1週間前になるけれど、パルシファルを観てきた。
翌日は神々の黄昏、そしてトリスタンが今年のトリになる。

パルシファルはワーグナー最後の作品とされていて、これがまた、いろいろ制約がある作品だ。

まず、拍手はしてはいけない。
幕間はもちろん、終わった後でも、とかつては言われてきた。

でも、拍手するやつは必ずいる。
拍手が一人でもいると、周りからシーと言われ、へたすると睨まれる。

幕が終わると、パブロフの犬のように拍手をしたくなるのだが、強く強く、意識せねばならない。
いろいろな説があって、いまは、第一幕の後だけは拍手をしない、というのが通例になっていると思う。一応、他の幕でも、少なくとも、ファーストペンギンになるのは怖い。

また、この作品は、バイロイト以外で上演してはいけない。
メトやバイエルンで、見たことがあるぞ、BDも出ているじゃないか、という人、えらい。

詳しそうな人に聞いたところ、欧州で批准された法律で定められた、作曲家の著作権が
切れるのが30年。その30年が切れた時を待って、いろいろな歌劇場でパルシファルが上演されたらしい。NYでは、そんな法律は欧州と締結していなかったので、関係なく好きに上演されていたようだ。

ワーグナーを上演しない国としてはイスラエルが有名だが、これはヒトラーが好んだ作曲家であり、ワーグナー自身も反ユダヤ主義であったことによる。

 今でもイスラエル政府はワーグナーを敵視しているけれど、トスカニーニや、バレンボイム、メータなどのそうそうたるマエストロたちが、イスラエルフィルでワーグナーの演奏をすべく、いろいろなトライをしてきた。
 いずれも、観客、楽団、政府などから横やりが入り、歓迎されて演奏を完了したことはない。殴り合いのけんかにまで発展するので、命を懸けてまでそんなトライをする価値はない、のだ。

 パルシファルは、2023年のバイロイトの映像がBDになっているが、今年も昨年と同じ演出である。
NHKのロゴも入っているので、たぶんNHKでも放送されたのだと思う。
(知らなかった!.BDを買って帰ろう.
BDは、DTS-HDとATMOSのみ.Auro-3Dは欧州でパッケージソフトを見たことがない)


昨年同様、カサドの指揮だが、クンドリー役は、ガランチャではない。グバノヴァである。
どちらも有名な歌手ではあるが、グバノヴァは太めの人なので、パワフルだ。ガランチャはBDで確認できるので、比較できる。

メトはコンサバな演出が多いが、さすがにバイロイトは一味違う。

舞台にはカメラが入っており、その映像はバックスクリーンに映る。
王様の傷を治療するシーンまでスクリーンに出すものだから、ゲゲゲと思った。
白い巨塔のようなシーンだ。ここまで攻める演出は、たぶんなかなか、ないと思う。

用意されているビデオ画像は3Dにもなっていて、それを使うと、3D映像と舞台が融合する。
ただ、正面席にいる人しか3Dには見えないようで、メガネが配られた人だけ、の特典である。
なんだか、スタートレックの映像をみているような、錯覚になった。
まさに、イマーシブな世界。

あまり書くとネタバレになるので、やめておくが、バイロイトで何かを一夜だけ観るなら、
パルシファルが面白いとおもう。

ライトモチーフも、たくさん覚える必要もない。

幕間の休憩は長く、休憩をはさんで3幕全部を観て6時間を軽く超える。
疲れるので、休憩で息抜きをするのは重要だ。

ここは幕間の長い休憩時に、地下にある食堂で食事ができる。
両国国技館でも、地下でチャンコを楽しめるけれど、それと似ている。
広さも似たようなものだ。

独だし、料理はうまくない。国技館のチャンコの方がずっとうまい。

食いに来たのではないけれど、もう少しなんとかならんか。

 

これを書いている最中、バイロイト音楽祭の合唱団が解散するというニュースが入ってきた。
今後は、都度、オーディションを行うようだが、そんなやりかたで、クォリティが維持できるのだろうか。

エバーハルトフリードリッヒも合唱団監督を辞任したし、心配である。