先日、タクティカルシラットという団体の稽古にお邪魔する機会がありました。私は以前からシラットをはじめ、カリやエスクリマなど東南アジア系の武術に関心があり、これまでにも国内で活動しているさまざまな団体の稽古を見学したり、実際に参加したりしております。そのため今回も、こちらの団体ではどのような技術体系を採用し、どのような方針で指導を行っているのか、非常に興味を持って参加させていただきました。
実際に稽古へ参加してみた印象としては、タクティカルシラットではシラットの基本的な身体操作に加えて、スティックを用いた技術を比較的重要な要素として扱っているように感じました。スティックの振り方や受け方、相手との間合いの取り方などを通じて、武器を扱う際の基本的な感覚を身につけていく内容です。東南アジア武術では素手と武器術を完全に分けて考えるのではなく、共通する身体の使い方を学んでいく場合も多いため、スティックを使った練習を初期の段階から取り入れることには一定の意味があると思います。
特に印象に残ったのは、複雑な技術を次々と行うのではなく、比較的初級レベルの動作を繰り返し練習していた点です。初めて参加する人にとっては、見慣れない動きや武器の操作を一度に覚えることは容易ではありません。その点、基本となる動作を整理し、手順を追って練習する構成は、シラットや武器術に馴染みのない人でも取り組みやすいものだと感じました。
私自身、これまで複数のシラット団体やカリ、エスクリマ系の団体に顔を出してきました。それらと比較した場合、タクティカルシラットでは高度な応用技術や複雑なコンビネーションよりも、初級者向けの内容を中心に構成しているように見受けられます。むしろ最初から難しい内容を詰め込むのではなく、基本的な動作を身につけることを重視している団体と考えた方が適切でしょう。
武術を長く続けていると、どうしても派手な技術や高度な技法に目が向きがちです。しかし実際には、基本的な構えや足運び、距離感、スティックの軌道といった地味な要素が身についていなければ、応用的な技術を行っても形だけになってしまいます。初心者の段階では、まず安全に動くことができるようになり、道具の扱いに慣れることが重要です。
また、シラットという名称から非常に複雑で特殊な技術を想像する人もいるかもしれませんが、初めて学ぶ人にとっては、まず単純な動作から始めた方が理解しやすいのは当然です。身体の向きや重心移動、腕の使い方といった基礎的な部分を繰り返すことで、少しずつシラット特有の動きに慣れていくことができます。スティックを使った練習についても、単に武器の振り方を覚えるだけではなく、相手との距離や攻撃線を理解するための教材として見ることができるでしょう。
団体ごとに指導方針や技術体系が異なるのは、武術の世界では珍しいことではありません。実戦性を重視する団体もあれば、競技や伝統的な型を中心に行う団体もあります。また、高度な技術を早い段階から扱うところもあれば、基本を時間をかけて練習するところも存在します。タクティカルシラットは、その中でも初心者が入りやすく、基本的な技術を順序立てて学ぶことを大切にしている団体という印象を受けました。
私のようにさまざまな団体の稽古を見てきた者からすると、内容そのものは比較的初級レベルが中心であるように感じられます。しかし、これからシラットやフィリピン武術を始めてみたい人にとっては、難解な技術ばかりを扱う団体よりも、このような基本中心の稽古の方が取り組みやすい場合も多いでしょう。特にスティックの扱いを通じて武器術の基本に触れられる点は、東南アジア武術に興味を持つ人にとって一つの魅力になると思います。
今回参加させていただき、団体ごとの考え方や指導方法の違いを改めて知ることができました。長く武術を学んでいても、自分が普段行っている方法だけが正しいとは限りません。他団体の稽古に参加することで、自分が見落としていた考え方や、初心者への伝え方について学べることもあります。タクティカルシラットは、基本的な技術を大切にしながら、スティックを含めたシラットの動きを学べる場として、一定の特色を持った団体であると感じました。