
「任せたいと思われる存在に」 橋本大樹さん 25
- 「支援先の住民に喜ばれたときに、この仕事をやっていてよかったと実感します」と話す橋本さん(東京都千代田区で)=松田賢一撮影
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新卒でJICAに入り3年目。今春までスリランカへのODA(政府開発援助)を担当した。
初めてスリランカを訪問したのは、1年目の夏。まだ研修中の身だったが、最大都市のコロンボを拠点に3か月間、現地で働いた。未舗装の密林の先にある地方都市に出向き、トイレに水洗設備や紙がない環境に衝撃を受けた。食事は3食ともカレー。体調を崩すこともあったが、地元に溶け込んで活動する開発援助の専門家の姿を見て、「ひるんではいられない」と感じた。
帰国後、送電ロスが多い電線を新しくする資金の貸し付けを担当。契約内容を説明するため、その年の暮れに再度、スリランカ入りし、関係省庁を訪れた。「電線の維持管理はスリランカ側が行う」など、貸し付け条件を説明しようとしたが、交渉力や英語力不足で伝わらず、同行した先輩職員に説明させてしまった。「情報をあれもこれも盛り込むのではなく、ポイントを絞ってコミュニケーションすることが必要」と痛感した。
その後は、スリランカを訪問するたびに、要点を簡潔にまとめた資料を作成して、持参するようになった。上司の小早川徹さん(41)は「説明や提案などの仕方が洗練されてきて、基礎力がついてきた」と期待を寄せる。
就職活動を始めた大学3年の秋、途上国などに日本の技術を伝える仕事をしたいと考えた。小学生のころ、父の仕事の関係で中国で暮らしていた時期があり、「現地の貧困層の暮らしを見たことも影響しています」と振り返る。
今年5月からはパラオの水道改修などを担当。一人で交渉の場に赴く機会も増えた。「日本のおかげで住民の生活がよくなった」と感謝される仕事にやりがいを感じている。支援先から「あなたに任せたい」と思われる存在になるのが目標だ。(山田睦子)
国際協力機構 外務省所管の独立行政法人。1974年創設の「国際協力事業団」などが前身。途上国への技術協力、有償・無償の資金援助などを行う。2012年度の事業実績は約1兆5361億円。職員数1842人(14年3月)。本部は東京都千代田区。15年度の新卒採用予定者数は約40人。
(2014年8月12日の読売新聞朝刊に掲載)