岡村孝子インタビュー後編 Page01
——アルバムのサウンド的な方向性は、レコーディングが進むにつれて見えてきた感じですか?
岡村 そうですね。『Sanctuary』はかなり大人な感じのアルバムだったんですけど、今回は“若め”になりました。レコーディング、ミックスと進んでいくうちに、なんとなく80年代の音楽を意識しはじめたんですよね。ちょっとキラキラした感じっていうのかな、私がソロデビューしたばかりの頃に聴いてた洋楽を、改めて聴き直したりして。
——たとえばどんなアーティストですか?
岡村 えーと、ジェネシスとかA-haとかティアーズ・フォー・フィアーズとか。そういうイメージはなんとなく、自分のなかにありました。ちょっとガゼボを意識したメロディを書いてみたら、スタッフも同じように感じてくれたり。何も言わなくても自然と伝わって、いつの間にかアルバムの空気が決まってくるんですよね。
——前作に比べると、ボーカルの印象も華やかですよね。
岡村 それはディレクターの方向性ですね(笑)。去年あたりは大人っぽい歌い方になってたというか、私自身がそういう方向に行ってたんですけど、今回はサウンドと同じように若いイメージで(笑)。それもね、レコーディングが架橋に差し掛かるにうちに、自然と決まってくるんですよ。20年以上同じスタッフでやってるから、そこはもう完全に信頼してますね。
——決して孤独な作業ではない、と。
岡村 そうです。たとえばレコーディングの途中で、何気なく「この曲、すごくいいですね」って言われたり…。それって、とてもとても大きなことなんですね、私にとって。アルバムを作り始めたときは何も見えてなかったわけだけど、答えがわからないまま試行錯誤していくのも怖くないなって。自分が出すものを、みんなでいっしょに作っていける。このまま行けるなら大丈夫。そんなふうに思えるレコーディングだったと思います。
——不安からスタートしたけど、結果的には楽しかった?
岡村 はい。いちばん佳境に入ってるときに、みんなで“えい、やー”って感じでオーストラリアに撮影に行っちゃったりたり、頭を切り替えざるを得ないこともいっぱいありましたけど。人間、やろうと思えば何でもできるんだなって(笑)。
——(笑)。
岡村 あと、今回のアルバムって、今までの作品のどれにも似てなんですよ。いままでは「今回は『liberte』っぽいな」とか「『SOLEIL』に雰囲気が近い」なんてこともあったんだけど、『四つ葉のクローバー』はいままでにはなかった感じのアルバムになったと思います。
——まだまだ、新しいものは生み出せる。
岡村 いろんなものを吸収して、経験を重ねたからこそ出来ることもあるだろうし。あと10年くらいがんばったら、私にも『銀色の少女』みたいな歌詞が書けるかもしれない(笑)。