※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#769  俺は許せなかった

 

 

 

(本放送)・・・1976年8月18日

(再放送)・・・2020年4月30日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・城山観光ホテル、東亜国内航空、日本カー・フェリー、

       大栄殖産株式会社

(捜査担当・オープニング表記)・・・日高班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、木塚刑事(藤山律子)、片桐刑事(笠達也)、

田代刑事(日高晤郎)、笠原刑事(伊達正三郎)、日高主任(葉山良二)

 

(出演者)・・・

小野川公三郎、石川博、本多洋子、東条甚太、加藤真知子、磯野博、利根司郎、

高橋信子、鶴岡修、山口ひろみ、島宇志夫、湊俊一、花岡菊子、渡辺千世、

大東梁佶、西田昭市、石井宏明、伊達三郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

若者たちは突っ走る、何かを求めて!

無気力な者が群れをなしたとき、凶暴さが発揮された。

自己を信じた若者は、無軌道グループに対抗した。

傷つき、離反していった二組(フタクミ)の恋人たち・・・。

信ずるものを失った彼らは、

一様(イチヨウ)に都会から逃げ出した、追われる身となって・・・。

再び、それぞれが、巡り会った・・・。

決断の時が迫る!

次回、特捜隊、「俺は許せなかった」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

#766 赤ちゃんの詩(ウタ)#769 俺は許せなかった、は同一脚本(監督は異なる)、日高班担当、ゲスト出演もほぼ変わらないことから、鹿児島ロケ2本撮りと推察される。

・なお「掲示板特捜隊 9」では、当作が特別機動捜査隊(第361回)東京は恐い のリメイクと指摘されており、【第2回再放送】では欠番を免れているが、当方未見。その通りならば、今回の鹿児島ロケは、2作ともリメイク作ということになる。

・オープニング表記で、改名したはずの西郷隆が、再び西郷昭二に戻る。

・田中係長(山田禅二)の出演場面が見当たらない。

・エンディング表記で今井幸介=伊達三郎とあるが、劇中では常に苗字を「ぬまた」と発声されている。撮影当時、実在する今井葬儀社をロケで使い混同した可能性が高いため、以下本文では「今井葬儀社を経営する、沼田姓の父と娘」として表記する。

 

 

(視聴録)・・・開始約10分後半まで

 

ある日の早朝6時5分、練馬区石神井公園のボート場の池に、棺桶を積んだボートが浮かび、棺桶に男性死体発見との通報から、日高班の捜査開始となる。鑑識からは、死因は絞殺、アルコール分の検出から酔ったところを絞められ、棺桶には男性本人のほか7,8人の指紋が検出された。死亡は午前4時前後と推定、泊り込みのボート場管理人(未詳)は、午前5時半ごろにボートを発見、午前4時はまだ就寝中だったという。

そして、遺留品の東都予備校学生証から被害者はわかばやし明(磯野博)と断定、関根・木塚は聞きこみに向かう。

また、新聞配達の青年(未詳)からは、昨日の午後6時ごろ、棺桶を積んだ堺屋酒店車両の助手席から半袖男が降りて、近所に「佐藤」という家が無いか聞かれたが、その際、運転者の男が「いつまでつきあわせるんだ」と叫んだ証言を得る。そこで笠原・田代は、堺屋酒店のある東村山市へと向かう。

 

関根・木塚は、東都予備校で明の現住所を聞き出し、そのマンションへと向かうが、そこでは明の姉・乃里子(加藤真知子)が、パトロンのベーカリー経営者・高木やすお(湊俊一)と過ごしているところだった。関根は事情を説明、遺体確認もあり2人に同行するよう要請する。

笠原・田代は堺屋酒店を訪れ、店主・堺(大東梁佶)、運転者の店員・砂村勝(マサル、小野川公三郎)に聞きこむ。勝は昨日一緒にいた半袖男を今井葬儀社の従業員・安西慎一(石川博)と話し、運んでいだ棺桶は、昨日の午後6時ごろ慎一とともに今井葬儀社に送り届けたという。そして、このいきさつから勝は笠原・田代を今井葬儀社に案内するが、会社は閉まっていた。

 

すると、隣家薬局の夫人(高橋信子?)が出てきて、社長の沼田幸介(伊達三郎)と娘・京子(山口ひろみ)は1時間ほど前に、急に鹿児島の実家に行くと言い出かけていったという。その京子は、村山貯水池の方で、暴走族らしき数人に連れ去られ、昨日はとうとう帰らなかったことも判明する。

さらに今朝5時ごろ、夫人が釣りに出かける夫(未詳)を見送る際、京子がタクシーに乗って帰宅、服は破れて泣きじゃくる姿を目撃。沼田・慎一が外に出てくると、石神井公園近くの佐藤邸から出てきた京子を乗車させた、というタクシー運転手(塚田未人)の話から、慎一はそのタクシーに乗り佐藤邸に向かい、その後は連絡が無いことも判明する。このことから笠原・田代は、状況を日高主任に報告すると、勝を連れ佐藤邸に向かうことになるが、隣家薬局の夫人の発した「鹿児島」という言葉に、微かに反応した勝には気づかないようであった・・・。

 

 

上記本文は、#766 赤ちゃんの詩(ウタ) と同様、開始約4分前半以降のもので、省略した冒頭部分は京子が拉致(?)される直前までの出来事が描かれます。そこでは暴走族らしき6人の男女、その中には明のほか、佐藤邸の御曹司(?)・達男(東条甚太)も登場しており、慎一・勝も居合わせていたことがわかります。ただ、この時点で明殺害の場面は無いので、自分はどうも好きになれない「刑事コロンボ風味」は希薄であり、謎解きの興趣は失われてはいません。この点、前作の鈴木敏郎監督との違いかとも感じます。

 

そして、佐藤邸では、誰もいない屋敷内に居座る慎一、迷惑そうに見つめる通いの女中(花岡菊子)を日高主任・片桐が訪れます。そこに達男ほか4人の男女が帰宅しますが、昨日のいきさつから慎一が殴りかかり、さらに駆けつけた笠原・田代・勝も交えるなど混沌となり、所轄署に舞台は移ります。そして所轄署刑事(石井宏明)を含めた取調べで、達男らは、今朝5時ごろ起きると京子はおらず、明は棺桶で寝ているようなので、悪ふざけもあり5人で棺桶を石神井公園のボート場まで運んだと供述しますが、信憑性については疑問がありました。

 

こうして八方塞がりの様相の中、動機の点からいえば明に婦女暴行された京子の線を片桐から具申されると、日高主任は関根・片桐に鹿児島出張捜査を指示、舞台は鹿児島に移り、そこでは、鹿児島県警刑事・桜井(西田昭市)、津川知子(本多洋子)、知子の母(渡辺千世)が登場。東京、鹿児島にわたる事件の結末はどうなるのか、興味津々にストーリーが後半に展開していきます。

 

 

当作は、東京で起きた過去・現在の事件、それを巡り慎一・京子のカップル、勝・知子のカップルの生きざまを、殺害された明を軸に展開するストーリーです。刑事ドラマとして謎解きの興趣もあり、人間ドラマとしての体裁も整えています。

ただ、これは個人的見解になりますが、事件の遠因ともなる「ある人物の癖」については納得しづらいものがあります。これは、確かに周囲を不快にする癖には違いないのですが、犯罪の原因とする設定は正しかったのかどうか? そして、その人物が言う割には未だに克服できていないなど、同情しづらい環境になっているともいえます。

正直、自分が当作で印象に残ったのは、上記の「ある人物の癖」であり、これが脳裏にあるため全篇通して集中して観れませんでした。リメイク作ということなら、特別機動捜査隊(第361回)東京は恐い では、どういう設定になっていたのか興味のあるところです。

 

ですので、前作#766 赤ちゃんの詩(ウタ) との比較でいきますと、部分的には当作の天野利彦監督に軍配はあがるのですが、トータルだと(欠点があるのは承知の上で)前作の鈴木敏郎監督の方が上に思えます。ただ、双方とも視聴満足度については、決して高いとはいえず、以前の鹿児島ロケの、桜島噴火前三部作、桜島噴火後三部作と比較して、今回の日高班・鹿児島遠征・二部作は良い出来には見えませんでした。

その原因は、かつて「掲示板特捜隊」で語られてきた、後期になると「かつての放送回脚本の使いまわし」が多いという傾向にあるのではないか? 

自分自身は、かつての放送回

#766 赤ちゃんの詩(ウタ) のベースとなる、特別機動捜査隊(第439回)同姓同名 

#769 俺は許せなかった のベースとなる、特別機動捜査隊(第361回)東京は恐い 

をいずれも未見のため断定できませんが、かつての放送回はいずれも昭和40年代前半期の作品のため、リメイク作との時代背景が噛み合わないことが考えられます。当作でも、脚本をそのまま使ったため、(備考)にある葬儀社の父娘の苗字にアンバランスさが出たり、2つの事件の因縁に、明だけでなく「別の人物」の存在が影を落としているのが描ききれない歯がゆさが目につきます。

 

このように、評価をするには厳しい日高班・鹿児島遠征・二部作ですが、キャラ的に気になったところを1点。知子を演じた本多洋子で、ネット検索をしてもなかなかヒットせず、特捜隊か後継番組・特捜最前線が代表的な出演となる、稀有な女優さんです。テレビドラマデータベースで出演作を見ると、特捜隊常連女優というより、NET・テレ朝常連女優といったほうがいいのかもしれません。自分が観賞した【第3回再放送】以降、エンディングで一列~三列で表示された範疇では、本放送が1971年3月24日の#490 春雷の女 から特捜隊に出演しています。見方によっては、タレントの小池栄子を小太りにした感じで、決して美人とはいえないのですが、個性があるからこそ出演依頼が途絶えなかったともいえるでしょう。

これは、特別機動捜査隊(最終回(第801回))浮気の報酬 にも出演していることから、スタッフたちからも、その存在は認められていたと思います。しかし、1979年6月13日本放送の特捜最前線(第115回)チリアーノを歌う悪女! が現在では確認できる最終出演作品です。