2/3(mon)、wowowで開催された、マルチチャネル再生極意のセミナーに参加した。
2時間の予定が3時間になったのだが、実に密度の濃い、有用な情報だった。
マルチchの再生は、マルチchで、スピーカーを設置しておかないと体験できない。
しかも、ATMOS、Auro-3D、NHKの22chと、それぞれ流派ごとにスピーカーの設置基準が異なっているため、これにすべて対応できている環境でないと、あれこれ比較できぬ。
そんなことができるのは、wowowの広いスタジオがあってこそであり、しかも、第一人者の入交先生が自ら、その説明を、理論編、体験編、とわけて提示してくれる、素晴らしい時間だった。
頭で知っていることもあったけれど、それを耳や目で確認できるということは初めてだったので、僕自身の今後の取り組みへも、貴重なノウハウとして取り入れられるというものである。
とりわけ、NHK 22ch、Auro-3D、DD(5ch)、2ch、それぞれのフォーマットで同じソースを聴き比べられたのは、貴重な、初めての体験だった。
ほぼ最高の位置で聞いていた僕には22chが最も自然だった。ただ、Auro-3Dに切り替えても、それほど落差は感じなかった。それを5chに切り替えたとたん、まったくレベルの低い音に成り下がった。
ただ、2chに切り替えたら論外なほどに醜い音になってしまったが、これは、2chを担当するSPのクォリティが低いからだろう。
いずれにしても、5.1では全く不十分であることがよく分かる。
2人の(有名な)オーディオ評論家の方が感想を述べられていた中で、Auro-3Dが自然でよかったと言ってた。ひとりの先生は、完全にセンターで聞いての感想だった。僕自身はその隣であったが、ほぼセンターという理想的な席で聞いており、22chが一番よく、Auro-3Dに切り替えると大きな落差はないが、やはり差があった。その差は、しいて言えば、同じソースをSACDとCDで聞く感じ程度の差である。
それを、圧倒的と感じるか、似たようなもの、と感じるかは人次第だけれど、音だけを聞くのではなく、映像がある中での音、という前提では、映像に支配されるので大差なかったともいえるかな。
あ、少しばかり気になったところも言っておきたい。
十分に広いスペースのスタジオで、申し分ない設備ではあるが、低域の質が悪く、その割に量が出すぎる。オルガンの低音にそれを感じた。キースエマーソンがハモンドオルガンで出したかのような不自然な音が、盛大に出るので参った。本来のオルガンの低音は、あんな出方は決してしない。音楽ではなく、映画であればゴジラの足音程度の話なので気にならないのだけれど。
また、そのシーンに限らず、全時間を通して音量が大きすぎた。85dBは超えていたと思う。85dBは映画館が基準とする音量であるが、家庭で聞く音量より10dBはでかい。
たとえば、森の中でひとりアカペラで歌うシーンは鳥のさえずりの遠近感が非常に魅力的だったが、音量が大きく、鳥のさえずりというよりはカラスの叫びのような音量であった。
あれだけの音量を出さなければ、プロ用のスピーカーの力量が発揮できないのだろうか。あるいは、デモンストレーション効果としての意味合いをもとめたのだろうか。
話を戻すと、こうした、体験イベントは必要だと思った。体験しないとわからないのである。これだけのセミナーが、不思議なことに無料であったが、有料でよいのでは、とも思う。
いまや、オーディオショップはほとんど消え失せたのだけれど、ステレオ装置が日本に入りだした昭和50年代は、あちこちの電気屋にオーディオコーナーがあって、少し静かな視聴室があって、実際に装置を聞きながら、いじりながら、素晴らしさを体験して購入していたものだった。
AVもしかり、なのだ。こうしたセミナーは、かなり準備に時間がかかるものであるはず。有料でよいから、各地のAVショップで体験できるようになることを望む。