特別機動捜査隊に関連する作品、映画・Vシネ・テレビドラマ・動画に限定せず、あるいは脚本・監督にこだわらず、主観的に関連性がありそうと判断したものを取りあげました。

 

 

【憲兵と幽霊】 ※当作DVD販売以前に、「憲兵銃殺」と題名改変してのVHS販売歴有り

 

 

(公開日・本放送日)

1958年8月10日公開・新東宝作品、約74分

2000年9月22日DVD販売(amazonのHPから抜粋)、発売元IMAGICA

(脚本)石川義寛

(監督)中川信夫

(出演者)

中山昭二、久保菜穂子、天知茂、中村彰、三原葉子、宮田文子、芝田新、三村俊夫

國創典、高松政雄、万里昌代、胡美芳、高村洋三、坂根正吾、晴海勇三、三砂亘、

原聖二、山田長正、岡竜弘

 

 

(特捜隊関連事項)

特捜隊で藤島主任を演じた中山昭二が出演。また、準レギュラーで毎朝新聞・村上記者を演じた村上不二夫が出演(当時の芸名は三村俊夫)。

 

 

(備考)

・端役で表記のある斉藤千弥子は、後の斉藤チヤ子と思われる。

・旧盆の時期に怪談仕立てで好評だった憲兵と バラバラ死美人のあと、約1年後に製作・公開された作品。

 

 

 

(私的あらすじ) 

※配役名は表記が無いため、Movie Walkerその他を参考に作成。

 

軍靴の音が聞こえる昭和16年秋、新郎の憲兵伍長・田澤一郎(中山昭二)と新婦の吉川明子(久保菜穂子)は、田澤の母・しず(宮田文子)が見守る中、東照宮で結婚式を挙げていた。その姿を上官の憲兵中尉・波島(天知茂)と田澤のライバルの憲兵軍曹・高橋(三村俊夫)が見つめていたが、波島には明子が田澤を選んだことに、まだ諦めきれない気持ちが漂っており、冷やかす高橋には、長期抗戦、最後に勝利を得れば良いとうそぶいていた。

 

昭和17年夏になり、東京第五憲兵分隊では騒動が起きていた。高橋が管理していた鞄から軍事機密書類が盗まれたことで、波島に報告するが、日本陸軍の運命を決する書類であることから、重罪ゆえ死刑は免れないと通告する。うろたえる高橋に、波島は誰かに罪を着せるよう巧妙にそそのかす。さらに、その相手を田澤にすることにより、両者の利害は一致することになり、高橋は田澤の部屋に空の鞄を置いておく。

田澤は軍事機密種類窃取の疑いをかけられ高橋から拷問を受けるが、そもそもこの件は波島が仕組んだことで、裏で大物スパイ・張覚仁(芝田新)と繋がり、軍事機密書類を提供していた。思うがままに動く波島は絶頂の中におり、ダンザー・ルミ(三原葉子)とも逢瀬を重ねていた。

 

そうとは知らず、陸軍二等兵でもある田澤の弟(以後田澤弟と略、中山昭二の二役)は、憲兵分隊に面会を求めるが断わられてしまう。自白に進捗が見られない中、波島、高橋は、明子、しずを連行、田澤の目の前で拷問にかけ自白を強要。ついに田澤は、してもいない罪状を認めてしまう・・・。

 

 

(視聴録)

 

上記は、開始約18分までをまとめたもので(全体で約74分)、その後、波島、高橋が行なう田澤への処分、田澤弟への任務強要、明子、しずへの仕打ちなどを経て、波島が大陸(漢口)へと向かうことになります。ここまでが前半約35分、波島の腹黒さを上手く描写、おそらく上映中の観客の視線は釘付けになったことと思います。これは、波島演じる天知茂の役割が大きく、憲兵と バラバラ死美人での端役に近い扱いが嘘のようでした。憲兵と バラバラ死美人以前、怪談・本所七不思議(1957年、監督・加戸野五郎、主演・明智十三郎)でも悪役が板についていましたが、大きく羽ばたいたのはスター毒殺事件(1958年、監督・赤坂長義)であり、当作の後に公開された毒蛇のお蘭(1958年、監督・加戸野五郎、主演・小畑絹子)でも主演クラスの動きを見せました。当作でキャスティングが3番目にも関わらず、1、2番目の俳優(中山昭二、久保菜穂子)を喰ってしまったと感が大きいのは、偶然ではないでしょう。

 

・・・といろいろ述べましたが、面白かったのはここまでで、後半約39分、波島が渡航してからの展開が非常にまだるっこしいのです。怪談を売りにしているのにショッキング場面が単発的に現れたり、ルミの正体なるものがあっさり描かれたり、国内での用意周到な波島のキャラが漢口では出たとこ勝負のキャラになってしまったりで集中しずらいのです。

ラスト前の墓地の場面が、ジョージ・A・ロメロのナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968年)を彷彿とさせるような場面(日本未公開なので、脚本、監督とも未見のはずですが)であるのに、そこまでの勢いが減速気味であるのが残念に感じます。

 

また、中山昭二の扱いも、前年の憲兵と バラバラ死美人の流れからすれば、田澤はともかく田澤弟としての出番があってもいいような気もします。翌1959年には東映に移籍したことから、事前にその情報を得た新東宝が対策を施したとも考えましたが、翌1959年の新東宝、殺人犯・七つの顔・前後篇(監督・三輪彰)では主演なのでそれは無さそう。当作での扱いは不明のままでありますが、田澤弟が波島、高橋を追い詰め、それを幽霊が側面支援するストーリーのほうがベタといわれても良かったような気がします。

ただ、これらの欠点は目立ちながらも、憲兵中尉・波島の非道さを少なくとも前半では描き切ることに成功しているので、怪談映画という枠組みを外せば、もう少し見入ることができる作品に仕上がったのでは・・・?

 

さて、中山昭二、久保菜穂子の出演組み合わせは新東宝倒産前、倒産後でも多岐に亘って見かけることがあります。しかし、天知茂、中山昭二、あるいは天知茂、久保菜穂子の出演組み合わせは意外なほど少ない。前者では江戸の牙・#14・秘境 女軍団逆襲す(1980年)、後者江戸川乱歩の美女シリーズ・#23・炎の中の美女(1984年)があるくらいか?

絡みもあったのかどうかも記憶に残らないほどなので、もしかして、天知茂にとって新東宝はあまり思い出したくない時代の出来事だったのかと、つい考えます。