
ナンペイ事件は、1995年7月にスーパーのアルバイト女性3人が無残にも拳銃で殺害された未解決事件のひとつ。スーパーの金庫にはこじ開けようとした形跡があり、3人の頭には数発の銃弾が撃ち込まれた。警察はプロによる強盗殺人事件とみて捜査していたが、なぜ、今ごろになって指紋が見つかったのか。
「警視庁は新たな鑑識技術を数年前に採用し、指紋の採取に成功。それを前歴者のデータベースで調べたところ、多摩市在住の当時50代の男性の指紋の特徴と一致したというのです。男性は10年前に病死しましたが、事件当時は捜査の重要参考人だったといいます」(捜査事情通)
■それでも証拠としては不十分
5000件以上の鑑定経験を持つ法科学研究センター所長の雨宮正欣氏はこう言う。
「指紋にある線状の隆起を比較し、12カ所が一致すれば、同一人物の指紋と特定されます。今回の技術が世に出ていない最新技術なのかは分かりませんが、指紋に液体や剥離剤を使って取り出す技術は二十数年前から使われているはずですが……」
結局、見つかった指紋と男性の指紋の一致した隆起は8カ所。8カ所が一致する確率は約1億分の1とされるが、それでも証拠としては不十分だという。
「警視庁は、09年に中国で逮捕された日本人死刑囚が『事件に関与した中国人を知っている』と告白したことで、カナダ在住の中国籍の男を旅券法違反の疑いで逮捕したことがあった。だが、取り調べの結果、有力な情報を得られないまま男は執行猶予付き判決を受け、すでに帰国してしまった。今回の発表は20年の節目でもあり、『以前の失敗を穴埋めするためのパフォーマンスでは』と囁かれています」(前出の捜査事情通)
どちらにせよ、今のままでは立件は難しい。遺族は報われないままだ。