僕は、息子が中1の冬から、岡大に通い、性同一性障害の診察をしてもらっていました。
岡大に通い始めてから約半年後、僕は性同一性障害の確定診断をもらいました。
僕は、とりあえず名前を変更したかった。
なので、先に名前変更の手続きをしました。
そして、次のステップ(ホルモン注射&胸の手術)に行くか?を医師から聞かれたので、僕は、
「とりあえず今は、考えていない」
と答えました。
実は、この時はまだ、子どもがいる性同一性障害の人は、性別変更が出来ないよう、法律で定められていたんです。
僕は、ホルモン注射やら手術やらをするからには、性別変更までしてしまいたかったので、とりあえず次のステップは、保留としてもらいました。
プラスで、
ってか、一刻も早く、ホルモン注射をしたい、胸の手術をしたいという衝動に駆られなかった。
それは、僕自身が知らないうちに、
「息子のために」という、ある意味母性により思いを抱いていたからなのか、はたまたただ単に今は時期ではないと思ったのかは分からないが、でもその時は動こうとしませんでした。
僕は、一応自分で設定した
息子が高校卒業するまで何をするのが一番ベストなのだろうかと自分自身に問いました。
そうしたら、僕の中から、
これまでと同じように息子と接して
という声が聞こえたんです。
実はそれまで、息子が少年野球をしていたので、それにつきっきりの生活をしていたんです。
そのため、まあ自分の時間なんて、ないに等しかったです。
自分の時間は確かに少なかったけど、でも僕はその時の生の息子の姿を
この目に焼き付けたかった。
だってね、子どもって必ず成長する。
しかも、その時に起こったことや、その時に感じたこととかを体験するには、
その時に起こったことを、リアルタイムで見ておかないと、もう見ることができない
ってなんとなく僕は思っていたから。
だって、子どもは、僕の目の前で分かりやすく成長してくれる=今って時は、もう戻ってこないと感じることが出来るから。
それが、僕の中から出てきた「これまでと同じように、息子と接して」という言葉で
今を生きているんだ
ってことを今まで以上に強く感じるようになったんです。
今=息子の成長。
だってね、昨日まで打てなかった球を、今日は打てたり、取れなかったボールが取れるようになったりするんですよ。
昨日(過去)は出来なかったことを、今日(今)は出来る。
逆に、昨日(過去)出来ていたのに、今日(今)は出来なくなってしまうこともある。
息子がしたことを見て、
一喜一憂することにより、
今ってこの時間を身をもって体験することが出来、そして、息子と一緒にいれる今って時間を大切にしていきたいと思ったんです。
その共有した時間のことを、息子や直美と一緒に喋ったりなんかもして・・・
「あの時、取れなかったのは、スタートが遅かったから」とか、「〇〇が打ってくれたから勝てた」とか。
その時に、僕や直美、僕の家族は、残念がったり、笑ったりしてみて。
「今」という時間に、喜怒哀楽がミックスされたことにより、僕はより一層息子との距離が短くなったような気がしました。
高校に入ってからは、陸上をしだしましたが、やっぱり大会なんかは、ほぼ見に行きましたね。
直美とも、良く見に行きました。
たった一瞬しか出ないのに、山口へ見に行ったこともありました。
往復の時間の方が、息子が出る時間より長いなんてこと、ザラです(笑)。
息子も、
「今日、来るんか?」
と、思春期らしく照れが入りながら聞いてきたことも多々ありましたが、僕が
「当たり前だかな、行くで、来るなって言ったって行くで」
と言ったりもしていました。
僕が見てきた息子のいろいろな姿は、結構僕の脳裏に焼きついていますね。
今でも鮮明に覚えていること、数えきれないですもん。
そんなこんなで、僕の体の中からの声が聞こえてから数年経ち、僕の体の改造(笑)を決意し、実行に移したのは、やはり息子が高校卒業時。
その頃、法律も変更になっていて、20歳未満の子どもがいないことになっていました。
同じ性同一性障害の人達は、早々に手術をし性別変更をしたので、羨ましい感は確かにあったが、でも僕は、僕の判断が間違っていなかったと今でも思います。
自分だけの気持ちで動いた方がいいと分かってはいたのですが、僕はどうしてもそれが出来なかった。
多分、
体を変えるということは、どういうことかっていうことを自覚し、考えないといけなかった時間
自分自身を信じること=息子を信じることを揺るぎないものにし、
今って時間を感じ、その時その時の息子の成長の姿を脳裏に焼きつかせる
には、これぐらいの時が僕には必要だったのだと思います。
ホルモン注射を開始しようかと思っていた時、僕は息子に、
「ホルモン注射をしようかと思っている。多分見た目も変わってくる。そして、手術をして直美と結婚しようと思っている」
ということ全てを話しました。
息子は、一言、
「いいんじゃない」
と言ってくれました。
そして、この時僕は、息子にもう一つ言ったことがありまして、
「自分らの結婚式に出てくれるか?」
と。
息子はこの時、
「何言っとる、当たり前だがな、出るなって言ったって出るわ」
と、ちょっとムキになって言ってくれました。
僕は、この言葉を息子から聞いた時、本当に嬉しかった。
これからホルモン治療をすれば、確実に今までとは違う結果になる。
それにも関わらず、全てを認めてくれた息子に、僕はもう何も言えませんでした。
そして、この言葉、どっかで聞いたことあるな・・・って、ふと思ったんです。
あっ、僕が以前言った言葉だわって気がついたんです。(何行か上に書いたと思います)
この時僕は、今まで息子にしてきたことは、間違いではなかったって思ったんです。
だって、僕が言ったことを、今度は息子の素直な気持ちを入れてそのまま僕に返してくれたから。
そして、猿を見たら、そのまま鳥取へ直帰しました(笑)。
それでも楽しかった。
したいことして、今を楽しまないとね(^^)
その③へ続く。
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