FIFA World Cup 2010 in South Africa
この目で見てきた本物ワールドカップ5試合。
6/12 アルゼンチン vs ナイジェリア in Johannesburg (Ellis Park)
6/14 日本 vs カメルーン in Bloemfontein
6/19 日本 vs オランダ in Durban
6/20 ブラジル vs コートジボワール in Johannesburg (Soccer city)
6/24 日本 vs デンマーク in Rustenburg
予定の3試合よりも多く見ることになったワールドカップ。
せっかく南アフリカにいるなら、いろんな試合が見たくなるのも仕方がない。
アフリカではじめてのワールドカップ。
北アフリカを含め、今回おじゃましたアフリカの国々で一番人気があったスポーツはやっぱりサッカー。
歴史的背景からか、西アフリカではフランスリーグ、東アフリカではプレミアリーグの試合が毎試合テレビで放送されており、一つの小さなテレビに何重にも人だかりができ、少ない娯楽の一つとしてサッカーを観る人々の姿があった。路上に行くと、ボロ布を丸めてテープでガチガチに固めたボール代わりのものをケリ飛ばしている光景。そんなサッカークレイジーなアフリカンにとってアフリカ大陸で行われるワールドカップはこれ以上にない楽しみだろう。最初に行ったアルゼンチンvsナイジェリア戦の時、もっとも熱狂していたアルゼンチンサポーターが固まる席の最前列で1人大きな自国の旗を振るナイジェリアンの姿が、アフリカで開催されるホームとしてのプライドを感じさせるものだった。
アルゼンチンvsナイジェリア、ブラジルvsコートジボワール両試合とも会場はアフリカンで一杯になると思ったが、フタを開けて見ると、むしろアルゼンチンサポーター、ブラジルサポーターの方が多かったように思える。
自国から直接来ているアフリカンはごく一部で、南アフリカ人が同じアフリカの国を応援している人たちも多かったよう。アフリカンも例外ではなく西アフリカから出るのは骨が折れることなのだろう。
アフリカンに限らず、どの国のサポーターも相手国に睨みをきかすわけでもなく、純粋に世界一のお祭りを楽しみに来ているようだった。
バスが一緒だったあるカメルーン人のおじさんは、「写真は試合がはじまる前がいい」 と言って、一緒に記念撮影をしたり、あるオランダ人は全身オレンジ色のオランダカラーで、そのヘルメットに日本の国旗を乗っけてたり、両国の国旗を顔にペイントしていたり。まったく関係ない国の試合のなのにでかい旗を掲げるアルジェリア人と中国人。女装してみたり、外人がふんどし一丁で相撲取りの格好をしていたり、大人の大仮装大会も同時に開催されていたようだった。ブラジル人はトイレの前でサンバを踊り、アフリカンはジャンベのリズムで踊る。
それぞれの国柄で感情表現をしている様子を見ているだけで、こっちまで楽しくなってくる。
そして、騒がしい外から会場に入って緑のグラウンドが見える瞬間……
同じ国民というだけで知らない人すらも仲間と思えてしまうワールドカップの舞台。
4年に1度だからか、世界中から集まった人たちはその遊び方をよく知っているように感じた。
いざ試合がはじまると熱狂してきて、シュートの度に席を立ち上がるアルゼンチンサポーター。
前の席が立つと後ろの席がさらに立ち上がり、座ったまま見ていられなくなることも多々あった。
お客さん同士で「見えねーぞ!」だの「座れ座れ」と言い合っていても、「前のやつが座らないからしょうがない」と言って、しまいには座席の上に立ってしまったり…なんていうやり取りもアルゼンチン戦の時にはあった。
あんまり言うこと聞かないもんだからデッカイ南アフリカ人の警官が登場。
世界一危険な都市配属の警官。その凄みはちょっとやそっとのゴロツキレベルなら歯が立たない雰囲気を醸し出していた。とりあえずサイズからして違う。
会場にはそんな騒がしいサポーターの声援だけではなく、ブブゼラと呼ばれる南アフリカの笛が鳴り響く。
期間中ショッピングセンターだろうと、バスステーションだろうと吹きまくっているブブゼラ。
最初は、新鮮で感動的だったが、だんだんその音量と決まった音しかでない音がつらくなってきた。
何度か吹かしてもらったけど、吹いているほうは気持ちいい。
聞いてるほうはあまり気持ちよくない、という法則が自分には当てはまるようになっていった。
あるナイジェリア人が会場で何かを書いた板を持っていた。そこには、
『FIFAに感謝する』 といった下りから、
「VUVUZELA NO」、「Drums YES」 という内容の事が書かれていた。
アフリカはやっぱり一つじゃない。
今回意外だったことの一つにチケットがある。
日本vsカメルーン、日本vsオランダ、ブラジルvsコートジボアールの3戦分は事前にFIFAの公式サイトでチケットをゲットしていた。しかも一番高いチケットのcategory1(160$)。選手が豆粒に見えるのはあまりに寂しいので、どうせ見るなら前列の一番良い席と思っての事だった。サイト上ではほぼ売り切れ寸前に見えていたチケット。
実際スタジアムに行くと、ブラジルvsコートジボワール戦を除いて席は余っていた。
入場ゲートの前で
『TICKET』 とかいうボードを掲げていると、次々と話しかけてくる人たち。
多くはチケットを探している人だが、売りたい人も少なくない。
試合開始時間が近づいてくると、正規の値段より吊り上げてくる人が激減して、正規料金以下で買えてしまう。
賢い人はタダの紙切れになる前に、さっさと売って早く会場で楽しみたいと思っている。
こればっかりは運だろうけど、日本戦なんかだと半額以下の値段で手に入る事もある。
ゲートを越える際のチケットチェックでは、発券者の名前なんて確認することはないので、チケットさえあれば気にすることはなにもない。ゲートの入場チェックも液体物の持ち込み以外チェックは甘かった。
そしてチケット関連でのミソは、category3(80$)のチケットだろうが、空いている最前列のcategory1(160$)の席に余裕で座れること。観客同士を仕切る柵など無い為、いったんスタジアムに入ってしまえば日本代表のベンチ裏にだって陣取れる。それぐらい世界的には日本戦は人気がないため、こっちとしては気心知れた人たちと応援できて楽しめた。しかも手が届きそうなほど近い場所で。選手の息づかいまでわかるほど。
岡ちゃんメガネの分厚さも確認。
まあ、これもアフリカ開催だけの裏技なのかもしれない。
日本で散々騒がれただろう治安については、最低限の事を気をつけていれば特に問題ないように思えた。
やんわり脅されて旅行会社に安全料という大金を払ってしまった人たち、情報に散々惑わされて行くことを断念した人たちが拍子抜けするほど期間中の主要な場所の治安は改善されていたと思われる。
その大きな理由に、ワールドカップ開催前から期間中にかけて、普段強盗を本職とする方々に仕事が与えられた事が上げられる。事前の噂では、街のゴロツキを警備員として雇ったり、スタジアム建設やインフラ整備の工事要員として雇用していったという話。普段旅行者をボコボコに痛めつけている人が警備員になっても怖いと思っていたけど、実際はなんともなかった。ただ、道路工事している人が、仕事中に物乞いをしてきた時は、なんとなく紙一重な状況かもしれないとも感じたが。
日本戦の時に、
『置き引きにあった』 とか
『物を盗まれた』 とかいうのは、治安どうこうの話ではなく、注意力の問題。これを治安と結びつけて、『やっぱり危険』なんていうニュースが流れてしまっているのは単にネタほしさからだろう。ある程度集団で行動して、周囲に最低限の注意さえ払っていれば、警備の強いスタジアムの目の前で、かつあげに囲まれることも回避できるだろう。日本の常識を南アフリカに当てはめたがる報道はいささか傲慢ではないだろうか。
何はともあれ、すごかった今回の日本。
前回に比べ、人気も実力も劣ると言われていた日本代表。
生で見ると、中盤の3人の貢献度がとにかくすごい。
特に阿部。絶対にサボらず、守備に安定感をもたらす最適なポジショニングはまさに心臓だった。
中沢のかっこよさはいうまでもなく、なんかでかく見える本田、闘志むき出しで仲間に激怒しながら注文を出す大久保、走り方がオカマぽいがなんかやってくれそうな松井、スプリント力が半端じゃない長友、ダイビングヘッドで飛び込んだ遠藤、細身に見えて鎧の様なボディの長谷部、サポーターに愛される男・岡崎。
ビックネームも少なく、さらにテレビで見ると退屈だろうけど、生で見るといろんな所が気がついてほんと面白かった。最初に見た代表戦がワールドカップの舞台ってのも忘れられない。
最後のデンマーク戦の時には、みんなで顔面にお面ペイントして応援したり、コテコテのサポーターの一員になれたのも楽しすぎた。
日本戦に限っていえば、海外で見る日の丸と君が代にシビれた。
別に右でも左でもないけど、単純に1年5ヶ月ずっと離れていた日本がものすごく身近に感じれた瞬間だった。
軍歌調の他国とは違い、会場を静まらせる君が代。そして、良く響く歌声。
本気で国歌歌って気持ちが高ぶるのなんてサッカーの試合以外にないでしょ。
この面白さを知ってしまったからには、きっとまた生のワールドカップを見に行きたくなるだろうに。
また楽しみが増えてしまった。
メッシの高速ドリブル
テベスの止まらない動き
ベーロンの渋いパス
マーティンスのゴールへの迫力
エトーの3人抜き
カイトの運動量
ベントナーのでかさ
ドログバの決定力
カカのアシスト
ロビーニョのテクニック
ドゥンガのファッション
ルイス・ファビアーノのスーパーゴール
超一流の凄いプレーを超える衝撃だったのは
生マラドーナ 。
なんまら小さい。
目立ちすぎ。ボールに触りたすぎ。マスコットみたい。
こんな面白い監督は衝撃。
お祭り騒ぎの会場とサポーター、選手の入場から始まり国歌斉唱、
テレビで見慣れた色のユニフォーム、生の試合とゴール。
ゾクッとする場面はたくさんあったけど、一番感動したのはいろんな外国人や地元の人が集まるショッピングセンターの大きな画面で見た開会式。あれを見た瞬間、なんかよくわからないけど熱くなってしまって、油断すると人前で感極まってしまいそうだった。
いきなりわけわからんシューマンみたいのが出てきて何かを必死こいて唱えてる。
完成度の低いフンころがしがサッカーボール転がして、民族衣装来た男たちが自信満々でジャンベ持って中央に集まり、全然合ってない踊りにお構いなしで弾けるような笑顔のママ。気持ちが先行して全然音に合ってない動き。首相すら我慢できなくなって踊りまくる。いざ音が激しくなると体全体で表す想像を超えた表現力。
開会式で見たアフリカンのまったく嘘のない感情表現の仕方は、アフリカを旅して見てきた姿そのままだった。
そして、アフリカ大陸に手作り感抜群の足跡が並べられていった。
その足跡は南アフリカ、もしくはアフリカから世界へ向かっていて、『すべてはここからはじまった』、というメッセージのようだった。西を歩いて、北から来たということでは方向は逆だったけど大陸に足跡が並べられているのを見てると、今までのことがフラッシュバックして、たまらなくなった。
この開会式を見た時に、少し長引いた旅に対して本当の終止符を打てた気がした。
懐かしい思い入れとともに、また新しい刺激を受けた半月。
そしてアフリカの旅も終わりを告げた。