おりしも引越しシーズン。男性が不動産業者と下見に訪れたのは都内にある築36年の物件です。
「結構きれい、古いけど」(男性)
「しっかりメンテナンスしてます」(業者)
家賃は8万5000円。敷金・礼金は、それぞれ家賃の1か月分です。
「退去の際にはクリーニングを行うので、敷金から通常であれば引かれるケースがほとんど」(業者)
「どのくらい引かれる?」(男性)
「こちらの広さだと半分以上は引かれる」(業者)
「敷金」はアパートやマンションを借りるときに、貸主に預けるお金です。これは退去時に返還されるべきものですが、実際には住宅の「原状回復」の費用にあてられることが多い。「原状回復」の対象は、例えば「壁の落書き」のほか、経年変化による「長年置いていた家具のへこみ」や「日焼けによる壁紙の変色」も含まれます。
この「敷金」をめぐっては、トラブルが後を絶ちません。国民生活センターによりますと、退去時「お金が戻ってこない」などの相談が年間およそ1万件以上寄せられています。
都内在住の男性。1年ほど前、借りていた住宅を退出する際、貸主側から20万円以上請求されたといいます。
「通常に(普通に使って)3年住んでいたという認識だった。数万円だと思っていたが、予想の2倍、3倍の請求額だったので驚いた」(敷金トラブルに遭った男性)
その後、貸主側と交渉を重ね、男性が10万円を支払うことで和解したといいます。
なぜ、こうしたトラブルが起こるのでしょうか。生活の基本的なルールを定めているこれまでの民法には、「原状回復」についてルールがないためです。そこで、今回の民法改正案では、「敷金」は契約の終了時、つまり引っ越す際に原則として「返還する」と明記されました。「経年変化」は貸主側の負担で直すことになりました。
一方、「壁の落書き」などは、通常の使用による汚れを超えていると判断され、借主側の負担となりそうです。
物件を探す人たちは・・・
「借りる側も貸す側も、スムーズに物事が運ぶと思うのでルールはあった方が良い」
「『こういうルールがあるから、してはダメ』とか自分の中で(判断)できるので、ルールはあった方が良い」
不動産賃貸における「敷金」のトラブルについて、弁護士と協力し、解決にあたっている男性は・・・
「『ハウスクリーニングはこの単価が妥当だ』と (民法に)書いているわけではないので、契約の時点でしっかり借りる人も、よくよく理解して契約しないと」(日本敷金診断士協会 土川保常務理事)
不動産業者は今回の民法改正について・・・
「消費者の意識が、今回の民法改正によって大きく変わることが予想される。…