華やかな演出/保護者説明会
大学の入学式が様変わりしている。
華やかな演出で歓迎ムードを盛り上げたり、保護者向けのガイダンスを充実させたり――。学生の意欲を高め、「面倒見の良さ」をアピールする傾向が強まっている。
意欲高める
今春の私立大学一般入試志願者数で、初の日本一となった、大阪府東大阪市の近畿大。5日の入学式は、近大OBのミュージシャン、つんく♂さん(45)が初めて演出を手掛けた。
会場内はレーザー光線で照らされ、オーディションで選ばれた女子学生グループ「KINDAI GIRLS」が歌と踊りを披露。コンサート会場のような雰囲気の中、約7000人の新入生はケミカルライトを手に盛り上がった。
式典のクライマックスは、近大の学部別、入試制度別志願倍率の発表だ。司会者が「厳しい入試をくぐり抜けてつかんだ喜びをかみしめて」と呼びかけ、ランキングがスクリーンに投影されると歓声が上がった。
イベント色の濃い入学式は、若手職員らが中心になって企画し2004年度から実施。不本意入学が留年や中退につながることを防ぐ目的もあるという。「入学式は、学生生活を前向きに過ごしてほしいという大学のメッセージ。偏差値にとらわれた見方から脱して、大学を好きになってほしい」と、職員の横山創一さん(28)は話す。
経済学部1年の白木咲都さん(18)は「式では、自由な雰囲気を感じた。大学をすごく好きになれそうです」と笑顔を見せた。
就職支援をアピール
入学式に合わせ、保護者向け説明会を行う大学も増えてきた。
法政大では12年度から、入学式の後、キャリアセンターが新入生の保護者向けガイダンスを行っている。3日の説明会には、保護者約300人が参加。大学の就職支援などの説明が行われ、アルバイトを就職活動に役立てるポイントをまとめた小冊子も配布された。
埼玉県の40代の父親は、「昔は保護者向け説明会なんてなかった」と驚きながらも、「子どもの就職は、今から心配。大学のサポートがあれば心強い」と期待している様子だった。
専修大では、05年度から入学式後に保護者向け説明会を行っている。就職活動だけでなく、学生生活について保護者の理解を得るのが目的だ。5日の説明会で白藤博行・法学部長は「学部長室のドアはいつも開けている。悩みがあれば訪ねるよう伝えて」と訴えた。(加藤理佐、伊藤史彦、今村真樹)
「知性に加え人柄に磨きを」「自分だけの言葉生み出せ」…学長ら式辞
入学式では、学生の意欲を引き出そうと、学長らが平易な言葉で語りかけた。
「自由とは手前勝手の気ままではなく、責任や義務も考慮しなくては行使できない厳しい権利でもある。嫌なことを避けず、考えることから逃げず、若者らしく一から真面目に何にでも臨んでください」(1日、竹宮恵子・京都精華大学長)
「社会生活を充実させるには、知性の力に加えて、責任感や勤勉性といった人柄も重要であることが最近の研究で分かってきた。しっかりと勉強して人柄の力に磨きをかけてください」(1日、清家篤・慶応義塾長)
「岩手の復興には全学部の知識、技術、人材が必要とされている。皆さん全員が復興、再生の一翼を担う人材として期待されています」(7日、堺茂樹・岩手大学長)
「論文の意図的な引き写しは明らかな不正行為で論外だが、自覚せずに他人の言葉を反復する『無意識のコピー・アンド・ペースト』が、思考を侵食している。スマートフォンを見る時間のせめて半分は読書に割き、自分だけの言葉を生み出してほしい」(11日、石井洋二郎・東京大教養学部長)