病院に着いて受付を済ませ婦人科へ移動しました。


改装工事をしていたこともあり少し病院の雰囲気はいつもと違って

すれ違う廊下は幅が狭く、またそれも不思議と閑散としてなくて心が落ち着く私でした。


婦人科に着くと、受付前の椅子には数名しか居らず

小さな路地のような廊下を抜けて出た広い場所(待合室)が

私には凄く重たい場所に感じて自然と力が入いりました。


1番遠くの椅子に座って

娘を迎えにいってくれている母とメールでやり取りをして気持ちと時間を紛らわしていました。



次々と呼ばれ診察を終える人を横目に、もしかして最後に呼ばれるのかとよぎる不安


後から来た人も私の前に呼ばれる。


待つのは好きだからいいけど、この時ばかりは別でした。



そして、母と娘が到着し

無邪気な娘の笑顔にホッとしたの束の間で


名前を呼ばれてしまった。


お母様も中へ、との言葉に母と顔を見合わせました。


母の顔はとても困った顔と悲しそうな顔が入り交じり

見たこともない血相に、ただただ頷くしか出来ませんでした。


娘は看護師さんが見てくださり

私は少し不安な顔をしながら小さく手を振る娘の姿に

心の中で「ごめんね。」と言い診察室に入りました。



お座り下さい。の先生の言葉、神妙な面持ちの看護師さんに私はすぐ覚悟ができました。


『命の危険性があるので呼びました』

との第一声に、ん?え?と頭が真っ白になりました。


がんという覚悟は出来ていたけど、命の危険性があるとまでは思っていなかったのです。


全く涙は出ませんでした。


まさか?命の危険性がある?私?

がんだけど軽いほうじゃないの?


と思いながら先生の話を冷静に聞いている自分がいました。


ここでは手術が難しいこと

内診でがんが確認できないこと

子宮全体ががんかも(広がってる)しれないこと


その頃は無知だった私は全てを理解することは難しかったけど

『非常に危険な状態』

だということは理解できました。


横で泣いてる母、背中を摩るしか出来ませんでした。


母の顔を覗きこみ私が笑うと

無理して笑ってくれる母の顔は苦しそうな笑顔でした。



今後の説明はCTを撮り、その後にお話をしましょうということで、席を立ち診察室をでました。


母に大丈夫だからと根拠のない言葉をかけるしかなかった。

最大の強がりだったかもしれません。

診察室から出る寸前に母だけ出てもらい

先生に『私、死ぬんですか?』と聞きました。


『このまま放って置いたらダメだよ、どうする?』

と聞かれ


『執刀してくれる医師を探します』

と私が言うと


先生は快く承諾してくださり、検査の予約はそのままにしておくこと

紹介状もいるようなら用意してくださること

電話で対応するからとのこと

とても親切に対応してくださりました。




今でも鮮明に目に焼き付いている光景

カーテンもパソコンも

先生の姿、看護師さんの姿

診察室の空気、室温

遠くで聞こえる人の声


告知を受けた瞬間から

全てが遠くにある景色のようで

ポツンと取り残された私は

小さな虫のような存在で


無力さと孤独の生き物だと初めて感じました。