
神事は昔、山の神と海の神が手下の数を競(きそ)い合い、同数で引き分けになりそうになった時、海からオコゼが出てきて、海の神が勝利したという民話に由来する。神事では「こんなに醜(みにく)いオコゼは魚の仲間ではないですよ」と笑い飛ばして、山の神を慰(なぐさ)める。機嫌(きげん)を直した山の神は、春になると里に下り、田の神として田畑を守ると言われている。
地元の氏子約20人は篝堂に供(そな)え物をし、懐に入れたオコゼをちらりと見せると、「オコゼを見せ申す」と言ってから、全員で「あーはっはっは」と大笑いした。氏子の仲興一(こういち)さん(54)は「最近は田んぼをやっている人も少ないので、豊作だけでなく、みなさんの幸せを祈願(きがん)しました」と話していた。