
農林水産省漁業・養殖業生産統計によると、2012年の天然フグの漁獲量は石川県が全国1位で982トン。2位の福岡県488トン、3位の富山県438トンを大きく上回る。県内の主要産地は能登半島だが、ほとんどが県外へ出荷され、地元消費は干物などわずかに過ぎない。
同組合の試算では、地元での流通が3~4割になれば経済効果は20億円ほどになるといい、「新幹線開業後は、石川のおいしい魚を求めて能登を訪れる観光客も増えるとみられ、あながち夢の数字ではない」と期待が高まる。
組合は、新幹線開業を見据え、13年8月に結成。毎月1回は料理勉強会などを開くなどし、フグ料理のメニュー拡充に努めてきた。今では、から揚げなどの揚げ物や鍋物、サラダのほか、白子を使ったジェラードも加わる。手軽などんぶりも考案し、定番の干物にも、みそ漬けなどのバリエーションを持たせ、種類を増やした。
組合結成時、フグ料理を取り扱う加盟の飲食店は民宿1軒だけだったが、昨年12月には、フランス料理店も加わり計16店舗に増加。今後は、イタリア料理店なども加わる見込みだ。また、フグを調理できる専門職人を増やし、安全に加工した食材を料理店に提供する仕組みも作り上げてきた。
同組合は、開通後の4月から2か月間ほど、地元の各料理店で旬のフグを使った料理が楽しめる「能登ふぐフェア」を開催する。フグを使った土産品やギフト商品も開発し、観光客を対象にしたフグ漁体験なども計画している。
組合の地道な活動で地元消費量は30トンを超えたが、予約がないとフグ料理を提供できない飲食店が多いなど、課題はある。杉原省代表理事(64)は「新幹線開業は絶好のチャンス。開業までに一つずつ課題を解消していきたい」と話している。