※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#636  つめたい故郷の風】 ※故郷を「フルサト」と読む形をとる

 

(本放送)1974年1月9日

(再放送)2016年12月29日

(脚本)元持栄美

(監督)龍伸之介

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)高倉班

松木部長刑事(早川雄三)、田中係長(山田禅二)、日高刑事(日高吾郎)、

鷲見刑事(柴田昌宏)、片桐刑事(笠達也)、笠原刑事(伊達正三郎)、

高倉主任(里見浩太朗)

 

(出演者)

萩生田千恵子、清水石あけみ、力石民穂、山田喜芳、石橋暁子、草柳種男、

和久井節緒、小沢紗季子、松風はる美、吉川満子、穂高稔、星美智子、

森山周一郎

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

被害者(ガイシャ)は、

ポケットに1枚の写真を残して死んでいた。

連れ込みホテルにシケこもうとしている、

男女の写真であった。

男は誰か?

女は・・・?

そして、写真を撮った者は?

捜査が進み、

女は被害者(ガイシャ)の情婦・畑中清子と判明、

事件の夜、

被害者(ガイシャ)と激しく争った事実が浮かび上がる・・・!

特捜隊・高倉班は、

清子を追って、彼女の生まれ古郷(コキョウ)に向かう。

汚れきった都会から、汚れきった身体で故郷に帰る清子に、

もはや失ったものは何も帰ってこない・・・。

あくまでも美しい故郷の山河、そして、つめたい故郷の風は、

果たして清子に何を教えたか・・・?

次回、特別機動捜査隊、「つめたい故郷の風」に御期待ください。

 

 

(備考)

・検証本199頁の短い(あらすじ)から、「#369  晩秋の女」(1968年11月20日放送、監督・中村経美?)のリメイクとも考えられ、【第2回再放送】でも欠番回ではないが、当方が未見のため未確認。

(上記追加)ある方のブログあらすじから、「#369  晩秋の女」は元持栄美脚本、中村経美監督、立石班の話で、リメイク作と判明しました。

・萩生田千恵子は、「#625 生と死の詩」の萩生田千津子と同一の女優。

(追加)R6.6.19

・劇中では、川那部は清子を「自分の妻」と言っている、しかし実際には、予告篇に「畑中清子」とある通り、拙稿当時は情婦、内縁の妻としての発言であると考えたため以下本文に、「畑中兄弟兄妹」(註・兄弟 は後日取消の意)と表記した。

(追加)R6.6.19

・原型作でもある#369  晩秋の女【スペシャルセレクション】を観賞したこともあり、以下本文の配役名表記を一部変更した。

 

 

(視聴録)

 

ある夜、新風荘の川那部進一(森山周一郎)は、出前に来た割烹・川浜の女店員・中川ミチ子(清水石あけみ)に襲いかかり、手籠めにしてしまう。そして、その翌日、北区十条の路上の坂下で、川那部の転落死体が発見される。犯行時刻は午後10時前後と推定され、ホテル・光苑前での男女2人の写真、国立第二療養所の薬袋が遺留品として発見された。

 

松木部長刑事、鷲見刑事はホテル・光苑への聞きこみで、写真の2人は午後2時ごろ来て1時間後に帰ったこと、支配人(山田貴光)から2人の忘れ物のライターを受け取る。そして、ライターの線からナポレオン楽器・特約店店主・吉岡文次(和久井節緒)が浮かび、川那部が写真を持って店に来たことが判明。川那部は吉岡に、妻の清子(萩生田千恵子)に手を出したとして、50万円を請求。吉岡はへそくりの10万円を渡して手を打つように頼むが、吉岡の妻・郁子(小沢紗季子)が聞きとがめ、大騒動になったという。これは、写真の線から、笠原刑事、片桐刑事が写真店主(草柳種男)へ聞きこみ、写真の現像を急ぐチンピラ風の男・五郎(大理淳?)を洗い出し、川那部が清子を使って美人局をやっていたことと合致していた。しかし、高倉主任は現場に10万円が残されていないことを、怪訝に感じていた。

 

また、薬袋の線から、国立第二療養所に入院中の中川悟(力石民穂)が浮かび上がる。そして、病室で看病するミチ子とは兄妹であり、ミチ子の恋人の丸和運送勤務・勇(山田喜芳)も同席していた。高倉主任、松木部長刑事、鷲見刑事、日高刑事は看護婦(石橋暁子)から兄妹仲の良い証言を得るが、病室のベッドの下に1万円札が複数枚挟まれていることに疑問を持つ。さらに、昨晩、悟は午後8時にミチ子から電話を受けたあと無断外出、午後11時過ぎに帰ってきたこと、事件現場から病院まで車を使えば、その時間に帰れることも判明する。

 

その後、高倉班は新風荘・管理人(築地博)から、昨晩、川那部と清子が大喧嘩をして、出て行った川那部を清子が追いかけ、帰ってきたのが午後11時過ぎという証言を得て、清子を尾行する。清子は、生まれ故郷の西多摩に戻る。そこには、母(吉川満子)が、兄・伍一(穂高稔)が、温かく迎えてくれるはずであった。しかし、ごいちの妻・好江(松風はる美)は、なぜかいい顔を見せなかった・・・。

 

 

その後、清子の周りには、ある家の母子(星美智子、長谷川誉)が現われ、清子の過去に何があるのかを興味津々に描いていきます。容疑者も複数挙げて、犯人探しの趣も出しています。そして、事件の疑問点を次々に潰していき、一体犯人は誰かというところまでいくのも悪くはありません。

 

しかし、ラスト5分、島宇志夫のナレーションとともに、いきなりの飛ばし証拠での事件解決には驚きというより、口あんぐりでした。今まで、特捜隊の宿命ともいえる「時間不足」については何度か触れてきましたが、今回ほど「ええっ!?」と感じる作品は珍しいのではないかと思います。まさかこんな収拾の仕方があるのか、立石班で秀作を連発してきた脚本・元持栄美、監督・龍伸之介のコンビとは思えないほどの出来で、これはいくらなんでもないでしょう。

 

題名からして仕方ないのでしょうが、個人的には開始25分以降の西多摩での描写が蛇足だったような気がします。もちろん、つめたい故郷がポイントなのでしょうが、それなら中川兄妹と畑中兄弟兄妹との比較をしっかり描き出さないと、単なる田舎の人の狭量さを強調するだけに終わってしまうのです。これを描くには、当然時間も必要ですが、御存意の通り、特捜隊の制作体制は時間内(CM無しでは約45分間)に抑えたい気持ちが強いのか、前後篇に分けるような雰囲気は見当たりません。

だからこそ、西多摩描写を極力カットして、都内描写に集中すべきだったのではと考えます。あるいは西多摩描写を、回想の数分にとどめる手は無かったかとか・・・。

 

リメイク作(?)だからこそ、前作「#369  晩秋の女」にある程度肉づけさせてもいいような気もしますが、ロケ得意の龍伸之介監督ゆえにロケ地の呪縛に陥ってしまったとも考えられます。新生特捜隊となってから、龍伸之介監督らしさが抜けたように見受けられます。果たして、これから龍伸之介監督がどのように変わっていくか、注視するのもまた観賞だと感じました。