「玖珠には機関庫がある。鉄くずになる前に譲り受けてほしい」――。2013年12月、志免町の公園にあるSLが解体されることを知った鉄道ファンから、保存、展示を求めるメールが玖珠町に届いた。
これをきっかけに町が引き取りを打診。14年4月、両町長が無償譲渡に合意した。玖珠町観光協会の佐藤隆会長(72)は「早く地元の子どもたちにSLを見てもらいたい」と待ちわびる。
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SLは1919年(大正8年)に製造された「D―96型」。全長約16・5メートル、重さ約60トンで、主に北部九州の石炭運搬で活躍した。長崎市に原爆が投下された時は被爆者を乗せて走ったこともあり、引退後の75年、志免町に設置された。
玖珠町は機関庫一帯を公園に整備する計画を進めている。2014年度は関連予算として約1700万円を計上。町を後押ししようと観光協会や町商工会などは昨年6月、引越しプロジェクトを発足させ、1000万円を目標に募金活動を始めた。
町内の商店やスーパー、食堂など約150か所に募金箱を設置。ポスターやチラシも配ったが、1月末時点で集まったのは約100万円。毎年約5000人が訪れる恒例の「機関庫まつり」(10月)が台風で中止になったことが響いており、佐藤会長は「たくさんの観光客が来るはずだったのに誤算だった」と振り返る。目標額に達しなくても引っ越しはできるが、関連行事に影響が出る。
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こうした中、機関庫への通り道となるJR久大線の踏切拡幅工事は3月以降にずれ込む見通しとなった。約60トンのSLをトレーラーで運び込むためには拡幅だけでなく、レールや地盤も強化する必要があるからで、JR側は、本県への観光誘致を図る「おんせん県おおいたディスティネーションキャンペーン(DC)」が始まる7月までには工事を終わらせたい意向だ。
SLは今、福岡県直方市の鉄道愛好家らでつくる「汽車倶楽部」が修復作業中で、ライトが点灯し、汽笛も鳴らせるようになる。