
横手署で身元の確認を急ぐとともに、出火原因を調べている。県警によると、今年に入って県内の火災は23件目で、死者は9人に上っている。件数は昨年同時期に比べて6件減ったが、死者は1人増えている。
発表によると、渡辺さんは栄子さんと二人暮らし。遺体はともに1階寝室とみられる場所で見つかった。死因はいずれも焼死。家に設置してあった高齢者世帯向け緊急通報装置が作動して火災信号を発信、受信した県社会福祉協議会を通じて119番があった。
現場は横手市中心部から南西約10キロの田園地帯。
火事の一報を聞いて駆けつけた近くに住む親戚の渡辺保子さん(57)は「助けに入ろうと思ったが、家の戸が全部閉まっていた。火の勢いが短時間で増して中に入れなかった」と悔やんだ。また、「仲の良い世話好きな夫婦だった。私が近くに嫁いで以来、本当の両親と同じくらい良くしてもらった。もっと恩返しをしたかったのにまさかこんな形でお別れするなんて…」と涙で声を詰まらせた。
神奈川県から駆けつけた渡辺さんの一人娘の幹子(もとこ)さん(53)によると、渡辺さん夫婦は医師に認知症と診断されており、ここ数年、物忘れや徘徊(はいかい)など症状が悪化していた。二人は「要介護2」で、特別養護老人ホームの入所待ちだったという。幹子さんは昨年春まで、横手市中心部から実家に通って二人の面倒を見ていたが、長女(19)の大学進学を機に、バスで神奈川県と実家とを行き来していた。不在の日はホームヘルパーが、二人の世話をしていたという。長女が4月から留学することになったといい、幹子さんは「留学したら実家に戻ろうと思っていた矢先の火事だった」と悔やんだ。