※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#617  若者よ 夜明けを探せ】

 

(本放送)1973年8月29日

(再放送)2016年10月20日

(脚本)駒田博之

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)伊豆畑毛温泉 フジタウン、伊豆長岡温泉 荏原観光ホテル

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、倉岡刑事(倉岡伸太朗)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

北条清、高田直久、山口暁、笠井一彦、菅野直行、白鳥勝、和田恵利子、

五十嵐五十鈴、千早蘭、中田真理、片桐陽子、亀井三郎、川野耕司、山田甲一、

如月寛多

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

行く(ユク)夏の太陽の残照のように、

若者たちのエネルギーは、

何かを求めて雄叫びをあげ、荒れ狂っていた。

そして、仲間が1人、また1人、

ライフル銃で射殺されていった・・・。

現場(ゲンジョウ)に必ず残されている、

ユリの花の意味するものは何か!?

特捜隊・三船班の必死の捜査をあざ笑うかのように、

東京、伊豆と広範囲にわたり、

ついに4人の若者が殺害された!

そして、また、5人目の若者の前に殺人鬼は立った!

次回、特捜隊、「若者よ 夜明けを探せ」に御期待ください。

 

 

(備考)

・特捜隊で山口刑事を演じていた山口暁が、ゲスト出演。

・「行く(ユク)夏」とは、夏の終わりごろという慣用句。

・バーテンはダンスクラブとホテルのクラブと2人登場しますが、エンディング表記でバーテン=武田正信、バーテン=仲野裕二とあり判別不能。

 

 

(視聴録)

ある夜、ダンスクラブに若者・田中(三上定良)がライフルで撃たれて入ってきたが絶命。三船班の捜査にバーテンが何か言いだそうとするが、若者・富田(菅野直行)は押しとどめる。が、富田は何者かに屋内スキー場に呼び出され、同じようにライフルで射殺される。石原刑事はいきり立ち、ダンスクラブのバーテンに言いそびれたことを問いただすと、現場にユリの花が置かれていたことを告白、第1、第2の事件ともに共通していた。

 

さらに、伊豆長岡のガソリンスタンドの従業員・高橋あきら(白鳥勝)が、仕事終わりにホテルのクラブに出向いたところ、何者かに「富田の次はお前だ」との電話を受ける。気晴らしに車を飛ばして海岸に出向くも、またも同じようにライフルで射殺され、ユリの花が置かれてあった。

 

そして、高橋射殺事件の新聞記事を読んで落ち着かない若者・吉村(高田直久)のマンション部屋にも、殺害予告電話がかかってきた。怯える吉村は、ボクシングジムの友人・若林(笠井一彦)に理由も話さず部屋を貸す。部屋でくつろぐ若林は、かかってきた殺害予告電話に首をかしげていたが、管理人(山田甲一)から入口に友人が待っていると言われ、出てみるとライフルで狙撃されてしまう。幸いにも箇所が右腕のみだったため、若林は吉村を問い詰め一緒に警察に行くよう諭すが、吉村は1日の猶予を求め若林も了承する。

 

そして吉村は奇怪な行動をとる。中谷(ナカヤ)と表札のある家の庭にユリの花を見て怯えたり、工事現場の作業員(松下昌司)に工事を続けてほしいと訴えたりする。さらには、ある会社に村上まさひこ(山口暁)を訪ねるが、新婦・みどり(五十嵐五十鈴)とハワイ旅行中で帰国は明日と受付(宗田千恵子)から聞いて絶望するなど、常軌を逸していた。

 

一方、三船主任は関根部長刑事、水木刑事、倉岡刑事を伊豆長岡に出張させて、現地警官(亀井三郎)、高橋の宿泊先・荏原観光ホテルの支配人(川野耕司)から聞き取りを進め、繋がりを解明しようとする。

しかし、それでもライフル魔は、4人目の生贄を求め吉村に迫ろうとしていた・・・。

 

 

吉村に上記の危機が迫るのが開始後27分過ぎ、それから三船班が動き出すのが29分過ぎなので、ラストまでの16分の流れの速さと(当時の)若者世代に警鐘を鳴らす三船主任の姿は痛快です。確かに、辻褄が合わない部分はあるのです。たとえば、畑野刑事が4人組の男女を退去させたはずなのが・・・という場面、なぜ吉村が工事続行を嘆願するのか・・・という場面など。ストーリーが膨らみすぎカットせざるを得ない状況が見えるのですが、それを勢いある流れで帳消しにしているようで、見ていて気にはならないのです。

なぜか、それは脚本、監督ともに、勧善懲悪の流れを意識しているからで、その実現の試みが上記の短所を埋めているといったところでしょうか。犯罪の張本人には、これから待っている生き地獄を暗示する一件落着場面など、単純かもしれませんがよく考え、良く描いていると思います。

 

そしてラストの、三船主任のアップでの台詞、個人的にはもっと凄みのある表情・声でやってもらいたかったところはありますが、若者世代への苦言を一言で言い切る場面はなかなか捨てがたい。名場面とは言えなくても、印象に残る場面ではあります。

(追加)

個人的には、「おまえら、銃刀法違反だな!」と言い放ち、全員検挙のラストにしても良かったような気もしますが、時代的には許されなかったのでしょう。

 

また、事件のキーパーソンとなる百合子(千早蘭)、哲哉(北条清)の登場を最後の最後(ラスト16分)まで残しています。出たとこ勝負ではなく、弓の弦を目一杯引っ張り続け、ここぞというところで矢を放つなど、天野利彦監督のツボを押さえた演出だと考えます。

 

ただ、犯罪の張本人の実態はもっと描いてほしいという気持ちはありましたが、それだけその人物の憎々しさが勝っていたということです。その人物にしては、かつてない演技だったかと思うのですが、だからこそ明快に描いてほしかったです。ある人を死に追いやった理由、煽るだけの場面だけでは、少し物足りないと思った次第です。

そして初見よりも再見して面白味を知る作品、これが当作だったのではと思います。