烏骨鶏を胸に抱きキュっと優しく腕に力を込め、頬を寄せる。
鶏は決して嫌がることなく「キュルゥ、キュルルルゥ♪」とささやくように高めの無邪気な甘え声をあげる。
そのいたいけな声にキュンとなり、人間社会を生きる中で負ってしまう
心をギュッと締め付けられるような辛さも悲しみも
まるでなかったことになり、まっさらな気持ちへと導かれる。
鶏の身体全体から天然のぬくもりが溢れ、人の身体をじんわりと温める。
心の氷まで溶かしてゆく。
鶏は、柔らかな心地よい羽根を惜しげもなく人に貸し出してくれる。
天使の羽にいだかれているかのような癒しを与えられると、
やるせなくて誰かに話してしまいたくなるようなイロイロが、「もぅいいか。」と思える。
華奢で可憐な足の指から伝わる柔らかな弾力と体温に触れているうちに、
「そんなこともあるか。」と受け入れられるようになる。
ざわついていた心は静かになり、いつの間にかニュートラルな自分に戻っている。
思わず空を仰ぎたくなるような現実を。
そうして今日も、生きてゆく。