都庁平成27年度記述式問題の憲法は「国政調査権の意義、性質、範囲と限界について説明せよ。」という問題でした。
記述式の問題に対する解答の仕方はだいたい決まっています。
本問は問題文中に書くことが指定されていますのでそれに従って書いていけばいいです。
①国政調査権の意義、②性質、③範囲と限界です。
解答例の1つとして以下のようなものを考えてみました。
本問で得点に差がつくとしたら国政調査権の範囲と限界において、いかに具体的な事例を挙げることができるかによると思います。
憲法では判例など具体例を挙げることが重要です。
<参考例>
第1 国政調査権の意義
国政調査権とは、衆議院及び参議院がそれぞれ国政に関する調査を行う権限であり、その調査方法としては証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる(憲法第62条)。
国政調査権は明治憲法には規定はなく、日本国憲法に初めて規定された。
これにより議院による監督権能を強化することができるのである。
第2 性質
国政調査権の憲法41条が国会は「国権の最高機関」としていることから国権統括のための独立の権能であるとする見解もある。
しかし三権分立の観点から、特に司法権の独立の観点から国会を国権の統括機関とし、国政調査権を独立の権能とする見解は妥当ではない。
そこで国政調査権は議院に与えられた権能を実効的に行使するために認められた補助的な権能であると考える。
このように考えても、国会の権能、特に立法権は広汎な事項に及んでいるので、国政に関連のない純粋な事項を除き、国政調査権の及ぶ範囲は国政のほぼ全般にわたるといえる。
第3 範囲と限界
1 もっとも国政調査権には一定の厳しい限界もある。
国政調査権は補助的権能であるから、調査の目的は立法、予算審議、行政監督など、議院の憲法上の権能を実効的に行使するためのものでなければならないし、調査の対象と方法にも、権力分立と人権の原理から制約がある。
以下、具体的に述べる。
2 司法権との関係
司法権との関係では司法権の独立が憲法上保障されていることから国政調査権の行使は制限される。
すなわち、現に裁判が進行中の事件について裁判官の訴訟指揮などを調査したり、裁判の内容の当否を批判する調査をしたりすることは許されない。
もっとも、裁判所で審理中の事件の事実について、立法目的や行政監督の目的など、議院が裁判所と異なる目的から裁判と並行して調査することは司法権の独立を侵すものではなく許される。
この点問題となった事件として浦和事件がある。
この事件においては、親子心中を図った母親に対し情状が酌量され執行猶予が付された判決に対し、量刑が不当に軽すぎるという議決が参議院でなされた。
当該参議院の議決は裁判の内容の当否を批判する目的でなされたものであり、司法権の独立を侵害し許されないと考える。
これに対し、外国の航空機メーカーが日本の内閣総理大臣に航空機の選定購入を働きかけ、総理等が贈収賄罪で逮捕されたロッキード事件においては議院が裁判所とは異なる行政監督目的などのために調査を行ったことから許されると解する。
3 検察権との関係
検察事務は行政権の作用であるから議院内閣制のもと原則として国政調査権の対象になる。
もっとも、検察作用は裁判と密接にかかわる準司法的作用であるから、司法権に類似する独立性が認められなければならない。
したがって、①起訴・不起訴について、検察権の行使に政治的圧力を加えることが目的と考えられる調査、②起訴事件に直接関係する事項や公訴追行の内容を対象とする調査、③捜査の続行に重大な支障を及ぼすような方法による調査などは違法ないし不当である。
4 一般行政権との関係
一般行政権に対しては議院内閣制のもと原則として国政調査権の対象となる。
ただし、公務員の職務上の秘密に関する事項には調査権は及ばない(議院証言法5条)。
5 人権との関係
思想の露見を求めるような基本的人権を侵害するような調査は許されない。
また、憲法38条の黙秘権の保障は、国政調査権の領域においても妥当すると考える。
以上
普段は弁護士をしています。
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