※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#748  ミミズを飼う女

 

 

 

(本放送)・・・1976年3月17日

(再放送)・・・2020年2月13日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・田中秀夫

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

黒沢のり子、木下清、西園寺宏、矢崎滋、佐藤明美、望順子、大阪憲、小野敦子、

佐野哲也、宮井えりな、浅野進治郎、守屋俊志、神田正夫、中庸介、中村竜三郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

降りしきる雨の中で、愛が激しく燃えたとき、

女の憎しみは殺意になった。

しかし、女を取り巻く人々の優しい愛が、

女を死に追いやる!

・・・・・・・・(聞こえる女の声)

女 「(中略)・・・(涙声)」

・・・・・・・・(以下、ナレーション)

殺人は、愛の証(アカシ)なのか!?

憎しみの証だったのか!?

愛が頂点に達したとき、そこに現われた真実とは・・・!?

次回、特捜隊、「ミミズを飼う女」、御期待ください。

 

※上記の「女の声」の内容につき、興趣の問題もあり中略。

 

 

(備考)・・・

・三重県でのロケ作品だが、地元での協力・協賛の表記は無い。また出演者の相似から #741 海女と真珠の詩 と #748 ミミズを飼う女 とは2本撮りしたものである。

・田中係長の出演場面が見当たらない。

・下記本文は、三船班視点で作成。

・榎本邸の女中を演じた原田雅子は、当作以前は三田三枝子の芸名で活動(三田美枝子とも有り)。wikiによると、当作出演後に小島三児と結婚したことになる。

 

 

(視聴録)・・・開始約19分前半まで

 

雨上がりの朝の月極駐車場では、経営者・桜井(佐野哲也)が今朝6時に巡回しに来たところ、頭から血を流した女の死体を発見、現場に到着した三船班は捜査を開始する。死亡推定時刻は午前1-3時、凶器は血の付いた石で、数度頭部を殴打されていたが指紋検出は可能と見込まれた。また、死体から指輪が抜き取られた跡、ハンドバッグの物色された跡があるが、所持していた名刺から、死体は貴金属・榎本商会の榎本晶子(マサコ、佐藤明美)と判明。三船主任は、松木・水木に晶子の店・自宅をあたるよう指示をする。

 

また畑野・石原は、駐車場の事務小屋に侵入形跡を発見。桜井から、以前小屋に潜んでいた窃盗犯が、契約車両から車内物品を盗んだことがあるとの証言から、小屋に放置された空のウィスキーボトルを回収。三船主任は、畑野・石原に車両契約者にあたるよう指示をする。

 

松木・水木は榎本邸を訪問。晶子の夫・榎本克哉(西園寺宏)の車を洗車中の女中(原田雅子)に、榎本を呼び出してもらい、昌子について交互に聞きこむ。女中からは、昨晩11時ごろ、西浦三郎(中村竜三郎)という男から電話があり、晶子に繋ぐとすぐに出かけたという。榎本は、昨日名古屋で宝石展示会のため、自分が帰宅したのは午前1時であり、晶子の件は先ほど会社の宿直からの連絡で、初めて知ったという。松木は、死体確認のため榎本の同伴を申し出ると、榎本は着替えに席を外すが、その間、水木は榎本の車のタイヤの泥を採取する。

 

一方、駐車場の車両契約者からは手がかりを掴めなかった畑野・石原に、三船主任は西浦にあたるよう新たに指示。すると、質入れのため、店主(神田正夫)にダイヤの指輪を鑑定中の西浦を発見、捕まえる成果を挙げる。そして、取調室で、三船主任・関根・畑野で西浦を訊問するが、そこに石原が三船主任を呼び、三船主任は席を外す。石原は前科者カード(註・写真付)を見せながら、ウィスキーボトルの指紋は、窃盗で逮捕歴のある水谷弘司(木下清)であることを報告したのだった。

 

そこで、畑野・石原が水谷のアパートを訪れるが不在。すると、隣室のドアが開き、学生・慶一(矢崎滋)から、水谷は同棲中のパチンコ店員・順子(望順子)と伊勢・鳥羽方面に出かけたという情報を得る。一方、特捜隊本部では、晶子の実家が伊勢のため、解剖後に遺体を伊勢に運び埋葬するという、榎本の申し出を三船主任は了解するものの、西浦からの聞きとりから、駐車場で一緒にいた女性のことを追及。水木も、車の泥が駐車場の成分と一致したこともあり追及に加わるが、榎本は女性の存在を認めたものの、誰であるかは頑として話さない。そこに、畑野・石原が戻り経緯を説明すると、三船主任は2人に伊勢への出張を決断、三重県警と共同で捜査にあたるよう命じるのだった・・・。

 

 

ストーリーはその後、三船主任は鑑識から、採取した石にはビニールテープの接着液の痕跡と、西浦、そしてもう1人の男の指紋が検出された報告を受けます。そして、あるタレコミを逆探知、城南大学病院が発信元と判明すると、三船主任は関根と同道。看護婦(鈴木ナナ)から、入院中の大学教授・辺見(浅野進治郎)の妻・由紀(黒沢のり子)ではないかと指摘を受けます。辺見は教え子の榎本が妻を亡くしたことに、手を差し伸べるよう由紀に頼むのですが、由紀が榎本邸に電話すると、女中から伊勢に向かったことがわかります。そこで、由紀も伊勢へと向かうのですが、三船主任はこれらの情報から、由紀が榎本と会っていた女性ではないかと思い、三船主任は由紀を、畑野・石原が水谷・順子を、松木・水木が榎本をそれぞれ追跡。

 

その伊勢では、上記以外にも、これまでの登場人物が集結。さらには、三重県警刑事(中庸介)、鳥羽ロイヤルホテル・フロント(大阪憲)、国際秘宝館・支配人(守屋俊志)、その従業員(宮井えりな)も登場、前作 #741 海女と真珠の詩 の延長のような雰囲気のもと、ストーリーは二転三転して興味を惹きつけていきます。

 

 

前作の評価を引用しますと

>事件単体だけをとると、偽装心中殺人事件、犯人たちの逃亡、逃亡資金のため

>の覚醒剤取引など単純なもので、トリックがどうとか、アリバイがどうとかと

>いう特捜隊の伝統的な捜査を期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。

>しかし、それを大きく超える伊勢を舞台としたアクション篇であり、流れがと

>にかくスピーディー、あれよあれよとクライマックスに行く流れは面白い。

でした。

 

それでは当作はどうか? といいますと、逆に特捜隊の伝統的な捜査手法を踏襲して、主要登場人物をロケ地でもある伊勢に手繰り寄せ、そこでの大団円に持っていくスタイルを採っています。具体的にいえば、かつての立石主任(波島進)率いる立石班のロケ作品を観ているようで、それを立石主任より闘争心の強い三船主任がどう展開させるかというところがミソで、これは奏功していると考えます。謎のステッキの人物の登場も新趣向で、高木彬光の探偵小説シリーズ・ 墨野隴人を思い起こすような設定であります。

 

当作もまた、前作に引き続き面白い作品です。それでは満足度100%の作品かというと、前作と合わせて満足度100%と言ったほうが正しいかもしれません。実見されていない方だと、上記本文のストーリー展開・犯人探しの妙にある程度頷かれると思います。ところが実見すると、序盤からさまざまな人物の視点からの展開・回想が描写されており、上記本文でいう「榎本と一緒にいた女性は誰だ!?」という興趣が吹き飛びます。具体的にいえば、視聴者からはわかり切ったことを、三船班がわざわざ追いかけている設定は、全体的にみた「謎解き」のスタイルと合致しにくく、似つかわしくないと感じます。

 

さらに、こういうところまで立石班ストーリーに似なくてもいいのにというほど、辻褄の合わない点が見受けられます。たとえば

(1) 各人の回想と、松木・水木が榎本邸での聞きとりとの時刻の矛盾。

(2) 指紋による追及も、肝心な人物の指紋がついていない点など、石自体への矛盾

があります。まあ、(1)については上記本文の下線部今朝6時のところは、石原自体が「ゆうべの6時」と発言。桜井の「朝9時-夕方6時にフリー客はチケットを発行」「昨日は雨のため、5時に閉めた」を、雨のため早く閉めたから、雨の上がった翌朝6時に見回りに来たと解釈して、訂正したのですが、「時刻」についてはその他にも?がつくところが目立ちます。

当初、序盤の回想、各人の回想と書き起こそうと考え、比較するとその点は明らかなのですが、小川記正ばりに膨大となってしまうため断念、この点は実見していただくことで御勘弁を。まあ、この点は、贔屓目でみれば、田中秀夫監督が芥川龍之介の「藪の中」を意識した気配もあるので、プラスマイナスゼロというところに着地するかもしれません(後述)。

 

しかし、この犯罪は、「晶子がある調査をしていた」ことを犯人が知っており、あの日あの時刻にあの駐車場に晶子がいて成立するという内容であります。それを犯人が知っていた経緯が不明なところが、刑事ドラマとして弱いところだと感じます。そして、ラストで三船主任が追及する犯行動機についても、「ある電報」1通だけで解決というのもいささか乱暴です。

それでいながら、前述した「特捜隊の伝統的な捜査手法」は守られており、#716 紬を着た女 を思い起こすようなラスト8分も嫌いではありません。先ほど、「前作と合わせて満足度100%」と述べました(個人的には当作の方が好み、というのが実感なのですが・・)。すなわち、特捜隊の枠を越えようと努めた前作の天野利彦監督(アクション重視)、古き特捜隊の枠を守りながら新趣向も考えた田中秀夫監督(謎解き重視)の比較にも見え、どちらが秀でて優れているということではなく、互いの個性を出しあった2作品かな? とも考えます。

 

さて、「藪の中」の意識とは、序盤で全体的な回想場面があるのですが、後の各人の回想が描かれると、(先ほどの矛盾点とは異なる)整合しない点が見出されます。そして、それは

・誰かが嘘をついているのか?

・それとも、皆、真実を語っているのか?

・あるいは、皆が嘘をついているのか?

と想像が膨らむよう、上手いカット割りをしており、意味のある「不整合」ともいえます。

さらには、殺人事件の犯人は? その目的は? どういう計画で? と縦横に刑事ドラマを展開させていこうというのが、様々な人物を「順序良く」登場させることにより成立させるなど、そういう意識が見えます。

ですので、刑事ドラマとしての矛盾点を抱えながらも、上手くまとめている技法は好評価できるもので、三重県ロケも奏功している点から

>前作と合わせて満足度100%

というのが、自分自身の見方ではあります。

 

さて、当作の黒沢のり子は、#722 ある恐怖の体験#741 海女と真珠の詩、での黒帽子女のイメージとは異なり、「可愛い女」を上手く演じました。テレビドラマデータベースによると、特捜隊への出演は【第2回再放送】の頃からされていたようでしたが、当作が特捜隊最後の出演になっているようです。個人的には、「影のある女」の演じ方が板についていると思っていただけに、当作が最後だと思うと残念な気持ちもあります。

さらには、wikiには

>2018年現在、関係者と連絡が取れない状態となっており、

>一般社団法人・映像コンテンツ権利処理機構の不明権利者のリストに掲載されている。

とあるなど、特捜隊を観続けている当方からすると、寂しい気もしてしまいます。