米キャンプ取材の必需品は「落語CD」 フロリダでの長距離ドライブ対策にはコレ | 国際そのほか速

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米キャンプ取材の必需品は「落語CD」 フロリダでの長距離ドライブ対策にはコレ 【ダッグアウトの裏側】米大リーグのキャンプインが近づくと、一番太鼓の音色を思い出す。キャンプの取材に必ず持ち込んでいたのが、落語のCDだったからだ。

 30球団のキャンプ地は現在、フロリダ州とアリゾナ州に15球団ずつ分かれている。報道陣が体力的にキツいのは圧倒的にフロリダ州。大半のキャンプ地が車で1時間圏内にあるアリゾナ州に比べて、長距離ドライブが多く、居眠り運転の危険性が高いからだ。

 同じフロリダ州内といっても、例えばヤンキースのキャンプ地・タンパとレッドソックスのフォート・マイヤーズは約200キロも離れている。東京-静岡間ぐらいの距離だ。フロリダの青い空と海、真っ赤な夕日も毎日のように見ていると、眠気を誘発される。

 濃いコーヒーを飲んだり、音楽を大音量で聴いたり、日本から刺激の強いガムを持ち込んだり…。さまざまな居眠り運転防止策を試した末にたどりついたのが、落語だった。「笑いながら運転しているうちに到着したらいいな」と思い立ち、一時帰国した際に桐箱入りの『古今亭志ん朝 特選独演会』を購入。特典盤を含めて19枚あるCDを聴きながらキャンプ地を回るようになった。

 米国赴任前に落語を聴いたことは1度もなかったが、最初に志ん朝を選んだのは幸運だった。『お見立て』『三枚起請』『火焔太鼓』…。その話術に引き込まれ、眠くならない。信号待ちをしながら大笑い。隣に止まった米国人のドライバーから気味悪そうに見られていた、という経験もした。その後、父親の古今亭志ん生、柳家小さん、立川談志とCDは増え、落語を聴きながらのドライブが貴重な気分転換の時間になった。

 今季はイチローがマーリンズ入り。フロリダ半島の東海岸にあるジュピターがキャンプ地で、担当記者は長距離ドライブを強いられる。3月末まで居眠り運転などの事故が起きないことを、日本から願っている。

 ■田代 学(たしろ・まなぶ) サンケイスポーツ一般スポーツ担当部長。1991年入社。プロ野球のヤクルトと巨人を担当後、休職し米オハイオ大に留学。復職後は長野、シドニー両五輪の担当を経て、2001年から13年11月まで米国駐在の大リーグ担当キャップ。全米野球記者協会理事や13年ワールドシリーズの公式記録員を日本人記者で初めて務めた。愛称は「ガク」。