※ 特別機動捜査隊 前書き

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#508  狂った夏】

 

(本放送)1971年7月28日

(再放送)2015年10月15日

(脚本)元持栄美

(監督)田中秀夫

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(田川恒夫)、

鑑識課員(西郷昭二)、関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、

白石刑事(白石鈴雄)、畑野刑事(宗方勝巳)、水木刑事(水木襄)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

新井茂子、沢久美子、根岸一正、木下陽夫、中野文吾、皆見武史、若山みち子、

松平錦治、溝呂木但、宮内順子、柄沢英二、宮川洋一、西田昭市、村上不二夫、

市村俊幸

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

ある大学の講師が殺害された。

事件の捜査とともに明るみに出る、

被害者(ガイシャ)の許嫁(イイナズケ)でもある

高校の女教師の生徒による暴行事件・・・。

その事件は、ある週刊誌に実名・写真入りでスッパ抜かれる。

ペンの暴力の前に、死にまで追いやられる女・・・。

さらに起こった編集長狙撃事件・・・。

捜査の進展とともに2つの事件は、

次第に1本の糸へと結びついていく。

ある殺人事件を通して、

現代社会の歪(ユガ)みに蠢(ウゴメ)く若者と、

生活のためには手段を選ばない男の生き方を描く、

次回、「狂った夏」に御期待ください。

 

 

(備考)

・予告篇でいう「暴行」とは「強姦」の意。

・当作は、村上不二夫、市村俊幸の音声が聞き取りにくいので注意。

・(追加)R3.11.4

当作が、毎朝新聞記者・村上としても、男優としても、村上不二夫の特捜隊最終出演作品となる。ビヤガーデンでの、編集長・正木との討論を鑑みると、新聞記者としての限界を感じているようにも見え、特捜隊最終出演作品としては非常に興味深い。

 

 

(視聴録)

東南大学講師・米倉孝一(柄沢英二)が墜落死体で発見された。週刊誌2冊と入試問題集が遺留品として発見され、三船主任、白石刑事は、週刊誌の線から発行元の週刊リアル社を訪れる。編集長・正木(市村俊幸)は、娘・美代子(沢久美子)と小林(松平錦治)との結婚を控え仕事に勤しむ毎日だが、ある夜に猟銃で左腕を狙撃されたことは伏せている。三船主任は、正木をマークするよう、白石刑事に命じる。また、入試問題集の線から栄和ゼミナールを訪れた畑野刑事、石原刑事は、米倉を塾講師に招聘しようとしていた運営者(宮川洋一)の証言から、米倉は教授令嬢と近々結婚の予定だったという情報を掴む。

さらに、関根部長刑事、水木刑事は、正木の書いた婦女暴行事件記事の被害者である女教師・岩崎昌子(新井茂子)について、勤務先の昭和南高校に出向き、生徒の中川のぼる(木下陽夫)に目をつけ、その友人の秋田(中野文吾)、横井(皆見武史)も関連有りとにらむ。

三船主任は、昌子が弟・英二(根岸一正)と暮らすアパートを訪ねるが、そこで事件の核心となりうべき写真を発見するのだった・・・。

 

当作は、人間を描く新生・特捜隊の「理想形」に挑戦、近作で不調が続く田中秀夫監督に復活の兆しが見えました。善悪両面を描きながら、本当の悪とは何か?それは絶対的評価ではなく相対的評価で決まるものではないのか?この点を、キャスティング(根岸一正、市村俊幸)の妙もあり、上手く描いたのではないかというのが、自分の見立てです。

事件としては真犯人にたどりつく工程にやや疑問がありますが、そのヒントは病院でのとある場面で匂わせていることで、整理されているとみることもできます。演出面では、「北北西に進路を取れ」を思い起こすような大学から断崖への場面転換、ラストの編集室と教室のシーンを入れ替えたら(視聴者の判断に委ねられるものの)悲惨な結末が想像されるなど、その他にも見どころはありました。田中秀夫監督と元持栄美脚本が上手くハマったといえるでしょう。

 

また、週刊誌側の正木と、捜査側の三船主任、この双方の考え方を指摘・公にしたことも、当作が成功した一因だと思われます。

 

正木のいう

>(毎朝新聞・村上記者を指し)おまえたちは可もなく不可もなく、ただ迅速に正

>確に紙面を埋めていればいいんだ。しかし俺は違う、今の俺は週刊誌の記者だ。

>生に、ショッキングに、読者に記事をぶつける。

>それじゃなきゃ、客は記事に食いつかん、本が売れないんでは、人が傷つこうが

>傷つかまいが、俺には関係ないことだ。

>俺はな、売れるネタもペン一本に賭けているんだ!

 

三船主任のいう

>おまえ(正木を指す)は腐肉をわたる禿鷹だ!

>腐った肉を喰らい、腐った記事を書き、平然として人の家庭を破壊する!

>それが、真実を伝えるジャーナリストの姿か!?

 

日本教育テレビであったNETだから描けた作品であり、ごろつきメディアに成り下がったテレビ朝日ではとうてい創ることのできない作品です。よしんば、正木のいうことに納得できたとしても、自らの家庭での出来事を「金になるから、読者が食いつくから」と記事にするかといったら・・・しないでしょうね(笑)当作でも、たぶんにそれを臭わせています。

自分に都合の悪いことは報道しない自由を行使する、それが自称ジャーナリストを名乗る資格も何もない連中の正体であり、21世紀現在の姿を田中秀夫監督や中井義プロデューサーが予見したものと思えてなりません。

 

(2017年11月29日 全面追加)