
タレント
- ダニエル・カールさん(清水敏明撮影)
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実は私、こう見えて結構、「硬派」な男です。そう育ててくれたのは、日本です。
高校生まで過ごしたのは、ロサンゼルス郊外の小さな町。日系人が多く、初恋の相手も、ブルース・リーに憧れて始めた空手の師匠も、日系人でした。日本の話を聞き、自然と興味を持つようになりました。
幼少期の1960年代は、ベトナム戦争の真っただ中。高校時代は「米国はなぜ、日本と太平洋戦争をしたのか」など、両国の歴史を熱心に調べました。先生に「日本以外にも興味を持つように」と注意されたほど。
とはいえ、誤解もありました。「日本人は着物を着て、人力車を使う」「木と紙でできた、提灯(ちょうちん)のような家に住んでいる」……。17歳で初めて日本に来た時は、「あれっ、違う」ってガッカリしましたよ。
「空手をやりたい」と来たのに、留学先の奈良県内の高校に空手部がなく、柔道部に入りました。習慣や言葉を覚えるのは大変でしたが、楽しかったですね。失敗も許してくれました。仲間の笑い声が絶えず、「日本人はよく笑うな」と思いました。
ところが、上下関係は非常に厳しい。米国に、そんな文化はないから驚きました。「上級生は神様」で反論は許されない。何か言われたら「はい、先輩!」って背筋を伸ばしていました。礼節や、筋を通すことの大切さを、厳しくたたき込まれ、かなり硬派な男になりましたよ。
この1年は大きかった。日本の奥深さを知りたいと、大学を卒業してから戻り、はや30年。それでも自分はまだまだ新米だと思っています。(聞き手・石井正博)
(2014年5月22日付読売新聞朝刊掲載)