2chを超えるマルチch、要するに今でいうサラウンドというのは、もともとオーディオではなく、映画からきている。

歴史を調べてみると、どうやら1950年代から存在していたようだ。
日本は、まさに戦後で、オーディオや映画どころではない時代だったと思う。

当初、映画に使っていた70mmフィルムとは別に磁気テープ録音を行い、磁気テープのch数を増やしていたという。
そのテープとフィルムを同期することで再生するのだ。
こうした方式は、デジタルに移行するまで続く。

 手元にある資料では、
1940年にファンタジアがLCRの3ch、
1953年肉の蝋人形が4ch(LCRS)、
1956年オクラホマは、70mmのフィルムで6ch
といった具合だ。

すべてフロント側のchを拡張したものであった.
これは、後方より前方を重視する姿勢であり、優先順位は前方が高いということでもある。

人間の眼は前方しか見ることができないので、当然にこうなる。
映像を伴う音の再生において、前方優先という要素は参考にすべきだと思う。

1chを後方側に設定するのみであったのは、大スクリーンに対応する必要性から開発されたからだ。

1960年代には、ドルビー社が登場する。

テープを低速で回して長時間再生を行う必要から、
高域のヒスノイズやダイナミックレンジを改善するニーズも生まれ、
ドルビーラボ社は、1965年にプロ用のtyoeA ,その3年後にコンシューマ用のtypeBを発表出荷している。

ピュアオーディオでは、バンガード社が1969年に テープをもちいた4chを出すが、

これは、もともとのオープンリールが4chになっていたものをそのまま利用したものだ。

その後、1970年に入り、QS,CD-4 SQなどの、方式が日本を中心に出てきて、規格統一できないままになった。

我が家では、CD-4のステレオセットが導入されていた。
数ある方式の中で、4chが、1chづつ完全に独立した音を出すことができる方式で、
ディスクリート4chとかいう売りで、テクニクスとビクターから出ていたものだ。


FM変調した音声を再生すると、キャリア信号を用いて4chに分離する。
キャリア信号が再生できない針では、通常の2chとして再生できる。

CD-4フォーマットのFM放送も可能だったらしい(一度も放送されなかったと思う)。

キャリア信号は、30kHzから45kHzであったので、かなり高域特性の良いカートリッジが必要だった。

レコードに高域の音を記録し、再生できる技術は、このおかげで飛躍的に成長したものだ。

(ただし、ホコリでノイズでも出そうものなら、デコードに失敗するのでいっきにしらける)

シバタ針やラインコンタクトが出てきたのは、CD-4のおかげだ。

ちなみに現代のカートリッジは、100kHzまで再生できる。

実に優れた方式だが、ろくなレコードはなかった。

尾崎紀世彦、ポールモーリア、ゴッドファーザーのサントラ。
あとは、蒸気機関車の生録とか、津軽三味線ライブとか。

僕の知る限り、ディスクで出たのはこれだけ。
話にならない。


せめて、マイクオールドフィールドのチューブラベルズでも出してくれたら良かったのだが。。。


けっきょく、、オイルショックで経済が4chどころではなくなり、
市場からは放置プレーにあって、すべての方式が滅んでいった。


そうしたムーブメントが復活してきたのは、1981年にドルビーサラウンドが出現したからだった。