
イスラム過激派組織「イスラム国」について、政府とメディアの呼び方は異なっている。
日本政府は、米国政府と同様に、英語の「イラク・レバントのイスラム国」の略称である「ISIL(アイシル)」と呼んでいる。日本のメディアは、過激派組織が「国家」でないことを強調するため、かぎ括弧つきで「イスラム国」を使うケースが多い。
安倍首相は1月30日の衆院予算委員会で、政府がイスラム国の呼称を使わない理由について「まるで国として国際社会から認められ、イスラムの代表であるかのような印象を与える。イスラムの人にとって、きわめて不快な話になっている」と述べた。自民党も同26日の役員会で「ISIL」の表記を使用すると決めた。
「イスラム国」の前身となるのは、イラク戦争中の2004年にヨルダン人テロリストのアブムサブ・ザルカウィ容疑者が設立したスンニ派過激派組織「イラクのアル・カーイダ(AQI)」だ。AQIは、ザルカウィ容疑者が米軍による空爆で死亡した直後の06年10月、「イラクのイスラム国(ISI)」の建国を宣言した。
その後、ISIは、隣国シリアの内戦の混乱に乗じて勢力を拡大した。13年4月に名称を「イラク・シリア(シャーム=地中海東岸地方)のイスラム国(ISIS)」に変更。欧米各国は、シャームと同じ地域を意味する「レバント」の頭文字を取り、ISILの表記を使った。ISISは14年6月、イラク・シリア両国にまたがる地域に「イスラム国」建国を宣言。最高指導者はアブバクル・バグダーディ容疑者で、預言者ムハンマドの後継者を意味する「カリフ」を名乗っている。
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読売新聞は記事の中で、「国家」と区別するため、初出でイスラム過激派組織「イスラム国」と表記し、2回目以降は、イスラム国としている。