銀座の柴田悦子画廊(2026/3/30)。

 

Akira Sakata 坂田明 (as, cl)
Shinpei Ruike 類家心平 (tp)
Jun Inui イヌイジュン (ds)

 

自ら奈落を作っておきながら叫んで叩き続け落下を食い止める、これがパンク。情が滴るトランペットも、いつも気圧されつつ今回限りの音だと思ってしまうサックスも、すばらしかった。画廊は満員で酸欠。ジャズ箱と違い、演者がなにかおもしろいことを言うたびに「う~ん」と感心の声が広がるのは不思議。

 

 

Fuji X-Pro3, 7Artisans 10mmF3.5, XF60mmF2.4

神保町試聴室(2026/3/26)。

 

 

Kagaya Sanae 加賀谷早苗 (舞踏)
Fumi Endo 遠藤ふみ (p)
Eiko Yamada 山田衛子 (recorder)

 

加賀谷早苗さんの仮面のごとき顔は視線の遮断ではなく、視線を集めることで内面の動きも伝わってくる。師匠筋の友惠しづねが吉沢元治と共演した映像を観たときの鈍痛のようなショックを思い出した。

ピアノはどうしても「音楽」になる。遠藤ふみさんの演奏については、ピアノ自体が抱える歴史や物語とは別の相に入ろうとしているのかなと感じていた。それが正しいかどうかは置いておくとして、舞踏家との手合わせのゆえか、この日はピアノがピアノであることを引き受けたような印象を受けた。

山田衛子さんのリコーダーにはやはり驚かされる。マージナルな音領域に次々に立ち入り、それによって如何に場を揺るがし亀裂を与えるかという怖さがある。

音と動きの三者三様が「共演」となっておもしろい。

 

 

Fuji X-Pro3, 7Artisans 10mmF3.5, XF60mmF2.8

新垣譲『地図から消えた「沖縄農場」 空港建設で潰された千葉県三里塚の開拓村』(論創社)を読了。

成田空港のある三里塚は戦後開拓された土地だが、その中には「沖縄農場」と呼ばれた場所もあったということに驚かされた。開拓民は中南米やハワイや台湾から敗戦とともに引き揚げてきた者たち。苦労の中で民族自立の考えも生まれたという。だが空港建設という国策でまた居場所を奪われることになる。建設地は開拓農村の狙いうち、すなわちこれは差別的なものだった。残された資料が少ないからこのような仕事はとても大事だと思う。
とくに福島原発事故のあと、「開拓」や「移民」という棄民政策がいまにつながることがずっと気になっている。貧困地域の国民にウソの希望を与えて外に出すこと、それが破綻すると引揚者を国内開拓にまわすこと、そして生活が成り立ってきたらふたたび別の政策でつぶすこと。三里塚の空港、軽井沢のゴルフ場、福島や六ケ所村の原子力施設建設のように。
それではエネルギー、医療、食料、「棄民」となるのはだれか。

 

狛江の野口晴哉記念音楽室(2026/3/19)。

 

 

Fernando Kabusacki (g, vo, effect)
Kohsetsu Imanishi 今西紅雪 (箏)

 

2023年のデュオは神谷町の光明寺で、風も入る開かれた空間だった。場が異なれば演奏のありようも異なる。今回の部屋は天井が高く、また吸音性も高い。そのためか各々の音のエッセンスがきめ細やかに抽出されているように思えた。

カブサッキさんが情の海を作り出し、ささやくような声で音のマチエールを付加する。一方の今西さんは浮かび上がりそこかしこを彩る。箏に付けた棒が重力で倒れることによる響きの拡がり、布で覆うことによる空間の塗りが、点から面への動きとして対話の手段にもなっていておもしろい。

久しぶりにお会いした舞踏の佐草夏美さんによれば、コントラバスの齋藤徹さんも野口整体に関心があり来たことがあるのだ、とのこと。

 

Fuji X-Pro3, 7Artisans 8mmF3.5, XF60mmF2.4

 

 

代々木上原のhako gallery(2026/3/10)。

 

 

Michiyo Yagi 八木美知依(エレクトリック21絃箏、エレクトリック17絃箏、歌)

Kazuhisa Uchihashi 内橋和久(ギター、ダクソフォン)

Maki Isogai 磯貝真紀(エレクトリック17絃箏、歌)

 

内橋さんのダクソフォンによるアジア人の歌のごとき表現、そして八木さんの歌が上下左右から重なり合う。このような異なる声どうしの協奏には驚かされた。十七絃箏はときにジャズベースのように一音一音が分離して場に刺激を与え、二十一絃箏はグリッサンドで広い音空間を与える。外につながっているhako galleryの特性も相まって、すばらしいものだった。

 

 

Fuji X-Pro3, XF60mmF2.4, 7Artisans 12mmF2.8

なってるハウス(2026/3/2)。


Akemi Shoomy Taku 宅 Shoomy 朱美 (p,vo)‬
Takayuki Kato 加藤崇之 (g)
Shigeo Sugiyama 杉山茂生 (b)
Mika FUjinoki 藤ノ木みか (per)
Keiko Komori 小森慶子 (cl,ss)
Naoko Saito 齋藤直子(as)
 

3年前に亡くなった松風鉱一さん追悼。音は人だという感覚が伝わってくる演奏だった。90年ほど前の小西六のレンズで。
 

 

Fuji X-E2, Optor 75mmF6.3

入谷のなってるハウス(2026/2/27)。

 

 

Eiichi Hayashi 林栄一 (alto sax)

Takero Sekijima 関島岳郎 (tuba)

Kanji Nakao 中尾勘二 (drums, soprano sax, clarinet)

 

19年ぶりの再演とあってソールドアウト。僕にとってはそれよりも前、アルバム『PHOTON』が出る前年の1998年末、MANDALA-2での篠田昌已7回忌メモリアルコンサートで観て以来だ。まだ「林+中尾+関島PLAYS COMPOSTELA」だった。そのとき林さんが中尾さんについて「僕は天才だと思っているんだけど」と話したことを覚えている。

今回もすばらしい演奏だった。このグループにおいては即興とはアドリブというより旋律を所与のものとしての音色。ただ林さんは旋律を紡ぎ出すことにも集中しているようにみえた。<Naadam>は『PHOTON』ではバリトンサックスだけれど、今回はアルトサックスのみ、終盤には音を爆発させた―――『COMPOSTELA』の<耕す者への祈り>における篠田昌已のアルトのように。<耕す者への祈り>はチリのビクトル・ハラの曲。ハラは帝国アメリカの意を汲んだクーデターで殺された。そしてこの演奏の翌日、帝国はイランに爆弾を打ち込んだ。

 

 

Fuji X-Pro3, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

横浜のCafe PLUS(2026/2/12)。

TeN (vo)
Chizuru Ohmae 大前チズル (key, vo)

 

<Waltz for Debby>での鍵盤は和音での伴奏などではなく、かといってソロでひた走るものでもなく、歌と自由のあいだにあってひたすらカッコいい。そしてなめらかなマチエールの声からときに情が突き出してくる<さよならの向こう側>はすばらしく、帰宅してからもシングルカットをなんども聴いた。

 

 

Fuji X-Pro3, XF60mmF2.4, 7Artisans 12mmF2.8

千駄木のBar Isshee(2026/2/3)。

 

 

Shoko Nagai 永井晶子 (accordion, electronics)
Kota Yamazaki 山崎広太 (butoh dance)
Yumiko Tanaka 田中悠美子 (taisho-koto, shamisen)

 

身体の動きも感情の発露も、如何に小さくても社会との関わりという文脈で予測するものだろうけれど、山崎広太という人のそれは文脈を裏切り続ける。そして、新たに作られた文脈は高速で次々に塗り替えられる。これは驚きだ。

アコ―ディオンは濁りで点から線、線から面へと音の次元を拡げ、三味線と大正琴は絶えざる亀裂で聴く者を覚醒へと引き寄せた。

 

 

Fuji X-Pro3, 7Artisans 12mmF2.8, XF60mmF2.4

 

 

 

なってるハウス(2026/1/30)。

 

 

Kaori Nishijima 西島芳 (piano, voice)

Tsutomu Takei 武井努 (tenor sax, flute)

Yuki Nakayama 中山雄貴 (trombone)

Rabito Arimoto 有本羅人 (trumpet, bass clarinet)

Misaki Motofuji 本藤美咲 (baritone sax, clarinet)

Kiyotaka Moriuchi 森内清敬 (darbuka, percussion)

 

ゲストが本メンバーになって6人。『Love Shippolly』からは「間」が大切にされている音楽だろうと受け止めた(『JazzTokyo』でのレビュー)。今回あらためて体感してみると、テーマである「息のかさなり」を得るための立ち上がりの時間がとてもいいことに気付いた。重ね合いの色がグラデーションをもって静かに変わっていく。

#2385 『Ensemble Shippolly / Love Shippolly』 – JazzTokyo

Fuji X-Pro3, 7Artisans 12mmF2.8