
-
学校法人学習院は、深い緑に恵まれた「目白の杜(もり)」に位置する学習院大学を中心に、幼稚園から大学まで一貫教育を行っている。
学習院大学では2016年春に52年ぶりの新学部となる国際社会学部(仮称)の開設を予定し、「グローバル学習院」戦略を掲げる。今年10月、同大学卒業生で初めて第26代の学習院長に就任した内藤政武さんは、「世の中の変化に対応し、新しい風を取り入れた教育を目指し、勢いのある学習院を作り上げたい」と語る。
大学OBで初めて第26代のトップに
学習院は170年の歴史の中で、海外で活躍する人材を多く輩出してきました。現在、大学が開設準備を進めている「国際社会学部(仮称)」は、入学した学生は必ず留学を経験するなど、国際的なビジネスの場で活躍する人材を育てるための新しいカリキュラムを計画しています。
60年前、私は高等科に通っていましたが、当時の安倍能成(よししげ)院長が初等科の児童から大学生までに共通して語られた言葉は、「うそを言わないこと」と「正直な人であること」でした。礼儀正しく、思いやりがあり、品格とおおらかさを備えることで周りから慕われ、それぞれの社会でリーダー的役割を果たせるような人材の教育を目指してきたのです。こうした人材がさらに世界で活躍できるように世に送り出すことが、これからの学習院の教育の大事な責務であると考えています。
にこにこ笑って苦労は顔に出さず
幼稚園時代から大学まで学習院で過ごしましたが、一番長い友人は、70年以上の付き合いとなり、人生の財産です。小学校にあたる初等科では、先生方が児童一人ひとりの個性をよく分かってくださることもあり、自由闊達(かったつ)に過ごすことができました。
学習院の友人に共通しているのは、苦労をしても苦労を顔に出さないことです。みんな、いつも明るく、どこに苦労したのだろうという表情を見せています。こうしたおおらかさと品格が、学習院らしさだと感じています。小学校、中学校、高校、大学と入学時期がいつであっても、学習院の仲間と接していれば、自然と身についてくると思います。
学習院らしさは、仕事に対する考え方にも通じます。人に対しても好きか嫌いかではなく、まじめに物事を考えている人か、まじめに仕事をしている人かどうかを見ます。難しいことは、やさしく考えて素早く方針を決め、やさしいことは、さらにやさしく考えて実行します。
三十数年勤めた小田急百貨店時代に、隣の部署の人からは「内藤はいつもにこにこ笑って何もしていないようにしか見えない」と思われていたようです。ただ、実際に一緒に働いた人は、仕事は楽しくするけれども大変だったというのは分かってくれています。
大学を卒業してから、仕事の傍ら、体育会ホッケー部のOB会役員を務めたり、息子も学習院に入学して父母会の会長や父母会選出の理事など、忙しくても役に立つと思う仕事は積極的に務める方針を続け、時間調整に工夫をこらす生活を続けてきました。ホッケーでは、選手団長として2004年のアテネオリンピックに参加して、入賞したのも、よい思い出です。
卒業生、父母、学習院執行部など、さまざまな立場で学習院を見ることができました。長い間、継続してきた経験を生かして、卒業生や父母の皆さん、教職員とともに勢いある学習院をおおらかに作り上げます。(談)
ないとう・まさたけ 1938年生まれ。学習院大学政経学部経済学科卒業。63年小田急百貨店入社、91年取締役、95年常務取締役。97年小田急プラネット社長。学習院では、学校法人学習院常務理事、同窓会組織の学習院桜友会理事、経済学部同窓会長、学習院父母会長などを歴任。2014年10月、学習院長就任。日本ホッケー協会副会長、日本オリンピック委員会監事を歴任。趣味はマンドリンと琵琶の演奏。