれているから。
望める希望なんて、まるで何一つ思いつかないから。