http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150221-00000028-jij-bus_all
戦後日本を代表するものづくり企業、ホンダが揺れている。
主力小型車「フィット」の相次ぐリコール(回収・無償修理)とタカタ製エアバッグの欠陥という二つの品質問題が響き、2015年3月期は3年ぶりの営業減益に陥る見通しだ。
苦境のさなか、今年は自動車レースの最高峰F1への復帰をはじめ、企業理念の「挑戦」を象徴する事業が本格始動する。
「技術のホンダ」は正念場を迎えている。
◇5度のリコール
13年9月に発売したフィットのハイブリッド車(HV)。
満を持して投入したはずが、直ちに不具合が見つかり、翌10月から1年で5度のリコールに追われた。
今年度(15年3月期)は6車種の新型車発売を予定していたが、品質管理を徹底するため計画が遅れ、結局4車種にとどまる。
当初は過去最高の103万台を見込んだ国内販売計画も2度見直し、82万5000台に下方修正した。
「開発現場には相当負荷があったのは間違いない」。
伊東孝紳社長は一連の品質問題をこう総括。
責任を取り、伊東社長らは役員報酬を一部返上した。
立て直しに向けホンダは、四輪事業本部に品質改革担当を新設し、開発工程の大幅な見直しに着手した。
担当に就いた福尾幸一専務執行役員は「現場のコミュニケーションが不足していた」と問題点を分析する。
◇タカタ問題が直撃
追い打ちをかけたのがタカタ製エアバッグの欠陥問題だ。
エアバッグが作動時に異常に強い圧力で膨らみ、金属部品が飛び散る恐れがあり、タカタ製品を採用している完成車メーカーが日米を中心にリコールに追い込まれた。
タカタとの取引関係が深いホンダは、リコール台数が他社に比べ突出。
原因解明前の段階で自主的に回収する調査リコールを含めると、全世界で1430万台に上る。
エアバッグの調達先をタカタ1社に集中していたリスク管理の甘さもさらけ出した。
米国ではホンダ車の死傷事故の当局への報告漏れも重なり、ホンダブランドの信頼は大きく傷ついた。
◇創業者の夢
ホンダにとって今年は、信頼回復とともに、技術への挑戦に取り組む年になる。
7年ぶりのF1復帰について伊東社長は、「間違いなく将来、車をもっともっと楽しくすることにつながる」と意義を強調する。F1で培った技術を応用し、市販車の魅力を高める考えだ。
米国で開発を進めてきた小型ジェット機(最大7人乗り)は、今年前半に納入を始める。
将来の日本への投入も視野に、4月下旬には国内で関係者を対象とした初飛行を計画している。
F1と航空機参入は、創業者の本田宗一郎氏が強い思い入れを持っていた事業で、ホンダの「チャレンジの象徴」(伊東社長)だ。
世界中のファンがホンダの反転攻勢を待っている。
◇ホンダの品質問題の経緯
2013年9月 新型「フィット」発売
10月 フィットのハイブリッド車(HV)でリコール
12月 フィットHV、2度目リコール
14年2月 フィットHV、3度目リコール。出荷を一時停止
6月以降 日米などでタカタ製エアバッグの欠陥を原因としたリコール拡大
7月 フィットHV、4度目リコール
10月 フィットHV、5度目リコール。伊東孝紳社長ら役員報酬一部返上
14年度の国内販売計画を下方修正
11月 米当局への死傷事故報告漏れ発覚
米当局がタカタ問題でリコール対象を全米に広げるようタカタや自
動車メーカーに要求
12月 タカタ問題で全米へのリコール拡大を表明
15年1月 事故報告漏れで米当局への民事制裁金支払いに同意
国内販売計画を再度下方修正