※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#664  女の罠

 

 

 

(本放送)・・・1974年7月24日

(再放送)・・・2019年4月25日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・若林幹

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川恒夫)、谷山部長刑事(和崎俊哉)、

岩下刑事(岩下健)、保田刑事(船水進)、桂刑事(佐竹一男)、

田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

小笠原まり子、簗正昭、宇南山宏、鮎川浩、建部みち子、逗子とんぼ、

清水美佐子、三草由里子、山田貴光、射秀容、小野富士子、田浦正己、

小林裕子、須藤健、村田知栄子

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

それは船田健にとって、まったく不可解な出来事であった。

夜、自分のベッドでひとり眠ったはずなのに、

朝、見知らぬ死体が傍に横たわっている・・・。

しかも、自分の部屋ではなく、

女の部屋で眠ったことになるのだ・・・。

彼は、このミステリーの背後に潜む、

緻密(チミツ)に計算された黒い影に怯えた。

捜査が始まった段階で、第2のミステリーが起こった。

第2のミステリー・・・、

それは最初の死体が、あたかも不倫な関係を清算した

心中のごとくに変貌していたのである。

金融業者とホステスの死!

金と痴情に絡む殺人事件として、

意外な、まったく意外な方向へと捜査は進展していった!

次回、特別機動捜査隊、「女の罠」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・小笠原まり子については、雅羅倶多館「藤田まことと小笠原まり子」の項に詳しい。

・序盤の松山駅らしき撮影は、近辺に愛媛ナンバーの乗用車、道後温泉のポスターから現地撮影されたものと推察されるが、協力・協賛の表示はされていない。なお、ホテル・貴海楼については、ネット検索するも見つけられず。

・キーマンのひとり、鮎川浩の役柄は、奥多摩にある児童養護園の関係者を演じる。

 

 

(視聴録)

・・・開始約12分半ばまで

 

ある夜、プロゴルファー・船田健(簗正昭)を住まいの東京マンションへ送り届ける、運転者兼マネージャー・あいば陽子(小林裕子)と、同乗するプロゴルファー・本間(宇南山宏)だったが、そのとき陽子は「練習もしないで、人の奥さんなんかと・・・」と呟く。そのわけは、船田の部屋307号室の前で待ち構えていた、金融業を営む後援者・高杉修一郎(須藤健)、その愛人で407号室に住む坪内ミキ(射秀容)の発言で明らかになる。高杉は、船田が松山へツアーに発った日から妻・聡子(フサコ、小笠原まり子)は行方不明であり、私立探偵・こさか(田浦正己)を雇って調べていることから、聡子と一緒のはずだと詰め寄ったのであった。実際、聡子は船田を追いかけ、こさかの尾行に気づかず松山・道後温泉へ回ったが、行き違いであった。

 

聡子が追ってきたのを知らない船田は、高杉、ミキを振り切り部屋に入ると、ウイスキーを飲み始めるが、そこに電話がかかる。相手は、道後温泉にいる聡子からで、高杉との離婚を考え追ってきたが、入れ違いのため、これから船田のところへ向かうということだった。翌日の正午にゴルフクラブで待ち合わせを約し、船田は電話を切り、再び飲み続けると、いきなり気が遠くなる気分に襲われ、ベッド横に倒れこむ。そのとき、黄色いパンタロンの女性風の足元を目にするが、意識は遠くなっていくばかりであった。

 

翌朝、ベッドで目が覚めた船田は愕然とする。いつの間にか赤いパジャマに着替えていたこと、隣にミキが死んでいること、さらにここは407号室であることであった。船田は、慌てて非常外階段を使い307号室へ向かうが、部屋前で電車・フェリーをフル稼働して帰京した聡子と出くわす。とりあえず室内に入る2人だが、そこでも高杉の死体と遭遇してしまう。

 

時が経ち、管理人・吉沢(逗子とんぼ)の通報で、矢崎班は東京マンションに到着。が、高杉、ミキの死体は407号室で発見、ミキの勤めるバーのマダム・うえはらユリ(村田知栄子)から、電話してもミキが出ないから見に行くよう連絡があり、吉沢が向かうと407号室の鍵は開いており、2人の死体を発見したというものだった。死亡時刻は今から1時間前の午前8時、死因はウイスキー瓶に混入された青酸カリによる毒物死と推定、枕に被害者以外の男の髪が付着していた。毒物死なのに整然とした死体状況、無施錠から、谷山は心中とは思えなかった。

さらに、住人(建部みち子)が、午前8時30分ごろ、非常外階段で4階から3階へ降りてくる赤いパジャマの男を目撃したこと、吉沢の話から、男は307号室の船田であることが確認される。

 

矢崎主任、谷山、田坂が307号室に向かうと、鍵を開けて入室しようとする陽子に出くわす。中に入ってみると誰もおらず、矢崎主任の話す高杉、ミキの事件に陽子は驚く。陽子の話から、船田は高杉の妻・聡子と幼なじみだったことも明らかになる。そこに部屋の電話が鳴り、陽子が出ると相手は船田だった。本間の部屋におり、くさくさするので昨晩別れてからは本間と会って一晩飲んでいたといい、これからゴルフクラブで落ち合う約束をする。

 

本間の部屋では、船田のほか、本間、聡子が集まっており、先ほど陽子に話した内容は本間からのアドバイスによる偽証であった。荒唐無稽な2人の死体発見ばかりか、船田、聡子で高杉の死体を407号室に運んだことから、警察が信じるわけがないという考えからであった。とりあえず、船田、本間はゴルフクラブへ向かい、聡子はここに残ることにする。が、聡子はこの一件について、高杉が持つ船田への嫉妬心から、ミキを殺し自殺をして、それを船田の仕業に見せかけようとしたと確信を持っていた。

そして、2人がタクシーで出かけるのを見送った聡子に、声をかける男がいた。松山から、撮影カメラまで持って尾行してきた、こさかであった・・・。

 

 

ストーリーはその後、高杉邸のお手伝い2人(清水美佐子? 三草由里子?)から、聡子は高杉の前妻の付添看護婦であり、亡きあとすぐに再婚したこと、ユリは高杉の昔からの妾であることが判明。そして、ゴルフクラブでの矢崎班の鋭い追及に、船田、本間は観念、ユリからの情報(註・こさかを高杉に紹介したこと)から、本間宅に田坂、岩下が向かうと、聡子はこさかの凌辱強要に抵抗、果物ナイフで怪我を負わせて逃走する。

 

特捜隊本部では、船田の取り調べは続き、出来すぎた話に矢崎主任、谷山は納得するはずもなかった。部屋の鍵についても、陽子のほかに誰に渡していたか覚えていないというのでは話にならず、釈放は程遠かった。陽子、本間は事情聴取後釈放(桂、保田が尾行)することになる。谷山は田中係長に、ここは船田も釈放して監視すべきだと意見具申するが、現時点(捜査2課からの高杉の財産10億情報有り)では、田中係長は船田・聡子の共犯を濃厚と見ており意見を却下。むしろ、ユリを始めとした裏づけ証言をとるよう指示する。

 

矢崎主任は、船田からの睡眠薬入りウイスキー、パンタロンの人影の話が気になり、再び307号室の鑑識捜査を申し出るが、この点は田中係長も同意する。すると、ウイスキー瓶には反応が無いものの、ベッド下のコップに何か薬物混入跡を見出し、船田は誰かに利用されたのかもしれないと矢崎主任は思いを新たにする(以上、開始約22分過ぎまで)。

 

 

そして、入院中のこさかから撮影フィルムを提供してもらい、聡子のアリバイが立証。田中係長は、船田単独犯の見込み、あるいはコップの件で矢崎主任、谷山から船田が利用された可能性を具申されるに及び、船田釈放・監視の断をくだし、ユリ、陽子の新たな情報提供も有り、舞台は奥多摩へと向かいストーリーは佳境に入るというものです。

よくよく考えると首をかしげる点はあるものの、これは面白い作品です。横山保朗の厚みのあるストーリー展開に加え、キイハンターの常連監督である若林幹が生まれ変わったかのような積み重ね、畳み込みのある演出。過去の特捜隊演出から、アクションに偏りのあるものだと思っていましたら、大間違いでした。

 

特捜隊の伝統である、「迅速(スピード)、科学(サイエンス)、秘密(シークレット)の3S」が完璧とはいえませんが上手く回転しており、クライマックスの奥多摩ロケは見どころがあります。あっと驚く事件の真相もさながら、開始約43分半ばの怪談的、あるいは米国映画「キャリー」の先鞭的なカメラワークにも膝をたたく感じでありました。

ここまでくれば、犯行・発見・通報の時間間隔が接近しすぎの点、船田の言い訳を聞いた陽子の態度の冷静さ(註・その後矢崎主任に告白した昨晩のアリバイとの比較)などは、些細に見えるほど、勢いが見受けられます。とにかく、自分だけかもしれませんが、ラスト3分で真相が判明、今までの場面・出来事の積み重ねで、短時間でも真相に納得できるつくりはお見事。

かつて、別監督作品ながら#563 陽のあたる町 で

>いくら何でも、事件の解決をラスト3分、松戸総合卸売市場でまとめようとする

>のは乱暴すぎます。

と評したのとは、対照的でありました。

 

当作は、検証本を読んでもストーリー、内容に触れておらず、桂を演じる佐竹一男の漢字表記のことだけの記載というのが残念。おそらくは、当時の新聞記事、あるいはTVガイド的な雑誌にも出ていなかったものと推測されます。また、当作について篤志家からの批評も有るのですが、集中して観れば「さっぱり分からない」ストーリーではなく、事件発生の「ややこしい状況」も劇中で説明されています。まあ、傑作、秀作かといわれれば?がつくと評される人もいるでしょうが、少なくとも佳作と称してもおかしくない作品だと感じました。

 

なお、いつも、2作品放送されたら、1作目は週末日曜日の午前中にアップして、2作目は再々放送されるのが翌週木曜日の午前10-11時なので、その木曜日11:00に予定時刻アップしています。が、今回は#663 あたしは二十四才の女 が首をかしげる出来だったこと、当作が平成最後の【第4回再放送】ということもあり、平成最後の日、平成31年4月30日の12:00に予約アップさせていただきました。