※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#555  慕情】

 

(本放送)1972年6月21日

(再放送)2016年3月31日

(脚本)佐々木武観

(監督)天野利彦

(協力)埼玉県、野上町、長瀞観光協会

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、田中係長(山田禅二)、石原刑事(吉田豊明)、

白石刑事(白石鈴雄)、水木刑事(水木襄)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

榊ひろみ、下条アトム、笠達也、溝呂木但、安田明純、中庸介、於島鈴子、湊俊一、

中真千子、丘寵児、天王寺虎之助、明石潮

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーション(=青木義朗)をそのまま聞き写しています

 

四角いジャングルに、巧妙に仕組まれた八百長試合。

この黒い罠より逃れる、若い男・雄二と、病身の女・かなえ。

2人をはぐくんだ故郷(フルサト)、長瀞への逃亡。

その美しい川の流れも、

暴力団・島倉組の出現で、濁流(ダクリュウ)の渦と化す。

病身のかなえの身辺にも、次第に死の影が漂うのであった。

次回の特捜隊の活躍に、御期待ください。

 

 

(備考)

・寄居駅(八高線、東武東上線、秩父鉄道)、長瀞駅(秩父鉄道)を舞台とするが、後の関越道となる練馬IC-川越IC開通は1971年12月20日、東松山ICまで延びたのが1975年8月8日、上記駅に近い花園ICまで延びたのが1980年7月17日(wikiより)、当作放送日と照らし合わせるとなかなか興味深い。

・榊ひろみの、後ろ姿だけですが、微妙なチラ見ヌード(?)有り。

・後に片桐刑事を演じる笠達也がゲスト出演。

 

 

(視聴録)

 

ボクサー・高田雄二(下条アトム)と、ボクシングトレーナー・西森宏治(笠達也)の妻・かなえ(榊ひろみ)は逃げ、互いの故郷である長瀞へ向かっていた。三船班は西森宏治殺害の重要参考人として2人の行方を追跡、長瀞駅近くの竜谷閣に臨時捜査本部を設置する。さらには埼玉県警・笹島(湊俊一)、駐在警官・外山(丘寵児)の協力を仰ぎ、田中係長まで出張してくるなど物々しい体制で臨んでいた。そして、かなえの父母(明石潮、於島鈴子)、かなえの幼友達(中真千子)、川下りの船頭・重吉(天王寺虎之助)への聞きこみから、かなえは故郷から出るとき後ろめたさもあったが、現在病身でもあり、姉のように慕う雄二から上京のとき頼られたこともあり、長瀞に帰ってくることに確信を持つ。

 

また、ボクシングジムのマネージャー(上田侑嗣)、アパート管理人(花原照子)からの聞きこみで、宏治と暴力団とのつながり、雄二は宏治から八百長試合を強いられていたことが明らかになる。時を同じく、暴力団4人組(未詳)が長瀞に出没し2人の行方を追っていたが、それを秘かに監視する釣り人(中庸介)の姿があった・・・。

 

当作は刑事ドラマというより、新生・特捜隊の新しい流れを作ろうと人間ドラマの要素を取り入れた、新趣向の三船班のストーリーです。事件そのものについては最後の方にならないと語られず、いわゆる追跡と2人の逃亡者の人間模様を描く作品となります。姉弟のような思慕の情から、男女の恋愛感情のようなものに発展する過程を、小屋~船の場面で表現しようとしているなど、(#451以降の)立石班・藤島班時代には見られませんでした。

そして、ラストまでの10分間は、アクションシーンはあるものの鬼の三船は影を潜め、仏顔での思いやりに満ちた行動は今まで見せてきた以上のものがありました。三船主任目当てで観賞しても、面白い作品です。

 

しかし、刑事ドラマという範疇では出来がいいとは思えません。初見のとき、天野利彦監督にしては「中途半端な出来だな」と思うことしきりで、発端の事件の概要がさっぱりわからず「特別機動捜査隊」としてはいかがなものかと感じていました。てっきり、逃走路を序盤で明らかにしていたので、追跡アクションにすると思い込んでいたせいもあり、恋愛ものとする方向性に肩すかしをくらったようでありました。これは初見時、特捜隊=刑事ドラマ=謎解き=アクションのイメージというか先入観が大きすぎたのでしょう。

 

ところが、ある程度特捜隊を知った現在の状態で、改めて鑑賞しますと(矛盾しそうですが)これがなかなか面白いのです。初見時には気づかなかった「愛情」というものが、男女間だけではなく「親子」「故郷の仲間」そして「主人公のひたむきさに心打たれた一刑事」を描いており、過去からの様々な想いが故郷の川の舟上で昇華。さらに、最後に三船主任が見せる、今ではありきたりとなった定番の警察の行動も、この場面では非常に印象深く描かれています。

 

ですので、当作は佳作に届くか届かないかというよりも、心に残る作品と評したほうが良い内容です。いつも前に出ていく女性が似合う榊ひろみが薄幸の若妻を演じたり、このところ「不思議な畑野刑事」状態の宗方勝巳が久々に画面にフル登場、射撃の名手・水木刑事と数作前の出来事を反映させた水木襄の役割など、さりげなく見どころがある作品です。

 

(2017年12月18日 全面追加)