『炎 トリビュート』 ピンクフロイドのトリビュートアルバム。
2021年に出たものだ。

フロイドのトリビュートものは、結構たくさんある。
持っているアルバムだけで4つあるが、ほかの3つは、これ。
Animals reimagined - A Tribute To Pink Floyd 
Back Against The Wall
Return To The Dark Side of The Moon
そのほかにも、探せばあるかもしれないし、さらに、ライブで行うトリビュートバンド、フロイドバレエなどもある。


back against the Wall

でもウェイクマン、キースエマーソン、ジョンウェットン、イアンアンダーソンが入っていたので、

これを上回るメンバーはまず考えられないと思っていた。

しかし、『炎 トリビュート』は、クレジットメンバーとしては、さらにすごい。

ウェイクマンは、フロイドのファンとしてすっかり知られているが、加えてパトリックモラーツも参加。
そして、トッドラングレン。
ここまでだけでも、グッとくる。

そして、スティーブハケット、ジョーサトリアーニ、スティーブヒレッジがギターで入る。
おー、
おぉ、
となる。

とどめに、エドガーフローゼ。
 

もう、ひっくり返る。
タンジェリンドリームだぜ。

これ、アナログ盤でも出ていて、手に入れたけど、もう売り切れだ。

欧州ではLPは直ちに買わないと、入手できないほどの人気市場なのだ。

CDは、まだまだ、新品を入手可能だけど。

さて、『炎』は、有名な『狂気』の次のアルバムとしてリリースされた。

あまりにセールス的に成功しすぎた『狂気』であるから、
次作には、かなり苦労したのだろう。

『炎』発表まで3年近くかかっている。

しかし、『炎』は、素晴らしい内容だった。

冒頭のシンセサイザーの分厚い音は、ピンクフロイドの音を決定づける、バンドとして欠かせない音となった。

音を出すのは、もちろんリックライト。

彼は、1979年、the wall の制作最中に、ロジャーウォーターズと対立し、ロジャーに解雇された。

しかし、そのロジャーもピンクフロイドを脱退したので、1987年、デビットギルモアに呼び戻された。

『ピンクフロイドの音は、彼しか出せない 』(ギルモア)

音を比較してみる。
炎オリジナルの冒頭のスペクトラムは、こうなっている。

赤は数秒間のピークホールド。



一方、『炎 トリビュート』冒頭のスペクトラムは、こうなっている。


スペクトラムを見ると一目瞭然だが、オリジナルの方が、低域が分厚い。
リックライトは、ミニムーグを使っていると思う。
対して、『炎 トリビュート』の冒頭のシンセは、ジェフダウンズの音である。
明らかに低域は薄く、軽い。

ミニムーグなんて持っているだろうから、同じ音は出せたはずだ。
いや、ムーグを持っていなくったって、サンプリングシンセで簡単に模倣できる。

でも、していない。

模倣しなかったのは、フロイドに、いや、リックライトに対する敬意なのだ、と思う。

自分の持ち味を出した、軽い音としたのである。

なにしろ、ラジオスターの悲劇、の作者である。

その後、エイジアを経てイエスにも入っているが、やはり、軽いシンセ音が身上なのだ。

凄いのは、CD4曲目、 Wish You Were Here。

ジョー・サトリアーニのギターで始まり、ゾンビーズのロッドアージェントがボイスを担当、シンセはエドガーフローゼだ。スティーブヒレッジのギターが重なってきて、ドラムスは、イアンペイスとカーマインアピスという、気絶寸前のメンバー。

もっと聞いていたいのに、あっという間に終わってしまうのが、残念。
CDなのでステレオ音源で、2chでも、かなり良い。

 

だが、Auro-3Dで聞くと、Auromaticに拡張して聞くと、本当にスバらしかった。

エドガーフローゼのシンセが、ふわふらと漂い、イアンペイスのベースはズンズン響く中で、ヒレッジの鋭いギターがうなる。
満点である。


AuromaticによるCDの視聴
イマーシブ感 ★★★★★
オリジナルソースのステレオ感 ★★★★