【食】消えるアジフライ [転載禁止] | 国際そのほか速

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http://www.sankei.com/column/news/150213/clm1502130003-n1.html
「どこかの定食屋で山盛りの生キャベツとアジフライに、安いソースをドボドボとかけて食べたら、
生きてシャバに戻ったと実感するだろう」。脚本家の内館牧子さんが、エッセーに書いている。

 ▼内館さんは数年前、旅先で心臓病に襲われ、4カ月にわたる入院生活を余儀なくされた。
退院が近づくにつれて、頭の中は食べ物のことでいっぱいになる。なかでも一番食べたかったのは、アジフライだった。

 ▼そんな庶民の味を代表する料理をメニューから外す動きが、一部の飲食店から出ている。
マアジの水揚げが減少して、卸値が上がり、採算が取れなくなっているのだ。ニホンウナギは昨年、
「絶滅危惧種」に指定された。クロマグロも資源の枯渇が心配されている。大衆魚と呼ばれる魚にまで、危機が忍び寄っているのか。

 ▼30年前には約1300万トンに達し、世界一を誇っていた日本の漁獲量は近年、
3分の1にまで激減した。漁業従事者も戦後まもなくのころと比べると、5分の1以下に落ち込んでいる。
『日本の海から魚が消える日』、こんな刺激的なタイトルの本が昨年出た。
著者は、かつて国際捕鯨委員会の総会で、日本代表団の交渉人として活躍していた小松正之さんである。

 ▼小松さんによると、ノルウェーなど世界の漁業の先進国は、既に水産資源の管理を徹底する
漁業改革に成功している。その結果、漁業従事者の収入も増加し、若者に人気のある職業となっている。

 ▼旧態依然の水産行政が続いている日本だけが取り残され、日本の食卓は、
養殖と輸入魚に占領されつつある。「このままでは、和食は肉中心となり、魚主体の和食は外国で食べることになる」。
つまり、「アジフライを外国で食べる日」が来るかもしれない。