自立し、社会貢献できる人材を | 国際そのほか速

国際そのほか速

国際そのほか速

自立し、社会貢献できる人材を 
  •   明星大学は今年50周年を迎えた。

      4月に8代目の学長に就任したばかりの大橋有弘さんが、教育の要とも言える人を育てる大切さを実感したのは、総務省勤務時代。使命感に燃える開発途上国の若手官僚約500人に行政改革について研修を行った経験があるからだ。「大学は、学生のためにある。教職員が一丸となって、社会に貢献できる学生を育てたい」と語る。

    途上国の官僚への研修が教育の原点

     

      高校時代から読書が好きで、大学では年に100冊を読破するという目標を立てて、実行しました。今でも乱読で、ある分野の道を究めた人の本や、研究者が半生をかけた成果を紹介した本などが好きです。

      役人生活を経て、大学で教育に携わって20年以上になります。人を育てる重要さを知ったのは、総務省を退職する前の5、6年間、開発途上諸国の若手官僚総勢500人ほどを相手に、行政の運営改善をテーマに研修をしたからです。彼らは非常に熱心で、日本をモデルに自国の発展のために働こうという使命感に燃えていました。50か国以上を訪問し、現地での指導、助言にも当たり、情報通信技術の研修施設の立ち上げにも関わりました。

      私は大学に移ってからも、どういう育て方が大切なのかを考えてきました。明星大学の初代学長、児玉九十先生は創立以来、「手塩にかける教育」を教育方針に掲げて実践されており、これが教師としての私の根底にあります。

      最近、うれしかったことがあります。学部から修士課程まで指導した教え子が、地方の大学で学部長をしながら、明星の通信制大学院で博士号を取りたいと、門をたたいたのです。私がそれなりに伝えたものが本人に残っていると実感しました。

    特色ある体験学習、50周年で資料公開

     

      大学のミッションは、一言で言えば学生の育成です。自分の持てる能力、可能性を最大限に引き出し、目標を達成するプロセスを経て、自己研鑽(けんさん)し力をつける。そして世に出た時に、活躍してもらうことです。教職員一丸となってサポートすることです。

      明星では、体験に基づく学習を重視しており、オリジナルのプログラム「自立と体験1」は、入学直後の7学部2000人の1年生の前期の必修授業。学部横断で30人編成のクラス分けをし、5、6人のグループで課題に取り組んでもらいます。各学部から、様々な背景を持ち、いろいろな目標を持った学生が集まる中で、コミュニケーションを取りながら、新たな人間関係を築いていき、ともに発表に向けて協力する。大学生として、さらに社会人になっていくための自立を促し、お互いに高め合う形で学生生活のプラスになっています。この取り組みは評価され、他大学からの視察も来ています。

      明星大学は今年で開学50周年を迎えました。記念事業は多彩に実施されますが、目玉は日野キャンパスにある資料図書館のリニューアルです。約88万冊の蔵書の中でも稀覯書(きこうしょ)と呼ばれる世界的に貴重な生の資料があります。今年生誕450周年にあたるシェークスピアの戯曲集初版本(1623年刊行)や、「奈良絵本 平家物語」、「解体新書」、リンカーン直筆サイン入りの奴隷解放宣言書などもあります。

      資料図書館は、今年10月26日の記念式典当日にお披露目し、学生や卒業生、一般の方にも歴史的な価値の高い資料に触れていただける、稀覯書閲覧室も整備します。また、ペリー艦隊に随行した画家による来航図の展示会も行う予定です。

      大学が歴史や文化を社会に発信していく基地になればと考えています。(談)

    おおはし・ともひろ 1944年、東京都生まれ。1969年、東京大学教育学部卒業。総務庁(現・総務省)などを経て1992年に明星大学教授に就任。教育学部長、副学長などを歴任し、今年4月から現職。専門は教育学(情報教育、情報政策)。囲碁はアマチュア六段。富士山の四季の撮影にも凝る。明星(めいせい)大学 母体となる学校法人明星学苑の創立40周年記念事業として1964年に開学。今年4月開設のデザイン学部など7学部と大学院に約8500人の学生が通う。また、通信教育課程には約7000人が在籍する。教員養成に実績があり、全国で2000人以上が教員として活躍。キャンパスは東京都日野市と青梅市にある。