※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#605  恋の裏通り】

 

(本放送)1973年6月6日

(再放送)2016年9月8日

(脚本)西沢治

(監督)今村農夫也

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、関根部長刑事(伊沢一郎)、

倉岡刑事(倉岡伸太朗)、石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、

畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

西恵子、遊佐ナオ子、原田康悦郎、直木みつ男、曽根秀介、金子勝美、八代亜紀、

直木晶子、外山高士、多々良純

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

欲望渦巻く夜の社交場、ナイトクラブ・環(タマキ)・・・。

そこに中年男とホステスの男女の出会いがあった。

人生半ばを独り身で過ごし、

砂を噛む思いに明け暮れた五十男・梶本。

若さ溢れるホステス・しのぶの、抗し難いまでの眩しい魅力。

が、男を騙し騙されるホステス家業に荒んだしのぶの心に、

梶本の想いが通ずべくも無かった・・・。

前後して発生する、ホステス仲間のダニ、財津殺人事件!

しのぶが、この事件の容疑者となったとき、

その人生は足元から崩れ始める。

そのとき、初めて梶本の深い愛情に目覚めるのであった。

次回、特捜隊、「恋の裏通り」に御期待ください。

 

 

(備考)

・デビュー3年目、「なみだ恋」ヒット中の八代亜紀が、本人役でゲスト出演。

 

 

(視聴録)

 

新宿のクラブ・環、雇われながらもママ・環(直木晶子)のもと、歌手・八代亜紀(本人役)とも懇意なしのぶ(西恵子)をはじめとしたホステスが集う店である。しかし、店内ではマネジャー・財津(外山高士)が暗躍、ホステス・マチ子(遊佐ナオ子)と関係を持ちながら、しのぶに何やら接近、閉店後の雨の中で財津としのぶは言い争うことになる。が、しのぶは逃げ、通行人・梶本(多々良純)に自宅マンションの部屋の中にまで送ってもらい、居てもらうことになった。財津がドアを叩き脅しの言葉を繰り返すのを、梶本はただ見つめていた。

 

しかし、新宿・歌舞伎町の路上で財津の死体が発見されることになる。死亡推定時刻は深夜の午前1時ごろ、鈍器のようなもので殴られた後頭部打撲による脳内出血死だが、凶器の特定は困難な状況だった。三船班は、マチ子の証言からしのぶに着目、午前1時のアリバイの証言者・梶本が見つからないことから、しのぶを連行しようとする。しかし、そこに梶本がしのぶを訪ね、午前12時30分から2時まで2人で部屋にいたと証言、12時30分廻ったあたりで財津がドアの外で騒いでいたことも明らかになる。

梶本に助けられたしのぶだったが、梶本が再度しのぶのマンションに現われたのには理由があった・・・。

 

 

当作は、主要なゲストを最小限に絞り、殺人事件を通じて、夜の世界で働く人の生きざまを描いた作品です。殺人事件は刺身のツマで、夜の世界の悲喜劇に重点を置いています。また、かつての西沢治脚本、「#560 放浪への脱出」での「生きる目的とは」の問いに、詩集を売るヒッピー(原田康悦郎?)を登場させたのが答えであるかのようで、その点は興味深い。

 

特に、しのぶ役の西恵子は、#451以降の特捜隊の役柄とは一変させた、水商売の女性の部分を演じてくれるのも見逃せません。「#519 真実の報酬」でもホステスを演じていますが、当作のような女性の裏表・機微までは演じていません。また、ウルトラマンエース出演時のイメージを持つ人は、当作の演技にたまげるかもしれません。

梶本役の多々良純も好演で、おちゃらける姿や急に怒り出すような演技も無く、ただただ寡黙な定年退職した五十男を演じています。この人は芸歴が長く、映画を見ると何かしら出演していて記憶に残りやすいのですが、当作のような演技を見たのは初めてです。当作の面白さは、この2人の存在にあったといってもいいくらいです。

 

というものの、事件の追及というか、真相解明には「ええっ!」と驚いてしまったことは否定できません。以前、「#594 新しい女」での真相を「鑑察医の権威がぶっ飛んでしまう畑野刑事の追及」と評しましたが、当作では鑑察医そのものの存在がぶっとんでしまうほどの出来事が起こっているからです。

さらに、しのぶを疑った理由のひとつに、財津が騒いでいたのを隣近所の人が聞いていないこと、百人町に梶本なる姓名は無いなど、を理由にするのも短絡的であり、いつもの三船班らしからぬところも目立ちました。

 

ですので、刑事ドラマ、人間ドラマに分割すれば、相互に落差がある(前者のマイナス分を後者で補う)と評すのが、無難なような気がします。ラストを、後者的な形で終わらせたのも、それを暗示しているかのように思いました。

 

(2018年1月13日 全面追加)