けれど。
『私の心』の一部は。
既に理解していた。
己の限界は。
とうに過ぎていることを。
このままではいずれ。
力尽き。
その場に倒れ伏すのも時間の問題だと。
『私の心』の一部は必死に考えた。
どうしたら。
死なずに済むのか。
どうしたら。
この永遠に続く煉獄の苦しみから。
解放されるのかを。
ただ、ただ。
必死に考え続けた。
そして、やはり。
第三の選択肢へと辿り着いた。
『死』への恐怖に怯えることもなく。
この煉獄の苦しみからも解放されるには。
無に還るしかない…と。
そして。
『私の心』の一部は。
私自身に気づかれぬよう。
細心の注意を払いながら。
無に還る必要を証明できる。
『今』を選び続け。
私自身に。
無へと還る承認を求め続けた。
このからくりに気づかなかった私は。
何度かこれを承認し。
実践に移してしまった。
けれど。
その都度。
何かしらの偶然が重なり。
私は今も。
こちら側の住人として。
暮らしている。
仕掛けたからくりが失敗する度に。
『私の心』の一部は考えた。
何がいけなかったんだろうと。
そして。
1つの結論を導き出した。
私の承認力が弱かったから。
無に還ることが出来なかったんだと。
だから。
からくりが1つ失敗する度に。
より強く。
承認力が得られる『今』へと。
選択のしるべの矛先を変えていった。
けれど。
幾度となくそのからくりの中を通っている内に。
私は気づいてしまった。
私の中に。
すべてを終わらせ。
無への帰還を切望する『私』がいることに。
だが。
どんなに考えても。
何故。
『私』が無への帰還を望んでいるのか。
どうしても分からなかった。
だから私は。
いつしか。
考えること自体を。
放棄してしまっていた
霊視鑑定を受けた帰り道。
電車に揺られながら。
あの時の言葉を。
考えていると。
ふいに。
そのことを思い出した。
そして私は。
天寿を全うする為に
生き抜く覚悟を決めた
しかし、それは。
無に還ることを切望する『私の心』の一部にとっては。
この煉獄の苦しみが。
未来永劫続いていくかのような。
究極の絶望でしかなかった。
『私の心』の一部も。
覚悟を決めた。
もう。
なりふり構ってはいられない。
どうしても。
この苦しみを終わらせる。
何があっても。
『死』への恐怖からも。
煉獄の苦しみからも解放される。
混沌の無の世界への。
還る道を切り開く……と。
<続>